第79回 虎落(もがり) ガーデニングではないです
虎落
ガーデニングでお馴染み、竹を組み合わせて作る柵というか、囲いになるもの、簡易的な壁となるものです。
竹垣みたいな物も虎落と言ったりする事があるようですね。
しっかりした和風な庭がある方はお宅にもあるかもしれません。
中国でも同じような物があり、虎などの猛獣の侵入を防ぐために竹で作った柵を指していた言葉が日本にも入ってきました。
ネットで検索すると竹で作られた囲いに垣根、壁など様々見つかります。
竹垣に囲まれた温泉なんて風情がありますね。
なんて紹介ではありません、当方は武器マニアですので、こんなガーデニングに使う物ではなく実際の戦場などで活躍した物をとりあげて行きます。
以前に竹槍を紹介しましたが、竹は優秀な素材です。丈夫でありながら柔軟性があり、成長が早いため入手しやすいという特徴があります。
戦地でも竹を利用して壁や防衛陣地などを作る事もあり、組み合わせて紐で縛れば、壁に梯子に便利なアイテムが作り放題です。
今回取り上げるのは、戦地や重要拠点に使われた侵入防止の見えるトラップ。
現代風に言えば、電気柵や有刺鉄線みたいなもの。これも「虎落」と呼んだりします。
おしゃれで、和風なガーデニングの虎落ではなく、危険で危ない虎落を見て行きましょう。
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ガーデニングで垣根を作るときに竹を素材にすることも良くあります。
場合によっては竹で骨組みを作ってそれを芯にして植物を生やすような、生垣なども作る事ができますね。
戦地でも竹を組み合わせて簡易な防護壁を作る事ができます。地面に竹を突き刺して組み合わせる。竹を組み合わせて、紐で縛る。
一見弱弱しく見えますが、この程度の壁に布をかけたり、隙間を狭くすれば弓は通りにくくなります。
この後ろに鉄砲隊を配置すれば、こちらから一方的に攻撃も出来ます。
でもこれは虎落という防衛設備ですよね、武器ではなく防護アイテムです。
もっと攻撃的な虎落が今日の本題です。
以前に竹槍を紹介しました。
肉厚な青竹をカットして、尖端に油を染み込ませながら火であぶり、鋭く硬く仕上げた竹が竹槍です。
この竹槍を沢山用意して、地面に突き刺して作ります。
竹を地面に深く埋め込んで、尖端だけを露出させる。
これを針の山を思わせるほど大量に埋め込んで、地面を竹槍で埋めれば虎落の完成です。
丁寧に作る時には竹の一本一本を炙ったりして加工しますが、急いでいる時は、鋭く斜めにカットした竹や木をザクザクと埋めて作ります。
進軍先に竹の針が敷き詰められていたら、簡単には通れません。
迂回するにしろ、取っ払いながら進むにしろ時間を取られてしまいます。
めんどくさがって突っ込んでこようものなら、馬も人も敷き詰められた尖った竹の餌食です。
動きが取れない敵兵は、投石でも弓でも鉄砲でも、打ち込んであげれば撃退完了です。
まぁ、虎落が仕掛けられたフィールドに突っ込んでくる奴はいませんから、侵入防止のアイテムです。
電気柵に自分から手をかざす人は基本的にはいませんし、有刺鉄線が巡らせてある壁に登ろうとする人も基本的にいませんよね。
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虎落に近い物では逆茂木とか、逆虎落と呼ばれる物があります。
これは、複数に枝分かれした木を用意して、枝の先端を削って尖らせた物を沢山並べたり、切り倒した木で枝が沢山ある方を敵が来るであろう方向に向けて組み合わせた物です。
場合によっては木を斜めに生やして、生きた壁にする物まであります。
見え見えの障害物なので、ここに突っ込んでくる敵軍はいませんが、逆に言うとここに突っ込んでこなくなります。
竹で簡単に柵を組んで、そこに沢山の枝を立て掛けておくだけでも、そこに突撃してこようとする人は大幅に少なくなります。
お堀や土手の上などに作っておけば、敵軍はお堀や土手という困難を越えた上に、この逆茂木も越えなければならないので、視覚的にもやる気を落とさせてくれます。
防衛側にしてみれば、景観は良くなるし、防御力はあるし、お金はかからないという便利なアイテムですよね。
素材が安いのに確かな防御力を発揮する。
虎落に逆茂木、お宅のお庭やベランダにも一式いかがでしょうか?
垣根の垣根の曲がり角!
世の中に存在する垣根の中に、虎落は沢山あるように思います。
古くなると黄色っぽく、もっと古くなると灰色になります。
使われていた年代は1192~1868年と資料にありますけれど、考えようによっては今も使われてます