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第74回 鍬(くわ) 農機具を武器とせよ

くわ


 今も昔も農作業に欠かせない、地面を耕して柔らかくして、土を盛り上げたり掘り下げたりと農作物が育ちやすい環境を作るための道具ですね。


 人類の歴史に登場してきたのは、農耕が始まってすぐの頃。

 遥か昔から、人類が共としてきた道具が鍬です。


 実は、農作業用品から武器化されたものというのは結構沢山あります。


 中国の物語、西遊記に出てくる河童と豚の妖怪、沙悟浄と猪八戒も独特な形状の武器を手にしています。


 沙悟浄が持つ武器として描かれている、棒に月牙と団扇うちわのような金具が付いた武器は「サン」と言い(「金」を偏にして「産」をつけて書く)、「降妖宝杖こんようほうじょう」という名前がついています。


 スコップのように土を掘り起こしたり、地中の植物の根を切ったりする道具が元になっています。


 猪八戒が持つ武器は「ハ」もしくは「パー」と呼ばれ「鈀」もしくは「釘鈀」と書かれます。

 T字型になっており、横棒の部分に規則正しくトゲが並んでおり、土を平らにならしたり、種を植えるための溝を作ったりする農機具が元となった武器です。


 人類が狩りから農耕へ生活様式を変えた後、せっかく育てた作物や手を入れた田畑を守るために武器を手に取る必要が出てきました。


 農作業用品に加えて、武器まで持つと荷物はかさばるし、管理も大変になってきてしまいますよね。

 農作業用品を武器にする事で荷物を減らしたり、物品の管理をやりやすくすると言う事は合理的だと感じます。


 今回取り上げる鍬は、そのまま鍬です。

 猪八戒や沙悟浄のように農機具が変化して武器化したものではなく、そのまんま鍬。

 ホームセンターの農耕具の売り場でいつも売られているあの鍬です。


 農作業と言えばコレ! といったイメージ通りのあの鍬なんです。

 これが武器になってしまいます。

 しかも、結構便利に使えちゃうんですよ。





~鍬とは何か~

 鍬は万能な農機具です。

 道具なんですよ、本来武器じゃないんですよ。


 鍬ってのは万能農具です。

 土を耕す、雑草を刈る、雑草などを刻んで土に混ぜ込む(堆肥を入れて土作り)、ジャガイモなどの収穫で土ごと掘り起こす、作物が育つように土を盛り付ける、土を盛り上げてうねを作る、などなど。


 実に便利!

 地面にも打ち込んでも問題無いほどに丈夫、広い面積を誇る板状の先端をもっているからこそ、こうして土を自在に扱えるようになっています。


 柄の先端に板状の金属が取り付けられており、一方が飛び出たような形状をしています。


 飛び出た先端には刃が付けられていますが、農作業ですり減るため日本刀のような鋭い刃ではなく、斧のような肉厚で重さと勢いで叩き切る事ができる構造になっています。


 実際には地面をまな板代わりにして、雑草や木片を切ってそのまま土に混ぜ込む使い方をするので、鈍器のような性質にも近いですね。


 昔は金属が貴重だったので、全て木製で作られていたり、先端の地面と接する部分だけを金属で覆って強化したりと、金属を極力使わないで作成されていました。


 現代のような先端が全て金属になっている鍬は当時は高級品どころか、「やりすぎで勿体ない」「あの1本で鍬は何十本も作れるから金持ちの道楽だ」など非難されてしまうでしょう。


 現代の金属がふんだんに使われている鍬を勢いよく振り下ろせば、人体も骨が見える程にガッツリえぐられてしまいます。

 当たり方によっては骨にヒビが入ったり、重要な臓器を貫いたりする可能性も見えます。


 昔の金属が少量だった鍬でも、先端がキレイに当たれば肉を削ぎ落す事も可能だったでしょう。

 もうね、骨から肉を削ぐがごとく、ゴッソリとね。


 昔話や戦国時代をテーマにした作品などで、農民が鍬や鎌を構えて一揆を起こす様子が描かれている事がありますが、鍬は振り下ろすという扱いであれば十分に武器として成立しています。


 全身鉄鎧で無い限り、鍬で十分に重傷を与えられますからね。

 では、道具の鍬を本気で武器としてみましょうか。





~武道、鍬術~

 武器化されている以上それを扱う技術を人類は考えます。

 より効率よく、より効果的に、そして攻撃を通すためにより奇抜に、より姑息にと扱い方を研究していきます。


 特に鍬は農作業をしている時や、日常生活で誰かに襲われた時など、咄嗟とっさに手に取る事ができる道具の1つですね。

 だって、農作業中は一番身近にありますでしょ?


 先端が広い金属なので、相手が剣などを使っていたとしてもそれを弾く事ができますし、例え折れたりしても農作業にも耐えうる丈夫な柄を持っているので、素手に比べたらずっと頼りになる武器にできます。


 護身術としても研究されていた側面もあるように感じますね。


 インターネットでも「鍬術」「少林鉄鍬」とかで動画が見つかります。

 日本ではまさに「鍬」をそのまま使っている道具が多く、沖縄の古武術が上がってきました。


 中国の物ではスコップのような形状だったりしていましたね。これも立派な農機具です。

 沙悟浄が扱ってる物にそっくりですね。


 いくつか見てみたのですが、棒術に近い扱いをしているような印象がありました。

 確かにこれなら、鍬専門の技術を少し足すだけで比較的習得は容易ですし、先端が折れたり取れたりしても棒術として戦う事も可能です。


 身近にある物を取り入れていますので、わざわざ武器を持ち運ぶ必要も無いため、合理的な技術です。


 先端の金属部分で突く、重さを活かした振り下ろし、先端を打ち上げるように使う振り上げなど先端の重量を上手く扱っています。


 特に振り上げる際はかなり下から振り上げている動きもあるので、地面を削り、土や小石で目つぶしをしたりすることもできたでしょう。


 とは言っても、戦う場所によっては土や小石を拾えなかったり、畑の真ん中など柔らかい地面では踏み込んだ時に自分の足が取られ、振り上げその物の威力が下がってしまう事も考えられます。


 目つぶしはあくまでも応用技です。

 目つぶしや足止めなら乱定剣らんじょうけん(その場にある物なんでも投げつける方法)で土でも、農作物でも、鍬そのものでも投げつけて逃げる方法がいいのかもしれません。


 金属部分を活かして、鍬を棒術のように持って行う突きは効果的と言えるでしょう。

 先端が武器になるのと同時に、相手の武器の攻撃を防いだり、弾いたりする盾の役目にもなっています。


 連続した突きで相手の武器を弾き飛ばすことができれば、先端相手の顔を打ち据えます。

 鍬という重量のある金属を顔面に叩きこまれる訳ですから、ノックダウン確定ですね。


 お腹を押されればしりもちですし、相手の足を耕してあげれば、大ダメージです。


 ちなみに鍬も以前取り上げた鎖鎌のように同じ物は2つと無いと言えるほど多数の形状があります。


 それも、農作業を行う地域の土壌の性質、作る作物によって使いやすい形状にする事、使い手の体格に合わせて丁度良い大きさにする事、などなど様々な要因があるからです。


 武器として鍬を作ったのではなく、鍬という道具を武器にする技術が発展していたということですね。


 鍬は武器じゃなくて道具ですからね、本来の用途は農作業です。

 専用の武術まであっても、道具ですからね。


 これを武器にするときは、突然襲われた時などの護身のためです。

 農機具で殴りかかってはいけません。

どっこいしょ~! ヨイサ! ホイサ!


 掛け声っていっぱいありますよね。

 ヨイショ~! もあるかな。


 ホイ、ホイと軽い調子で、先端でゴンゴンされたらアッというまにボッコボコ。


 リクエストありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鍬は構造的に先端部分が取れてしまわないか心配になります。まあ、取れてもおっしゃる通り、棒として使えますが… ゾンビと戦うのに適した武器だと思います(勝手なイメージ)
[良い点] 『鍬』のリクエストに応えていただきありがとうございます。 斧と90度向きが違う刃。見るからに振り抜きにくく、振り下ろし以外、扱いにくそうです。 とはいえ……… 、 スローライフ主人公が…
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