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第81回 掛矢 矢の文字が付く和製ハンマー

掛矢かけや


 今でも建築現場などで活躍する大きな木製のハンマーです。

 日本語にしたときには「つち」というくくりに入ります。漢字には「木」の文字が使われていますね。


 ちなみに金属製のハンマーは「つち」のほうですね「金」の文字が使われています。


 材質は樫などの固い木、重さ3~4キロ、打ち付ける面は直径15センチという手のひらよりも大きい物もあり、長さ全長120センチにも及ぶ巨大なハンマーです。


 乾燥や劣化による割れや湿気などによる膨張を防ぐために金属の輪をかけたり、打ち付ける面に蝋や油を塗ったりしている物もあります。

 打ち付ける面は丸だったり、八角だったり、地域や時代よっても微妙に違いがあります。


 手に持って振り回して使う武器や道具というのは、1キロだったとしても非常に重く感じますよね。


 掛矢はハンマーですから、ぶつかった時の衝撃は思いっきり跳ね返ってくるもんです。

 剣や斧などの重量感よりも扱っている時の重量感はもっと重たく感じます。


 現在の掛矢は杭を打ったり、古民家を解体したり、様々な面で活躍しています。


 打ち付ける面が広く、重さもあるため太い杭を地面に深く打ち込む事ができますし、木と木ががっちり組み合わさっている所を広い面で叩いて外したりと掛矢でしかできない技術があります。


 慣れない人が扱うと、杭の先端に上手く当てるどころか、持ち上げて振るだけでも一苦労です。


 もちろん、解体作業で思いっきり振ってやれば壁になっている板1枚を丸ごと吹っ飛ばす事すら可能です。

 なんという技術!


 そんな荒っぽい解体は滅多にありませんが、瓦礫や壊れて動かなくなったドアなどを吹っ飛ばして、救助への道を作ったり、緊急で立ち入り禁止のロープを張る杭を打ったりと災害時・緊急時にも活躍します。


 掛矢の扱いに慣れてきて、手早く杭を打ち、余計な傷をつけることなく組み合わさった木材を外し、重いはずの掛矢をひょいひょい持ち運ぶ事ができるようになれば、親方に褒めてもらえるかもしれませんね。


 歴史は結構長く、平安時代にはすでに存在していたものが掛矢です。


 かの有名な弁慶も7つ道具の1つとして、この掛矢を入れています。


 重量感たっぷりで家すらも粉砕できる可能性があるハンマーですから、弁慶が振り回していたとなれば絵にもなりますし、威圧感も十分です


 現代は道具ですが、当時は立派な武器でした。

 今日はこの掛矢を見て行きましょう。





~使い方~

 昔も道具としての側面が強く、その名前の由来も諸説ありますが、大工仕事に関する物が有力です。


 木のクサビの事を昔「木矢もくや」と言っており、これを打ち込む事を「打ち掛け」と言いました。


 木矢を打ち掛けるという所から、打ち込む時に使う道具を「掛矢」と呼ぶようになったという説があります。

 こうなると「矢」と全く連想できない見た目である理由もちょっとわかりますね。


 使い方は極端に大きい物の、ハンマーやメイスと同じです。

 思いっきり振ればそれでいいのですが、これだけ大きいので狙った場所に寸分違わずに打ち込むには、かなり熟達が求められます。


 戦場で防衛陣地を作るときや、騎兵の突撃をさせないための乱杭を打つ時にも使われます。


 乱杭は規則正しくならんでいる訳ではなく、次々と杭を打てるだけ打って作るという急場しのぎの時もあります。


 こんな時は地面が石だらけだったり、泥っぽくて深く打ち込む必要があったりもするので、掛矢の扱いに慣れていないと陣地を作成することもできませんね。


 もちろん、武器としても描かれているほどですから攻撃にも役立ちます。相手の防衛陣地や城門を叩き壊すなど、攻城戦でも掛矢は活躍します。


 敵兵たちは門を閉めろと騒ぎ立て、鈍い音とともに閉じられた門の裏には丸太のようなかんぬきがかけられる。


 掛矢を担いだ豪の者、閉められた城門に走り寄り、飛び交う矢に怯む事なく門を叩く。

 1撃、1撃ごとに門は軋み、木端となった木片が舞う。閂は何度もゆがみながらも門をひたすら押さえつける。


 雄たけびを上げながら振り下ろされた掛矢は閂をへし折り、門を吹き飛ばす。


 腰を抜かした敵兵達が目にするのは砂埃の向こう側、掛矢を振り下ろした豪の者を先頭に槍を構えて勢ぞろいする軍勢となる。


 カッコいいですね!

 シビレますね!


 有名な所だと、赤穂浪士の吉良邸への討ち入りの際などに掛矢を構えている人物が見られたりします。


 他には火災の際に、火の元のすぐ隣の建物を破壊する事で、延焼を防いだりする火消の場でも使われていたりします。


 あっちこっちに登場してるんです。





~直接戦う~

 ここまでの説明だと、戦場での大工道具になってしまっていますが、平安時代は個人の武器として直接の戦いに持ち出される事もありました。


 金棒の解説でも少し触れましたが、平安時代の頃は集団戦法があまり無く、個人の武勇を振るう戦い方が多くありましたから、この掛矢を得物とした人物もいたようです。


 数キログラムもある打撃部分を支え、その衝撃に耐える柄も当然丈夫に作られています。


 柄の部分でも攻撃を受け止めたりする事ができると思いますが、ここで受けたら、相手を殴るか蹴ったりして距離を取らないといけません。

 距離がないと十分に振って加速させた打撃を繰り出せませんからね。


 十分な距離がとれたら、必殺の一撃をお見舞いしてあげましょう。相手が鎧だったとしても、意味はありません。

 掛矢の一撃は鎧ごと相手を吹っ飛ばす事ができます。


 振って使うしかないように思いますが、意外と突きも有効です。


 数キログラムもある木の固まりを押し付けられるわけですから、大き目のスイカを投げ渡されたも同然なので、重さと鈍い衝撃でバランスを崩します。


 尻もちをついてくれたら大チャンス、相手は避けられなくなります。

 こうなったら相手の運命は浜辺に持ってこられたスイカと同じになるでしょう。


 単純に相手を叩き潰せばそれで終わりのように見えますが、実は意外と難しい。


 振り下ろされたハンマーは動きが単調になりますから、その瞬間を見極めて、バックステップやサイドへ転がるように身をかがめれば避ける事ができます。


 また、自分が武器を持っていれば、掛矢の柄の部分を押さえれば先端に比べてはるかにパワーが弱くなりますので止める事もできます。


 色んなゲームでも巨大なハンマーが武器として登場する作品が多数ありますね。


 大きなモンスターを何度も何度も殴りつけて倒したり、巨人にハンマーを打ち付けて地面に倒れさせたり、中には振り下ろされたハンマーを人間が片手で受け止めたり、シーンは沢山ありますよね。


 実際の掛矢も業者ご用達のホームセンターだったりすると見る事もあります。通販でも売ってますから、すぐに画像も見つけられます。


 なんでこんなんで殴られてピンピンしてんだよ……

 化け物かよ……


 こう思う理由は見てみれば分かります。

 見た目のインパクトがすごい頼れる大工道具が掛矢です。

叩き潰せ!


 こんなん集団戦法で使って、フレンドリーファイアしたら……

 考えるだけでも恐ろしい、武器としてなら個人装備で確定です。


 個人的にハンマーって大好きなんだよなぁ

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