第76回 トゥハ・トゥハ 見た目より便利
トゥハ・トゥハ
シルエットはゴルフクラブを思わせる形状。非常に硬い木材を加工して作られる棍棒です。
長さ100~160センチ、重さは1.5~2.2キログラム程度。
完全に木材にしては、重量がありますよね。
野球のバットは100センチ以下で、太さがありますが重量は1キログラム以下となっていますから、それに比べると密度の高い木材が使われている事がわかります。
『ずっしり』という感覚です。
先端のヘッド部分は、柄の部分から離れるにつれて薄くなるように作られています。
シルエットはゴルフクラブでも、厚みの形状について全然ちがいますね。
ヘッドには細工がされたり、模様が描かれている事もあります。
反対の柄の部分は針のように尖らせてあり、ヘッドに向かって徐々に太くなっています。
使っていたのはニュージーランドの先住民であるマオリ族、作っていたのも彼らです。
材質というか、素材にしていた木材の性質が調べても出てこない……
木材と言っても、本当に密度が高い木は水に浮かずに沈む程になります。
こういった密度の高い木は必然的に重くなるのでアイアンウッドとか通称が付いたりします。
こういった強度の高い木材を使用していたことは間違いありません。
ここまで硬いと加工するにも高い技術が必要になるので、部族に代々伝わりながら研鑽された秘技が光りますね。
今回はこのトゥハ・トゥハを見ていきましょう!
◇
~使い方~
ヘッドの薄く仕上げた先端部分を突き立てるように殴打しません。
もう一度言います、先端の先端では殴打しません。
これは先端の柄の部分に重さが集中する構造になっているので、先端部分をスイングの時に相手とは反対に向けて、柄の部分で殴打します。
つまり背中で打ち付けるわけです。
こうする事で重さが安定して、空気抵抗も先端の構造で良い感じに緩和されるので、重い武器の割りに手早いスイングをすることができます。
時々、言っていますが「重い」「硬い」「早い」が攻撃力の重要な要素です。
非常に密度が高くて「重い」木材、これはとても「硬い」ので、それを「早く」ぶつける。
とても理にかなった攻撃ができるように設計されています。
そればかりではなく、ヘッドの部分を相手に引っかければ、バランスを崩したり、こちらへ引き寄せたりする事もできます。
先端が薄く作られているのであれば疑似的な刃にもなりますから、上手く使えば切り付けるような使い方も出来たかもしれません。
振り下ろし方によっては斧ような働きもします。
そして、柄の部分も鋭い槍のように扱えます。
木材が硬いので、折れたりする心配は比較的少ないため、相手に突き刺す事も可能です。
◇
~万能な働き~
ブン! と鈍く空気を切り裂く音を出しながらトゥハ・トゥハを振り抜くが、相手は体をかがめるようにして避ける。
トゥハ・トゥハは砕くはずだった頭に当たらず、何もない空間を通り過ぎる。
安堵した吐息が聞こえてくるが、使い手は眉1つ動かさずに通り過ぎたトゥハ・トゥハを引き戻し、そっと相手の肩にヘッドをひっかける。
相手の視線が肩に向く、もう遅い。砕くだけがトゥハ・トゥハではない。
使い手は肩に引っかけたヘッドを自分の方へ引っ張ると、相手はつんのめったように使い手の方へ向かってくる。
引っ張った時の力を使ってトゥハ・トゥハを反転、こちらに体を差し出してくれる相手に向かって使い手も倒れ込むかのように迫る。
使い手の体の前にはトゥハ・トゥハの鋭く尖った柄の先端が突き出されている。
土に杭が刺さるような鈍い摩擦が使い手にトゥハ・トゥハを通して伝わり、足元にポタリポタリと赤黒い滴が落ちて地面に染み込んでいく。
棍棒にも関わらず、砕く、引っかける、突き刺すという多数の使い方ができる。非常に考えられた武器です。
木製の武器は弱いという印象を持つ方が多いですが、そうとは限りませんし、その「弱い」という思い込みこそ付け込まれる隙になってしまいます。
断言できるという確信を持って言いますが……
この武器は強い。
硬ってぇ!
検索するときは「トゥハ・トゥハ 武器」とか「トゥハ・トゥハ マオリ」とかで検索しないと、全然違う人物とかがヒットしちゃいます。