第67回 アパッチピストル 欲張りセット
アパッチ・ピストル
アパッチ・リボルバー
アパッチ・ナックルダスター
呼び方が多数ある武器ですが、今回はアパッチ・ピストルの名前を使っていきます。
使われていたのは1900年代のフランス、ならず者や犯罪者、粗暴な奴や強盗をするような奴らを総称して「アパッシュ」と呼んでおり、そんな危険な奴らが使っていた武器です。
アパッシュの語源はアメリカインディアンのアパッチ族から来ています。
なんというか、うんやっぱりという印象。
アパッチという言葉はアパッチ族から襲撃を受けていた、ズニ族が「敵=アパッチ」と呼んでいたのです。
アパッチ族は事情もあったのでしょうが、メキシコとの国境周辺で馬車など行き交う所で強盗行為をしていた事もありました。
アパッシュも裏路地を拠点に強盗を単身もしくは集団で行う若者を「安全の敵=アパッシュ」と呼ぶところから来ているので、アパッチ族を非難する用語との共通点は多く残っています。
アパッチ・ピストルと言っていますが、正確にはアパッシュ・ピストルなのかもしれません。
次で形状の説明に入りますが、まさに「安全の敵」を象徴するかのような形状をしています。
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~形状~
アパッチ・ピストルは『ナイフ』『リボルバー銃』『メリケンサック』を一個にまとめています。
リボルバー銃のシリンダー部分を中心に折りたたみ式の十徳ナイフのようにメリケンサックとナイフを折りたたんで置く事ができるようになっています。
なんと、これだけの武器がくっついているにも関わらず、一般的な服のポケットにもしまえるようなサイズになっています。
ナイフは片刃になっているので、収納したときには刃がリボルバー・シリンダーの方を向くようになり、逆にメリケンサックは収納した状態だと、相手を殴りつける部分が外側を向くようになっています。
そのため全てを収納した状態だと、重さが手の中に集中した重量型のメリケンサックになります。
ナイフだけを起こすと、メリケンサック部分が握りになるため、接近戦では突き刺す、切り付ける、殴りつけるなど複雑な使い方をできるナイフ。
メリケンサックも引き起こすと、メリケンサックを握りとするリボルバー銃になります。
メリケンサックの根元に撃鉄が付いているので、これを引き起こして、メリケンサックと一緒に引き出せる引き金を引くと、銃弾が発射される仕組みになっています。
銃弾はリボルバー・シリンダーから直接発射されるため、威力そのものは大した事はなく、命中力も低いのですが……
威力は大したことないとか言いながら銃撃ですから、十分に致命傷を与える威力は保っています。
命中力も低いと言いながら、基本的に接近戦に使う武器なので、密着して発砲すれば必中です。
砲身が無いにも関わらず、起こされたナイフが砲身のように見えてメリケンサックはまさにグリップ。
銃とナイフとメリケンサックを同時に向けられるという恐ろしい体験をすることができます。
しかもその持ち主は犯罪組織。人を傷付け、殺す事すらも生業としているような奴らですから、その背景も相まって、アパッチ・ピストルを取り出された瞬間の恐怖はどれほどの物となるかイメージできるのではないでしょうか?
めっちゃ怖いっすよね!
◇
~威力と運用~
この武器の最大の威力は見た目です。
持っているだけで明らかに犯罪組織の一員です、どの攻撃手段を食らってもシャレにならないダメージになります。
メリケンサックで殴られると歯も折れますし、打撲後がガッツリ残るほどの怪我になります。
喰らいたくないです。
ナイフ刺されると、刺される場所にも寄りますが致命傷に至りますし、神経などを斬られたら重大な後遺症にもなりえます。
やられたくないです。
銃で撃たれたら、シャレになりませんよね。威力が低いと言っても頭に当たれば即死も有り得ます。
ね、やばいっしょ? でもでもなんですが……
筆者ピーターの持論ですが、こうした収納や可動という仕組みになっている武器は、強度が大きく下がるという大きな欠点がついてまわります。
扱っている間の衝撃などが可動部に集中したり、汚れやホコリなども溜まりやすいので故障しやすいんですね。
ナイフも根元の部分がネジ1本で止まるため、これで突き刺したり、相手の武器を払ったりすればすぐに緩んでしまうはずです。
メンテナンスの大変もそうですが、トラブルも多くなる事も有り得ます。
脅しが目的ということであれば、間違いなく星5つです。
とくにメリケンサックとナイフを収納できているという所は見事ですね。
使い捨てになりえる可能性を考慮すればナックルガード付きナイフがポケットに入る訳ですし、見つからないように簡単に隠す事ができるようになっているので、隠し武器としても有能です。
ただ…… アパッチ・ピストルならではの大きな欠点を把握しておいて下さいね。
いいですか?
これね、簡単に暴発するんです。
シリンダーに弾を込めておくと、雷管がシリンダーから飛び出している状態になっています。
なので、これをちょっとでも叩けば弾丸が飛び出ます。
どれくらいちょっとかというと……
服のシワに引っかかって押される。
ビスケットを割るくらいの力で、アパッチ・ピストルを入れているポケットを叩く。
荷物を運ぶときに、荷物をコンと当ててしまう。
こんなんで、バンッ! と発射されてしまうわけです。
なので、当然ですがメリケンサックで殴った時の振動でも暴発してしまいます。
やり方によっては、ナイフで突き刺した後にシリンダーを叩いて意図的に暴発させるということも出来ない事ではありません。
刺した上にそこに近い場所を撃つというのは、オーバーキル的な使い方なのですが、強烈な脅しや恐怖を与える事が目的であれば、刺された上に撃たれるので恐怖を与えるには効果的です。
銃として扱うには正直向きません。
標準を定めるための照星や照門が無く、砲身もなければ弾頭に回転を与えて安定させる溝もありません。
狙いが定めにくいばかりか、弾丸が安定しないので明後日の方向に飛んでいく事すらあり得ます。
暴発の危険も非常に高いため、暴発を防ぐためには弾丸を全て抜いておかないといけませんが、そうするとすぐに撃つことはできません。
やっぱり脅しに使うのが最高でしょう。
最初はオモチャみたいと思われたかもしれませんが、刺されて・撃たれて・殴られて、と暴力のフルコースを味あわせるアパッチ・ピストル。
医者に連れ込まれたり、やられ過ぎた被害者が道に倒れていたりすれば、アパッチ・ピストルの威力は十分知らしめることができます。
これが続けば、扱う犯罪集団の武威も上がります。
アパッチ・ピストルの持ち主はポケットからチラリと見せて言ってやりましょう。
「言う事を聞くなら何もしない。嫌だっていうなら刺されるか、撃たれるか、殴られるか、選ばせてやるよ全部でもいいぜ? オラ! 早く選びな!!」
うん、めっちゃ怖いわぁ。
あぶねぇ!
文字通り危険と隣り合わせなんだけど……
武器としての危険はもちろん、構造上の危険と暴発の危険。持ち主も危険人物だし、持っている事も危険だし、これを向けられる人も危険だし、こんなん持ち歩く人がいる街も危険だし、そもそもこんな武器がある社会が危険です。
ゲシュタルト崩壊するレベルで危険しかない。
弾丸を放てる物に刃物が付けば「銃剣」だ!
これを暴論と人は言うのだろうか?




