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第59回 呉鉤(ごこう) 青龍刀ってこれのこと?

呉鉤ごこう


 呉鉤とは刃に反りがある刀、曲刀や弯刀と総称される物を指す言い方です。


 片刃の剣であり全長は1メートル程度の物が多くあり、重さは700グラム以上が標準とされていました。

 基本的に片手で扱うため、重さは見た目よりも比較的軽量につくられています。


 刃の部分は柔らかく曲線を描き、曲線の外側に刃がついています。

 刃のついていない方を刀背とうはいと呼び、この部分に刃の方よりも丈夫な金属を使うことで剣全体の強度を上げるという、職人の技術が光る逸品も存在しています。


 ネットで「呉鉤 画像」と検索すると色々と画像がヒットしてきます。

 上の方に来ている物はまさに青龍刀と言える形状が多いですね。


 ですが、曲刀や弯刀の総称でもあるので、ショーテルとかタルワールとか、中国系統以外の剣もヒットしてきています。


 総称的な言い方であり、中国の武器に多い装飾が豪華な柄の作りなどもあり、ものすごい種類があります。


 マチェットのようなシンプルな形状の物から、刃をのこぎりのようにギザギザにしたものや、刀背部分に穴をあけて、金属の輪や紐を通すなどの装飾をしたものまで存在しています。


 全長1メートル、重さ700グラムからあります。

 あれ? ちょっと短いし、重さも以外と軽い?

 映画とかだと、もうちょっと長くて、重さも2~3キログラムはありそうに見えます。


 そういった大型の物もあったのかもしれませんが、呉鉤が活躍していたのは、中国でも南方になります。

 この地域は山岳や湖や河川が多くありました。


 山岳の中では植物も多く、岩や倒木がゴロゴロしている足場の悪さなどもあり、見通しも悪く障害物の多さから飛び道具や長い武器を扱うには不向きな環境です。


 こういった所での戦いでは接近戦が主になりますし、枝やつたを切り裂きながら進むため呉鉤が1本あれば行動でも戦闘でもこなす事ができます。


 また水の上でも敵の船に飛び乗って戦う時、もしくは敵に乗り込まれたときには、船上という足場も悪く狭い場所で振り回せる剣が求められます。


 曲刀という踏ん張りがきかない場所でも強い斬撃が出せる事、片手でも扱えること、周りの物に当たりにくい短めな形状、呉鉤には船上で求められる要素を全て満たしています。


 片手剣なので、あまり長いと使いにくいですし、曲刀であるため比較的軽量でも威力が出せたんです。

 長さと重量も納得できますね。


 長くて、重い、肉厚というイメージは映画などの表現による物だったかもしれません。

 青龍刀が呉鉤の一種であることは間違いないのですが、イメージ優先になっているのが現実のようです。


 でも、切った時の威力に関してはイメージ通りなので、ご安心下さい。




~ちょっとルーツを考えてみる~

 まず気になったのは「鉤」という文字です。


 この文字が意味していた武器は、護手鉤や鈎鑲【もしくは鉤鑲】といった防御にも使う事ができる物で、元を辿っていくとフック状のパーツが取り付けられた盾に行き着きます。


 青龍刀を思わせる、ぶった切る気満々の形状にも関わらず『源流が盾!?』と思っていましたが、どうやら違う意味があるようです。


 呉国の王が反りのある形の刀を作るように命じて、出来上がった物が鋭利で高い切れ味を誇った事が歴史に残り「呉」の字があったこと。


 こういった曲刀は青銅器の時代から作られていましたが、金属の刀として流行するのは6世紀頃からの事で唐の時代の文化人が呉の曲刀ということで「呉鉤」と呼ぶようになったそうです。


 この頃には鉤は護手鉤などの盾の形状から脱して、武器の形になっていたためニュアンスも変わってきていたんですね。

 フック状の曲がった部分の事を指して曲刀にの名に当てたなどいくつか理由が考えられます。


 中国の王朝など、歴史を題材にした映画や作品に出てくる剣の多くは直刀やまっすぐな刀身を持つ細身の剣です。

 呉鉤はこういうところには登場することは少ない印象があります。


 呉鉤と呼ばれるような曲刀は中国では南方の方で使われていました。

 蛮族の刀などと曲刀が呼ばれることもあるのも、使われている地域が限定されていたことが影響していたのかもしれません。


 中国の南方で暮らす民族には、その民族ごと固有の曲刀を使っていました。


 中国が勢力を拡大して、こういった民族を取り込んで行ったときにも、その曲刀達はその風土、環境にあった武器として実戦に採用されて取り入れられていったとうわけです。


 こういった歴史があるため、片刃の曲刀は民族ごとの違い、その風土による違いなど様々な種類がある状態のまま唐の時代に取り込まれるようになりました。


 唐から時代が変わっても、兵士達の装備の中には呉鉤がとりこまれており、民間の使用も可能だったためより広く広まっていきました。


 民族ごとの違いがあるまま、時代に取り込まれ、さらに軍に民間に広がっていった。

 そりゃあ、中国の武器に関して、細かい分類が出来ないという話も納得です。


 日用品としても優秀な刃物でありながら、山の中でも水の上でも戦える、便利な曲刀の総称が呉鉤です。

戦う場所を選ばない!


 ゴツイ見た目のくせに「かゆい所に手が届く」ような便利な呉鉤。

 一家に一本いかがでしょうか?


中国系統は漢字に泣く、変換できないんじゃ!

次から「布」系統に着手します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 中国系統の武器、漢字が特殊なんでしょうね。 部首引きで、やたら字画数の多い字を探さないと駄目かもしれませんね。 それにしても、いろいろあるんですね。
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