第42回 竹槍(たけやり) 丈夫で安くて使いやすい
有名だけれども登場する作品はとっても少ない。
竹槍
竹を槍に加工するという事は日本でも中国でも使われていました。
特に日本では竹槍のみならず、竹を使うということが本当にあちこちで見られます。
以前に購入したカーペットではくるくる巻くための心棒として竹が使われていましたし、物干し竿では竹製の物もあります。
戦国時代でも、竹を束ねた物を立てかけておいて防護柵にしたり、対火縄銃のためにも竹が使われていました。
竹の束に打ち込まれた弾は竹に遮られるばかりか、その丸みによって弾かれるようになり威力は大きく下がります。
素材としても竹は優秀です。
丈夫さと柔軟さを兼ね備える素材であり、成長も早いため、長い竹でも短い竹でも安く大量、しかも確実に入手することができます。
タケノコも獲れるので、食料確保にもなるばかりか、竹の皮や葉には抗菌効果もありますので食料などの運搬や保存にも良い効果があります。
こんな万能素材を武器に活用したのが竹槍です。
実は使われていたのはつい最近まで、戦時中の日本では小学生も竹槍を持って槍の使い方の練習をしているという風景もあったほど。
植物の竹を使っていることもあり、せいぜい2~3㎏と軽量なため、男性女性を問わず使える武器とも言えます。
まぁ、竹刀という王道の竹の武器が現代もあるんですが、今日は竹槍です。
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作り方、竹を用意して、斜めにカットして出来上がり。
なんて思っている方が多いですが、違います。
2つパターンがあり、槍の穂先となる木の葉状の刃を竹の先端に取り付けたタイプ、そして竹本体を加工したタイプです。
竹本体を使っている物の方が竹槍らしいイメージですね。
改めて作り方ですが、竹本体を使う場合、竹は肉厚な物を用意します。竹は天に向いている穂先の部分、地面に近い根元の部分があります。
竹槍の刃にする場合この根元側をカットして刃を作ります。刃の部分は直径5㎝程度、握りとなる部分は直径3㎝前後がよいとされているようです。
パイプハンガーに使われているスチールのパイプが大体直径3㎝くらいですから、握りやすい太さと言えます。
そして、刃の部分は直径5㎝、缶ビールが直径6㎝くらいですから、実際見てみると結構太く作られています。
刃の部分は斜めに切り落とすだけではなく、さらに削って先端をとがらせて行きます。
場合によっては金属の穂先と同様な形に仕上げます。
このままでは乾燥で先端が割れたり、使う間に潰れて丸まってしまいますので、先端部分に油を染み込ませて、火であぶります。
これを繰り返していくと竹の繊維の間に油が入り、余計な水分は蒸発、竹の繊維も固く締まっていきますので先端は潰れにくく仕上がります。
こうして加工された先端は以外と丈夫です。
しっかり仕上げてあれば、缶ジュース程度の強度なら貫く事は難しくありません。
竹が太く重量もある程度あるため、人体であれば深く刺さる事は容易に想像できます。
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使い方は通常の槍と同じく突いて使います。
竹なので、本体がしなります。このしなりがある事で先端が少しぶれながら伸びるような突きになります。
刺さった時にはしなった分が伸びようとするので、思ったより深く刺さる事でしょう。
直線で早いのも受けにくいですが、先端がぶれるという事は弾きにくいという事にもなりますね。
竹槍は一揆などの農民の蜂起、博徒など荒くれもの達の抗争などにも使われていました。
竹林から手ごろな竹を切り出してきて、夜なべすれば作れるので、即席としては十分な性能があったために使われていたのでしょう。
こういった暴徒だけでなく、ちゃんと戦でも使われていました。
階級の低い兵士達を十分に武装させる事が難しいという事は珍しいことではありません。
たとえ沢山の兵士を集めても全員に武器防具を届けるためには莫大な資金が必要になります。
素手よりマシだろ?
といった理由で使っていた事もあります。
世知辛いですねぇ……
まぁ、記録に残っているような大合戦ではなく、小競り合いレベルなら竹槍で十分だったかもしれませんね。
竹槍に限らず、槍は先端を切り落とされてしまうと、大きく攻撃力が下がる欠点があります。
とはいっても、竹槍は太い竹の棒で竹刀と違って節も抜いていません。
しなりもある丈夫な竹の棒で打ち据えることができます。
太い竹で刺される、刺されなくても丈夫な竹の棒の殴打がある。
どっちも、いてぇ、いてぇ。
ひどい使い方だと、糞便などを先に塗り付けておいて、傷口の化膿や感染症をねらう事もできます。先端にそのような仕込みがされていれば戦いたくなくなるので、戦意も下がりますね。
いやぁ、ひでぇ、ひでぇ。
えい! えい! おー!
弱そうに見えるけど、刺されたら冗談抜きで死んでしまいます。