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第73回 アゾット 錬金術師が悪魔を宿す(幻想武器)

アゾット・アゾット剣


 とある錬金術師が寝る時にも手放さなかったとされている短剣。

 この錬金術師はラテン語では「パラケルスス」ドイツ語では「ホーエンハイム」という名を持っていました。

 彼が1541年に亡くなるまで、常に持ち歩いていた短剣の名前がアゾットです。


 まずは短剣の説明というより、持ち主のパラケルススと錬金術についておさらいをしておきましょう。


 今でこそ錬金術というと、悪魔や精霊などともかかわりがある科学的な根拠がない物と思われていますが、実際は科学的な根拠よりも伝承や宗教、人間の思い込みなどが優先されていた時代から現在の科学的な根拠を求める学問に変わる過渡期とも言える混沌の中にあった学問というのが実際のようです。


 パラケルススも哲学・医学的な知識を持ちながら、当時存在していた占いを医学に活用する医学占星術や自然魔術の知識も持ち、鉱山病などを個別に研究する科学的な実践も行っていました。

 これらの経験を元として宗教的な要素が強かった医療に化学を導入して、化学的に医療を提供するということを始めています。


 水銀やヒ素、鉛といった現代では悪影響しかないと言える程の物も投入していたので、悪魔学的に思われるかもしれません。ですが、こういった実験と実践があってこそ『効果が無い』ということもハッキリ言えるようになるものです。

 実際にこういった実践から、当時梅毒に効果があるとされたグアヤックという植物が全く効果が無い事を証明するなどの成果も出しています。


 特に毒については実践に基づいた知識が深く。

「この世に毒など存在しない、言うならば全ての物が毒なのだ、毒になる量とならない量があるだけだ」

 という意味の言葉を残しています。

 現代でも『服用量が毒を作る』という意味合いの言葉が医学や薬学の分野では言われてるほどです。


 パラケルススは1か所に留まり続けたと言う事は無く、教授や医師としての仕事をしながらあちこちを放浪する生活を送ってました。この期間は非常に長く『放浪の錬金術師』とも言えるほどでした。だからこそあちこちで学びを得て、実践という経験も積む事ができたのでしょう。

 神秘の世界の知識も持ちながら、根拠がある事を基本とする現代科学の初期の初期という知識も持ち、様々な方面に精通する天才が錬金術師パラケルススという男性です。





 放浪の錬金術師とも言えるほどですから、旅をし続けていたということは疑いようがありません。

 当然旅には自衛のための武器が必要です。短剣としていれば持ち運びにも便利ですし、使い勝手も悪くありませんから選択としては十分に候補に入ってきます。


 ここに悪魔や神秘的な要素が入ってくるのですが、パラケルススの持つ短剣『アゾット』にはいくつかの伝承が残っています。


 剣の形状として詳しく書かれている物は見つからないのですが、何の変哲もない短刀、ナイフを長くグリップをしっかりさせて鍔を取り付けたような物だと想像できます。

 柄頭に「AZOTH」と文字が彫ってあったことがこの短剣の名前の由来です。


 パラケルススはアゾットの柄に悪魔を飼っていたという伝承が残っています。柄頭もしくは鍔の付け根に青い宝石がありここに悪魔を宿していたとか、剣そのものを封印の媒体として悪魔を剣に宿していたなど、色々と言われているようです。


 パラケルススは必要により悪魔を呼び出して、その力を行使させたり、知識を借りたりと見事に悪魔を使役していました。どのような悪魔だったのかは分かりませんが、膨大な知識を持つパラケルススと語り合えるほどなので、かなり位の高い存在を使役していたのでしょう。


 さらにアゾットの握りの部分には象牙の容器が隠されており、ここには万物を治す薬や麻薬・劇薬が入っていたそうです。

 パラケルススは放浪の旅の途中に『この病気を治したら大金を渡す』と懸賞がかかった病人と出会い、見事のその病気を治しています。このときに先ほどの悪魔の知識を借り、アゾットの中から薬を取り出して使ったともいわれています。


 パラケルススは剣士でも戦士でもありませんし、剣術の心得もあまりなかったでしょう。そして仕事としていた錬金術は体を使う仕事でもないので、当然戦う力はかなり弱かったはずです。

 それでもアゾットを寝る時まで離さなかったのはなぜでしょう。


 悪魔との契約によって、アゾットを常に持ち歩く事が決められていた?

 柄に隠された神秘の薬を盗まれる事を恐れた?

 膨大な知識を持つために、常に国や貴族達に狙われていた?


 膨大な知識を持つパラケルススの事を一般人からしたら悪魔の力を借りているようにしか見えなかったのかもしれません。

 あえて『悪魔付きの短剣だ』と言いふらして常に持つ事が、一般人や貴族、犯罪者を問わず怖がらせる結果になり己の身の安全につながっていたのかもしれません。


 それとも神秘的な知識を持っていたパラケルススの事です。

 そのころには本当に神秘的な力を操作する技術がまだ残っていて、人類にはそれが受け継がれていた。パラケルススはそれを活用して本当に悪魔をアゾットに宿していた。

 かもしれませんね。

悪魔よ! 我に従え!


 悪魔をも超える知識を持つとも言われていたとされているようです。

 アゾットには「水銀」とか「始まりと終わり」といった意味などもあったなど色々な説が現在でも唱えられています。

 パラケルススの知識量の膨大さ、その時代の背景など様々な要因が複雑に絡み合っていて真実が追いきれなくなっていますね。

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