第61回 マント&ポンチョ 実は便利な補助の武器
マント・ポンチョ
これらそのものが、直接相手を攻撃してダメージを与えたりするという訳ではありません。
相手の必殺の一撃をそらしながら、こちらの刃を通すための手助けをしてもらうためにマントやガウチョなどの布を使う事ができます。
アニメやゲームではマントの外側に刃や鉄板を仕込んだりして、振り回して使うと鎖武器などと同じような動きをするようにしてある描写もあります。
中には沢山の鉄のトゲを仕込んだり、細かい金属のパーツを組み合わせて全て金属で仕上げてあったりしますが、これだけ豊富に金属が使われていれば重量がエライ事になっていると思います。
強そうだけどね。
赤い衣装のジャンプが得意なあの方もファイヤーボールに続いてマントを武器にして、敵を倒していたりしますね。
どこかのゲームでも、マントを付けた人形のような敵を倒したら、人形が溶けるように消えてマントだけがその場に落ちる。
しばらくするとマントから再び人形が立ち上がってきて襲ってくるという。マントが本体という敵が出てきたりしました。
ファンタジーとしてもマントは欠かせません。
マントやガウチョをテーマにしていますが、これに限らず、護身術の1つとして対刃物用に衣類を使う技術があります。
素手でナイフに立ち向かう事は心理的にもかなり厳しいですね。
ですが、コートやジャンパーなどの上着を腕に巻きつければ、ナイフなどを弾く程度の事をしても手を切る事はありません。
相手の目前へバサッと振って距離をとったり、あるいは投げつけて視界を奪ったり、攻撃のための切っ掛けを作るためにも利用できます。
◇
~マントでディフェンス~
以前にも書いた刺突剣レイピア・フルーレ・エストックなどなど、この辺りの武器は1本の剣によって攻撃と防御をこなす技術によって発展していました。
発展したからには、当然これに対応するための武器も登場してきます。
この対応する防御のための武器が、マインゴーシュ、ソードブレイカーに代表される『パリィ・イング・ダガー』です。
マインゴーシュ、ソードブレイカーが登場する前は刺突剣の鞘を持ってみたり、マントや上着を左腕に巻き付けてみたり、など試行錯誤の時代です。
直接腕を切られないようにして相手の剣を弾けるように構えをとっていました。
正直、突き技が主となる刺突剣に対して、これらの防御方法は少し弱いと言えます。
鞘では刺突剣本体を使う時に比べて明らかにスピードで劣りますし、マントでは突き攻撃で簡単に貫かれてしまいます。
ですが、手持ちの物で刃物を防ぐと考えると、比較的有効と言えるのがこれらの方法でした。
右手には刺突剣を持ちますので、マントを左手に巻いていたとして、真正面から突き攻撃を受け止めれば簡単に貫かれてしまいます。
なので、相手の突き攻撃に対して、先端に当たらないようにして左手で左側へ押すように軌道をずらします。
左手で右側へ弾いてはいけません。
自分の胴体に直撃します。この場合は右に弾くと同時に自分は左側へ移動して体ごと相手の剣の外側に避けるという大きな動きが必要になります。
相手の放つ神速の突き攻撃をキチンと見極めないとこんなことできません。
あれ? そこまで見極めていたら自分の剣で弾いてから反撃に転じる事もできるんじゃね?
ファンタジーな作品などでは、肩から地面に届きそうな程のマントを大きく翻しながら華麗に突き攻撃を避けたり、短剣を使って雨のように繰り出される突き攻撃を次々と弾き返すといったカッコいいシーンもあります。
他にも、相手に向かってマントをかぶせるようにして投げつけて、相手がマントを切り払った瞬間には後ろに回っているシーン。
必殺の一撃の前にわざわざマントを相手に被せてから剣を突きこむシーン。
こんな風に使うこともありますよね。
これらには相手の視界を奪う事によって、こちらの動きを隠したり、剣を弾いたりできなくさせる。
マントが絡みつく事で動きも封じて、相手の返り血を浴びない効果もあります。
マント1枚を使い捨てにする価値はありますね。
実験してみたいかた、ご家族やご友人と枕投げやってみましょう。
毛布を相手に投げつけてから、枕を投げつけると面白いようにぼこぼこに当たります。
布がかけられている事で動きと視覚の両方が封じられている訳ですから、避けようがありませんね。
大体こんなことを始めると、毛布や枕での殴り合いにまで発展します。
くれぐれも喧嘩しないように気を付けてやりましょう。
◇
~エスグリマ・グリオーラ~
頂いた情報を元にしています。
ありがとうございます。
これは南米の民族ガウチョに伝わる戦い方です。
ガウチョとは南米に居住していた民族でスペイン人と先住民の混血民族です。
彼らは南米のカウボーイとも言える主に放牧を生業とする民族でした。
彼らはツバのハッキリとした帽子と、マントのように身に着けるポンチョを正装としており、ファコンというグリップがしっかりしたナイフを持っていました。
彼らが決闘をするときにはファコンを構え、反対の手にはポンチョを垂らすように持ち戦いを繰り広げていました。
前述した、左手にマントなどを持つようなヨーロッパでの戦い方が回りまわって南米に伝わり、独自の進化を遂げて戦うファコンとポンチョのスタイルに変わりました。
ヨーロッパの刺突剣は戦うために特化した作りである事に対して、このファコンは牛の皮や肉を切ったりする事など日常生活用品でしたが、戦いにも活用できるように進化したアイテムになっていきました。
武器というよりも、戦いにも使えるようにした道具だと言えます。
放牧民なので、荷物も増やせられませんから実に合理的な事ですね。
垂らされているポンチョは腕に数回巻き付けてあるので、ナイフの斬撃で何度も切り付けられなければ腕にダメージは出ないようになっています。
元々、防寒・暴風のために使っている物がポンチョなので、生地としての丈夫さは折り紙付きです。
巻き付ける時にポンチョの端を握り込んでいるので、腕の力が余さずポンチョに伝わりますので勢いよく振る事ができるようになっています。
動画も見てみましたが、正直これはすごいですね。
バックラーという小さいお鍋の蓋のような盾があるんですが、こいつが意外と多機能でして、これに通じるほどの効果を出しています。
バックラーは直接相手を殴りつけるシールドバッシュや相手の顔の前に突き出して視界を奪うブラインドなど、相手の攻撃を受け止める以外に様々な使い方ができます。
ポンチョも同様です。
ポンチョをバサバサと振ったり、相手の顔に叩きつけて視界を奪ったり。
叩きつけるポンチョの後ろからナイフを突き出す事で、ナイフを持つ手を相手の死角に入れる。
ナイフを突き出して、相手の視点をそこに集中させ足元にポンチョを垂らしておく。
相手が反撃で踏み込みながらナイフを突き出してきた所をバックスッテプしてかわす。
相手が垂らしたポンチョに気付かずにいればバックステップ時にポンチョを引っ張って転ばせる。
こうした相手の視線を遮るテクニックは離れてみていると『何やってんだ』と思う物ですが、至近距離でやられると、本当に分からなくなります。
特にナイフなどの凶器を持っている時は本能的にそこへ視線を向けてしまうので、他の部分は視野の中心から外れています。
ポンチョそのものの威力はいわゆる「弱パンチ」くらいの威力でしょうが、死角を増やして視界を奪う、体制を崩させる、相手のナイフを受け止めるなど、十分に補助武器どころか戦う技術の中心を担っています。
防寒具であるポンチョという布が、ここまで武器化できるとは思いませんでした。
ぬぅ、見えん!
死角を増やすテクニックって沢山あります。
ただ、観客の立場だとこれが分からない。相手と対戦している人でないと分からない世界もあるということですね。
本当にレベルが違う人だと、手品を見せられているようにも感じる物です。
情報ありがとうございます。
評価やブクマなど頂けると励みになりますので、よかったらポチっとお願いします!
リクエストもよかったらどうぞ!