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第60回 てぬぐい 日用品を武器とする

手拭てぬぐい・手ぬぐい・てぬぐい


 お土産物や和物のグッズ、時々タオルなどの贈り物の代わりにもされる。日本人なら馴染み深い一品。

 最近は専門店が登場したりと、てぬぐいの良さが見直されています。


 隠し芸や、お笑いの舞台での小物などにも登場しておりますし、鉢巻きにしているキャラクターも沢山いますね。


 これがね便利なんですよ、汗を拭くに限らず、体や物を洗うも、荷物を縛るも、傷の手当てもなんでもござれ。

 時には水のろ過や道しるべなどのサバイバルテクニックにも使えます。


 昔は旅の博徒達がその土地ごとの仕切りをしている団体に、賭博場を開くお願いに行く時、数日宿を借りたりするときなどにはこの手拭の模様が身分証明になった事もあったほど。


 100%植物の自然由来の繊維、綿で作られている布がてぬぐいです。

 木綿と言えば誰でもピンと来ますよね、そうですお豆腐を作るときに使われている物も木綿の布ですからね、本当に色々な所で使われています。


 化繊の布は水に濡れると強度が下がる物が多いですが、綿は濡れても強度は下がりません。

 だから濡れるような所にも使われているんですね。


 肌への刺激も少ないし、便利で丈夫。日本人の心と技が集約された『てぬぐい』これが武器になってしまうんです。


 不謹慎な使い方?

 そんなことはありません、万能道具のてぬぐいは武器にも防具にもなるんです。





~忍法てぬぐい~

 忍者の普段から持ち歩く忍び道具の中にも「てぬぐい」があります。


 普段から明らかに『拙者、忍者でござる』と言った服装はしていないので、町民に紛れたり、商人になったりとあちこち旅して諜報活動をする人であれば、旅支度の服装は基本になります。

 と言う事は手ぬぐいも持ち歩いていて当たり前の物になりますね。


 ほうかむりをしたり、汗をぬぐう仕草で顔を隠せば、違和感なく正体を隠す事にも使えます。


 頂いた情報ですが、てぬぐいを濡らして剣や鞘の間に垂らしておいて、これを振り回すことで飛び道具を叩き落したり、目くらましにするという話がありました。


 確かに濡れていれば、水の分の重量が上がり、丈夫な繊維が水で固く締まりますから十分にこうした対応は可能です。


 矢や火縄銃に対しての防御術にも、てぬぐいをはじめとした布が活用できます。


 水に濡らしておいてダランと垂らしておくと、飛んできた矢や玉を包み込んで勢いを殺し、水を含んでいるという重さで貫かれる事を防ぎます。

 結果、勢いを削がれた矢と玉はその場に落ちるか、何とか貫いたとしても致命傷を与える事は出来なくなります。


 忍者の扱う手ぬぐいにはいくつか細工がしてある物もありました。


 ただでさえ丈夫なてぬぐいですが、普通の物よりも丈夫に作っておくことで縄の代わりにすることもできました。

 てぬぐいにフック状の金具を結んでおけば即席の鈎縄として使えます。


 中には金具が無くても、濡れた布を塀の上に引っかけて、水の摩擦力で一瞬体重を支えることで鈎縄の代わりにして塀の上にあがったという話まであります。


 他にもてぬぐいの染料を殺菌効果のあるものにしておくこともあったようです。

 水のろ過をしたときに他の布を使うよりも安全性を上げてあるものもありました。


 このてぬぐいはろ過だけでなく、手傷をおった時の手当てとして巻くだけで、止血と消毒を同時に行えるようにもなっていました。


 こうした防御や、衛生用品としてだけではなく、敵を締め上げる時にも、捕らえた相手の口に猿ぐつわをつける時にも使う事が出来ました。


 てぬぐいだけで7つ道具の役割をすべてこなせるほどの万能さが発揮されています。





~てぬぐい格闘術~

 有名な物は武田惣角氏の逸話です。


 この方は大東流合気柔術を世に広めた方で、柔術に限らず、剣・棒・槍・薙刀・鎖・弓と多種多様な技術を習得しています。

 自分の道場は持たず、呼ばれればどこへでも出向いて武術を伝えていました。


 こうしてあちこちを渡り歩く中、他流試合や野試合を繰り返して自分の柔術の有用性・強さを広めて行きました。


 要するに、ストリートファイトや道場破りもしていたという事ですから、強さで名前が上がる一方、恨みを抱く人間も多数いました。


 ある日、風呂の帰りに6人もの刺客に待ち伏せされて、襲われてしまいます。

 風呂の帰りですから、武器も防具も何も持っていません、持っているのは絞って肩にかけている濡れたてぬぐいくらいです。


 おもむろにてぬぐいを手に取ると、襲ってくる刺客の顔や体にバシンという音が響くほどにてぬぐいを叩きつけ、突き出されてた拳に巻き付けて引き倒す、相手の足に絡めて転ばせる。


 こうして、次々と刺客を倒していきました。

 叩き伏せられた刺客の中にはてぬぐいで叩かれただけなのに、骨折した人もいたようです。


 風呂上がりの無防備な所に6人がかりでも倒せなかった武田惣角、実際にいた人物ということもあって恐ろしいですね。


 相手が刀やドスなどの光物を抜いてきても、刃が付いていない方からてぬぐいを打ち付ければ、刃を包み込むようにてぬぐいが絡んで武器を奪い取る事もできたはずです。


 柔術には現在でも、てぬぐいを使った「太刀取り」という技も伝わっているそうですから、こうした撃退方法は可能だったと思われます。


 私もちょっと疑いまして、実験してみました。


 タオルを水に濡らしてからポタポタと滴らないくらいに軽く絞っておいて、片方の端を持つ。

 ブンブンと振り回したり、腰の捻りと手首のスナップを効かせてスイングするかのように振ってみたりしました。


 野球のスイングのように振った時に「ブオン」と音が出るようになったので、コンクリートを叩いてみたら「スッバァアンッ!!」と滅茶苦茶大きな音と、強い衝撃が返ってきて耳が痛いと思うほどの威力まで出せました。

 ※やっている所みられたら不審者ですからね。

 ※濡れタオルブンブン振り回している変な人を見かけた人、筆者のピーターだったかもしれません。そっとしておいてあげてください。


 濡れタオルでも、窓ガラスを割るくらいなら簡単に出来そうと感じました。


 当たる面積が広かった事も理由だと思いますが、てぬぐいであればタオルより薄いため、衝撃がより一点に集中します。


 広く持つのではなく細く持ち、勢いよく振れば細い木程度なら叩ききれそうです。

 てぬぐいで竹を切ったとか、骨を折ったとか、そんな逸話も見つかりましたが『眉唾じゃない本当だ』と実感しましたよ。


 上手く振れば薄い布が、水の重さと布の柔軟性で刃物にもなりえます。


 こうした日用品を武器や防具にする技術は現在も『護身術』として広まっています。


 最近はタブレットやスマートフォンの普及が広がっていますが、少し前はノートパソコンを持ち歩く人も多く、相手がナイフを抜いて刺してきてもパソコンケースで刃物を弾くという技術が存在していました。


 時代によって持っている物は変わりますから、それに合わせて人の技術も変化していきます。


 当時はパソコンなんて無いですし、風呂に行くのにわざわざ武器を持って行ったりしません。

 脱衣所で武器を盗まれでもしたら一大事ですからね。


 手元にあったのは、服、小銭が入った財布、桶、石鹸、そして「てぬぐい」くらいだったでしょう。


 小銭はぶつければ怯ませるくらいは出来たでしょうし、服を脱ぎ捨ててしまう訳にもいきません。

 たしかにてぬぐいが一番武器に適しているように感じます。


 もしかしたら、お肉を切るくらいのことが濡れたてぬぐいで出来るかもしれません。

 お肉が勿体ないし、そこまでの鍛練は大変だからやりませんけどね。

シャレにならん!


 本当に、本当にビックリですわ。

 だって、真面目につよいんだもん。

 素人が振っても強力なのが、武道の身体の使い方を知ってる人がやろうもんなら、どれだけ強くなることやら。

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― 新着の感想 ―
[一言] >てぬぐいで叩かれただけなのに、骨折した人も 凄いですね。 氷点下の寒さで、濡れたタオルが凍って……、という展開では、ないのですよね? 濡れた手ぬぐいは凶器……。 ミステリ小説にも登場す…
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