第63回 微塵 何でも砕く鎖鉄球
微塵・未塵・鎖玉
読み方はそのまま「みじん」となります。いわゆる「鎖武器」の総称としても使われる事がある名前ですが、鎖の先に鉄球や分銅を取り付けた鉄製のボーラの事を指します。
資料によっては鉄の輪に鎖が2~3本ついていて、その先に分銅が取り付けられた形状を指したりしています。
鉄の輪の部分を持って勢いよく振り回して、投げつけたり、叩きつけたりして攻撃します。
これをぶつけられた相手は文字通り、木端微塵に砕けるほどの大ダメージを負うことでしょう。
使われていたのは江戸時代、護身具としても捕り物としても使われていたそうです。
色々な流派があり、使い手の流派によっても呼び方が違ってくるそうで、分銅鎖などと言ったりもします。
木端微塵の「微塵」の語源がこの武器かと一瞬思いましたが、微塵は仏教用語で物質の最小の単位である『極微』が6つないし、7つ集まった物が『微塵』というらしいです。
つまり、そこまで小さく砕く事ができるということでしょうか?
重量は鉄球1個に付き200グラム程度、鎖の部分まで含めてもそこまで重い武器ではありません。
数本セットの物にしても1キロまで行かないので、鎖をまとめれば小さくなりますし、持ち運びにも便利ですね。
それでは詳しくみていきましょう!
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~使い方 投擲~
形状はそのままボーラなので、全力で振り回して投げつける使い方があります。
遠心力が強い味方になりますから、その威力は折り紙付きです。
ピッチングマシーンがデッドボールコースで鉄球を投げつけてくるわけですから、直撃でもしようものなら、大腿骨のような太い骨でも簡単に砕けてしまうでしょう。
びゅんびゅん回して加速させておくだけでも十分な威圧をすることができます。
複数の鎖を持つタイプなら、相手の足や腕などを狙って絡みつかせて動きを封じたりすることもできますし、材質が鉄なので刀などの刃物でも切る事はできませんので、武器に直接絡みつかせることが出来ます。
刀に絡みついた鉄球付きの鎖ですから、重いし振り回すたびにジャラジャラと意図しない方向に振られますから、上手く振る事ができなくなります。
当然、刃こぼれもしますから、微塵を持つ相手に対しては刀を構えたくなくなります。
また隠し武器として、鎖の部分だけもっておいて、刀を抜くかのように腕を大きく振って投げる方法もあります。
相手が手ぶらかと思いきや、野球のアンダースロー・サイドスローの要領で鎖付きの鉄球が飛んでくるわけです。
加速が振り回した時ほどではないにしろ十分な打撃になります。
さらに、鉄球ということは色が黒っぽいということ。夕方であれば周囲に溶けるようになるので防ぐことも難しかったでしょう。
微塵はこうした飛び道具としても使う事ができますが、この微塵の本領は接近戦にあります。
続いて接近戦の使い方を見て行きましょう。
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~使い方 接近戦~
呼び方は多数ありますが、鉄球付きの鎖である微塵を用いた護身や捕り物の流派は多数あります。
流派によっても扱い方に違いはありますが、拳が届くかのような近接の殴打・刀などの武器が届く距離の遠距離の殴打・鎖という形状と鉄球の重量を活かした絞め、この3つが基本になります。
分銅と鎖というシンプルな武器ですから、分銅に近い場所を持てば近接の殴打、遠い部分を持てば遠距離の殴打が可能です。
持つ場所や振り方で威力や間合いを自在に調整する事ができました。
分銅と鎖が複数あるタイプであれば、分銅を何本扱うかによっても威力や間合いが変わります。
一本の端を持てば、鎖2本分の長さを確保できるので、かなり広い間合いで攻撃ができますし、その長い鎖があればその分グルグルと相手に絡みつかせる事ができます。
長い鎖武器だからこそできる『鎖が一回り相手に絡みついてから分銅がぶつかる』という拘束と打撃という2段階の攻撃ができます。
相手に絡みついたら引き倒す。引き倒してから鎖を引き絞って締上げる。
攻撃の連携の幅はとても広くなりますね。
両端に分銅が付いていたり、最初に説明した鉄の輪に鎖分銅が付いたタイプであれば、中心になっている部分を掴んで振る事で、全ての分銅を同時に相手に叩きこむ事ができます。
この場合、間合いこそ狭いですが、1個だけでも骨を砕くほどの攻撃が複数飛んでくるわけですから。一撃で相手の戦闘力を奪う事ができます。
ヌンチャクよりも扱い方のバリエーションが豊富とも言えます。
ヌンチャクは棒の部分で殴打するという棍棒のような使い方ができますが、微塵はこの『殴打』ができません。
鉄球なので鎖で振って使うという事が基本になるので、扱い方はヌンチャクよりも難しいです。
こうした近接での使い方は、かなりの技量が求められます。
相手との間合いや武器の性質によって微妙に持ち方を変える。不意打ちを狙うのか、直接殴打を狙うのか、はたまた武器に絡みつかせて奪うのか、この選択肢の多さが魅力でありなが、使いこなす難易度をあげています。
さらに、勢いよく振った時に相手が避けた場合、勢いが乗った鎖と鉄球を上手く操って次の攻撃に繋げないと、遠心力で鎖分銅は自分に向かって飛んできます。
遠距離で扱った場合で引き絞り、近接殴打を狙う場合も引き絞り過ぎた場合も自分に向かって飛んできます。
自滅する危険と隣り合わせなんですよね。
選失敗時の自爆率の高さという点があるものの、持ち運びの良さ、相手を殺さずとも取り押さえられる事、近接から遠距離に投擲まで扱える。
微塵は万能な武器と言えるでしょう。
……十分に鍛練したらの話ですけどね。
砕け散れ!
悪魔が泣いちゃうアクションゲームでも、カチコチに凍らせる武器でこんなの出てきました。
滅茶苦茶カッコいい!