第45回 鉄甲鈎(てっこうかぎ) 忍び道具の1つ
鉄甲鈎・手甲鈎
いくつか言い方はあるけれども、忍者の扱っていた道具の1つ。
一番定番なのは、4本の先端が鋭くとがった鈎爪を持ち手になる鉄の輪につけている形。
鉄の輪と棒の部分には紐などが付けられていて、鉄の輪に手を入れて紐を腕に結びつける事で固定します。
手の甲につけることで、腕から爪が生えているような姿が装備している状態です。
何種類か他のパターンもありまして、手に握り込めるような棒状の金具に鈎爪が取り付けられていて、棒状の部分を握ると、指と指の間から鈎爪が出る状態になる物もあります。
手の甲につけるタイプではなく握り込むタイプです。
インドの握り武器、虎の爪の名を持つハグ・ナウに近い形状ですね。
手に付ける物、握る物とくれば後は指先ですね。
猫手と言われる小さい物も存在しています。指サックのような物、指輪につけ爪が付いた物など形状の違いはあれど、指先に猫の爪のような小さな鈎爪を取り付ける事は同じです。
攻撃方法は引っかく事のみ、治りにくい傷を与えたり、毒と一緒に使う事もある暗器でした。
猫手は鉄甲鈎と言われる事はあまりありませんでした。分類として後々に近い物として扱われたり、忍び道具の仲間として括られたりしたようです。
手甲鈎と言われるのは腕につけるタイプと握るタイプの2種類です。
それでは、意外とコアなファンが多い、忍びの武器の解説。
いってみましょう!
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使い方ですが、猫手タイプは引っかく事に限定です。比較的小さいので、こっそり持ち込むことに向いています。
そっと指先につけておいて、相手の手足を掴んだり、猫が獲物に爪を立てるようにひっかいて攻撃をします。
痛みを与える事で相手を怯ませたり、あらかじめ塗っておいた毒で激痛や体調不良を引き起こします。
握るタイプの物は、拳から金属の爪を生やした形になりますので、そのまま殴りつけるようにして相手に斬撃を与えます。
相手からしてみればいくつもナイフを持っているように見えますね、近づきたくないですね。
猫手ほどではありませんが、比較的小さいので、こっそり持ち込む事も比較的容易だったかと思います。
腕を振って切り付ければ、短い幅で似たような傷がつけられるので、治療しにくい傷を与えることができます。
そして、腕につけるタイプのこれぞ鉄甲鈎という形状の武器の場合ですが、これを扱うための専用の技術があったとされる説まであるほど、使い方が複雑です。
まず、道具としては爪先を引っかける事で、木や壁を登ったり、屋根につかまったりすることができます。
もしかしたら土壁くらいだったら、ヤモリなど爬虫類のように登っていくことができたかもしれません。
武器としての使い方、相手を殴るようにして、爪の先端を突きこむ攻撃。腕を振るようにしてひっかいて攻撃する。
この二つがメインです。
パンチをする要領での攻撃に加えて、腕を振るという動きの攻撃ができます。素手に比べて選択肢が多いですね。
片手にだけ鉄甲鈎を装備しているなら、もう一方の腕で飛び道具や短刀を構えて、相手をけん制したり離れたら投げつけたりする攻撃もできます。
防御面でも、丈夫な鉄の爪ですから相手の武器を払うようにして受け流したり、手の甲部分で受け止めたりすることができます。
もう少し、難易度が高い事を狙えば、爪の間で相手の武器を絡めとることができます。
また、鉄甲鈎は手の動きをあまり邪魔しないので、装備したままでも相手を掴んだりする事ができます。
接近戦でも相手を投げたりしてバランスを崩させて、爪で止めを刺すという事もできます。
忍びの体術の動きと合わせれば、攻撃する手段としてはどれも相性が良いと言えますね。
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こうした鈎爪状の武器でつけられた傷口は、複雑な形に裂けるように切れたり、肉を引きちぎるような傷になったりするため治りが遅い物でした。
少し面白いという点は、これらの武器が登場して活躍していたのは江戸時代という説があります。
アイデア自体は戦国時代からあったらしいのですが、もしかしたら見世物などのパフォーマンスや、盗賊が使う特殊なアイテムとして、鉄甲鈎があったのかもしれませんね。
握らずとも手に付けられる数少ない武器の一つなので、特殊な事情がある人物こそ、選択肢に入るアイテムと言えます。
忍法!
爪部分だけで20~30㎝とされているようです。
重さも200グラムくらいと軽めに作られていたようです。