第77回 落とし穴 これぞ王道トラップ
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落とし穴
陥穽とも言うらしい、「人が入れる程の穴」を意味します。
今も昔も、トラップの王道。人がすっぽり入って自力では上がれない程の穴を作っておいて、そこに主人公が落ちるといった描写は沢山ありますね。
穴を掘って、上を細い枝などで覆ってから、土をかける。パッと見た所ただの地面と思わせておいて、そこを通り過ぎようとする相手を落として捕らえるというのが王道。
以前にあげた「リリア」も言ってみれば落とし穴の1つです。
落とし穴の底にトゲや尖った枝や竹、丸太などを配置して、落ちた相手の自重で深々と刺さるようにする凶悪な物もあります。
ベトナム戦争でゲリラ戦法の一部として使われていた事でも有名。
歴史は滅茶苦茶古くて、日本でも縄文時代には落とし穴が使われていました。
狩りの技法の1つであり、小物を狙うものから、鹿などを追いかけて逃げ道に設置してある場所に追い込んで落としたりしていたそうです。
細かい物を上げれば、昆虫を捕らえるためのトラップ、食虫植物の補虫方法の1つなども「落とし穴」に入ってきますね。
調味料のめんつゆに洗剤を混ぜてコバエを誘い込む「めんつゆトラップ」や、ベニテングダケを炙った物を水に浮かべた「ハエ寄せトラップ」これらも形状によっては落とし穴になります。
穴の底にこうした寄せ餌や毒を仕込んで、逃げられなくしてから確実に殺虫してますからね。
今日はこうした落とし穴でも対人で使うトラップに絞ってみて行きましょう。
◇
~作り方~
基本的に穴を掘る道具があれば作る事ができますが、穴を掘るというのは実は結構大変です。
以前に、近所の子供が公園に腰くらいまでの深さの落とし穴を作ったという設定を見た事がありますが……
多分、深さは80センチメートルくらいだと思います。整地された土地を80センチメートルも子供の力で掘る。
その子スゲーな!
作者ピーターは砂場を滅茶苦茶掘った時でも50センチくらいでギブアップしたよ!
穴掘りだけ見れば、30分でどれだけ穴を掘れるかを競う「穴掘り大会」という物が実際にあり、優勝したチーム6人で280センチメートルほども掘っています。
10分あたり100センチ近い爆速の穴掘りです。
これは土地の性質が土で、植物の根などにも邪魔されず、砂のように崩れないという理想的な環境に、穴掘りのプロとも言える土中の配管を整備する業者が、穴掘りの特訓をしてから挑んだ結果です。
280センチメートルもあれば、素手では簡単に脱出できません。それどころか落下のダメージだけで致命傷に至る可能性すらあります。
落とし穴としては十分ですが、普通はそんな穴掘り技術は持っていません。
一般人ならタイムカプセルを埋める程度の穴を掘るだけでも、何十分もかかってしまいますね。
まして、戦場や山中で作るとなると、数十センチ掘るだけでも、植物の根や石に岩などに邪魔されてそれ以上掘れなくなってしまいます。
重機を使おうにも戦場や山中にパワーショベルは持っていくのは大変です。そもそも持ち込めない場所も沢山です。
これを踏まえると、作り方は土地の選び方に尽きます。
①スコップなどで深く掘れて崩れにくい、土や粘土などの土壌である事。
②敵兵の侵入してきそうな場所など、自分達や民間人が引っかからず、防衛に効果的な場所である事。
③上を土や草などで隠しても違和感がない場所である事。
これらが条件ですね、③については草むらに作ったら数日で被せた草が枯れるので、雑草を活かして置けるなどの工夫が必要ということですね。
場所が決まればスコップで掘って掘って掘りまくって必要な深さと広さを確保。
穴を周辺に溶け込ませるようにして隠せば出来上がりです。
◇
~確殺にする~
ただ落ちただけだと、壁を這い上がって外に出られるかもしれません。
深く掘れない場所でも防衛のため、落とし穴を作っておきたい時もあります。
そんな時は細工をしましょう。
深く掘れるのに越した事はありませんが、細工を上手くすれば数十センチ程度の落とし穴でも十分に効果があります。
木の枝や丸太、竹などが手に入るのであれば細工の材料は揃います。
出来るだけ深く掘った穴の底に木などを鋭くカットしたものを並べます。穴の底に突き立てたり、板や棒に打ち込んだりして、尖端が上を向くようにしておけば出来上がりです。
数十センチの深さでも、落ちた勢いでこの鋭い先端を踏みつけるか、体に刺されば致命傷に至らなくとも相手の戦力は1人減る事になります。
一度引っかかってくれれば、相手は『落とし穴がある』と警戒するので、侵攻はとても遅くなります。足元を確認しながら進んでくるようになりますね。
こうした細工に使える物は、壊れた装備などでも構いません。鎧などでもひしゃげていたりすれば、尖った部分を活用したり、固定する材料にすることもできます。
さらに、糞便や毒草などを染み込ませておけば、さらに威力を引き上げたり、相手の戦意を失わせる効果も期待できます。
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口にすると「穴を掘るだけで作れる落とし穴」と簡単です。
ですが、戦略上に有効な場所に効果的な形で設置するのは難しいのが落とし穴です。
テレビなどを見て、簡単にできると思い込み、安全を考慮せずに作った人もいます。
いたずらや防犯のために作成した人も多いようですが、発生する事故は「作った人が落ちる」という何とも皮肉な結果が多くあります。
こうした場合「無差別に人が傷つく物と知っていて設置した」「意図的に他者に危害を加える、拘束するという事を目的とした」となり、設置するだけでも罪となる可能性が高く。
誰かが引っかかった場合「傷害」「殺人未遂」などの重い罪として扱われます。
深い穴を掘る場合は行政への届け出も必要ですが「落とし穴を掘るため」と申請されたら問答無用で却下されます。
いたずらで作った落とし穴に落ちて、落下中に頭が下を向いてしまい頭から地面にぶつかる。浜辺に作って出られない内に満潮になり窒息。
シャレにならない事故も起っているのが落とし穴です。
気軽な気持ちで作らず、安全面にしっかり配慮して作る……
いや、やっぱり作っちゃだめでしょ。
落ちろ!! ふっふっふ上がってこれまい!
紐引っ張って、足元が「パカッ!」ってなるのも良く見ますが……
あれも可動部が壊れて動かなくなったり、意図しないタイミングで開いちゃったりと、事故の方が多い気がする。