第56回 リリア かわいい名前と裏腹に
リリア
古代ローマで敵の侵入を防ぐために使われていたとされるトラップ。
カエサルの書いたガリア戦記という本に登場しているらしいのですが、これはまだ読んでいないので、今度買って読んでみたいと思います。
あんまりにも歴史が複雑に入り組んでくるとピーターの脳みそでは処理し切れなくなってしまうのですが……
リリアは簡単にいうと「落とし穴」の一種です。見た目がユリに似ていたようで、ラテン語のユリを意味するリリアという名前が付けられていました。
ユリ根を掘り出すときの穴の形状と球根の様子かもしれません、すり鉢状の穴の根元にユリ根から伸びる茎が見えるのでそれっぽいなぁという印象があります。
深さ1メートル程度の穴を掘り、そこに男性の太ももサイズの太い丸太の先端を削って、削りたて鉛筆のように鋭くした物を埋め込んであります。
この丸太は丁寧にも先端を焼いてありますので、水分が飛んで固く仕上がっています。
丸太の太さは男性の太ももと言われていますが、古代ローマの人の体格ってどうったんでしょうか?
日本人よりも大きい? ってそりぁ、当たり前か。
特にコロッセウムで戦っていた戦士達はムッキムキな筋肉質というイメージが大きいですが、実はぽっちゃりタイプが多かったとされています。
多少切られても致命傷になりにくいというのが、理由の1つだったそうです。
実は、お相撲さんサイズ?
そんな人が一般的だとしたらとても大きな丸太だったかもしれません。
普通に先端がとがった丸太が並んでいても「防壁かな?」と思うくらいで、それを踏みつけるような事にはなりません。
落とし穴の底に仕込んであるからこそ踏みつけてしまいます。
小枝や芝を敷き詰めて、そこに落とし穴があるようには見えないようにしていました。
実物探そうと思ってもゲームのキャラクターしかヒットしてきませんでした。
でも、罠使いとかがヒットしてきたので『リリアが元ネタ?』とか連想してしまいました。
◇
階段でつまづいた経験は誰でもあるかと思います。
あと一段あると思って『ズダン!』と床を踏みつけてしまうといった経験、その強烈な一歩の真下に釘が天に向かって突き出していたとしたらどうでしょう?
靴でもなんでも貫いて、雄たけびを上げるほどの痛みが襲ってくるでしょう。
リリアは約1メートルの穴に底から天に向かう太い尖った丸太です。
例え重装備でプレートアーマーのようなガッチガチの装備でも、落下のエネルギーと丈夫で尖った丸太が組み合わさっていれば貫く事ができたかもしれません。
男性の太ももサイズの丸太は日本人の細身の男性サイズだったとしても、刺されたら十分に致命傷です。
例え、急所を外したとしても、それだけの手傷を追っていたら1メートル程度の深さの穴も這い上がる事は難しいでしょう。
重要拠点の周りに設置しておいて、自分の軍の兵士達に『あの辺はリリアがあるから、近づくな』としっかり教えておけば、自分達が引っかかる事はなく運用できます。
統制をとる運営の力が必須ですね。
まとめて設置しておくと敵軍のお偉方が……
『あそこがガラ空きだ! 突撃!!』
と突っ込んできて勝手に壊滅してくれるので、最初の設置さえしっかりしておけば、継続的に防衛をすることができます。
この手のトラップは個人が運営していると、自分が引っかかってしまう事が多かったのですが、そこはさすがのローマ軍、徹底した教育で味方の兵士達がかかる事はありません。
むしろリリアゾーンを誘き寄せたり、追い込んだりしていそうに思うほどです。
リリアは大型トラップですが、例えこれが30センチ程度の深さの穴と10センチ程度の長さの釘でも相手が金属の靴でも履いていない限りは十分なダメージを与えられます。
極端な話、斜めに切った竹、太くて長い釘を天に向けて固定、そんな物を軽く掘った溝に並べて置いて、落ち葉や雑草で溝を隠しておけば、それを知らずに突っ込んできた奴らを一網打尽にできます。
世界中でこうした落とし穴系統のテクニックは沢山みられますが、リリアが使われていたのは紀元前1世紀とされています。
なんとリリアの登場は今から、2000年を越える遥か昔になります。
古代ローマには色々な軍事技術があった事がトラップ1つからでも推察できますね。
落ちろぉぉ!!
カワイイ名前がついたアイテムって、結構エグイのが多いような気がする。




