第40回 双手剣 中国式両手剣
双手剣
これは双剣のように2刀流で使う剣ではなく、両手持ちの大剣になります。
片手剣を2本使う「双剣」ではなく、2つの手で1本の剣を持ちますがこれを「両手」ではなく「双手」と書きます。
長さは柄まで含めて、100~150㎝くらい。
重さについては最近の物は1㎏程度になっているようですが、当時に実際に使われていた物は1.5~2㎏くらいはあったかと思います。
長めの日本刀くらいのサイズになりますね。
形状は反りのない両刃で、まっすぐな刀身をもっています。とてもシンプルな形状といえます。
柄の部分は両手で持つため、片手剣より長くなっています。
直刀をそのまま拡大したかのような見た目ですね。
インターネットで検索すると、演武の動画などもヒットします。
現在の双手剣はペラペラな印象がありますが、演武用なので刃もついておらず、先端も丸くなっています。
実戦であればぺラリとした作りではなく、しなりが発生するような作りになっていたでしょう。
西洋の両手剣とは違い、重さで叩き切るのではなく、振って切るという使い方になります。
ドイツの両手剣、トゥヴァイハンダーもしくはツヴァイハンダーと言われる剣は長さが200㎝を超え、重量も重い物では10㎏近くありました。
これと比べると、短く軽いため突き技や振り上げる動き、さらには素早い扱いからの連撃など、中国らしい扱いができるようになっています。
購入したい方、ネット通販で売っていますので「双手剣 購入」とかで検索してみましょう。
2万円~3万円くらいで購入できます。演武で使う物がほとんどですが、一部は観賞用がありますので、よく確認してからポチって下さい。
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剣と刀の違いについてですが、単純に言うと片刃の物が「刀」となり、両刃の物が「剣」となります。
日本刀は片刃なので「刀」ですね、刃が付いていない面での殴打ができます。『安心せい、みねうちじゃ』ってセリフが成立します。
いやあの、金属棒で殴りつけといて『安心せい』は成立しない気がしますが……
西洋に関しては剣は重く作られており、叩き切るように使われている物が存在しています。
片手剣でも両刃の物が多くありますね。
片刃に関してはサーベルなど軽量な物が多く存在しています。
日本に関しては片刃の刀一択と言える程ですよね。
中国に関しては青龍刀など、片刃の刀が重量が大きく、両刃剣が軽量に作られております。
これについては、もう少し資料を集めてから細かく考察したいと考えていますが、重い両刃が西洋、軽い両刃が中国。そして、軽い片刃が西洋、重い片刃が中国という傾向になっております。
演武を見てみれば分かりますが、双手剣は切る剣です。振り上げる、振り下ろす、払うなど太刀のような扱い方になります。
敵の攻撃を受け流しながら、相手のスキを見つけてこちらの斬撃を通すような演武になっています。
突き刺しという攻撃はあまりありません、しなりがある剣だとすると直刀の割りには突き攻撃が苦手だったのかもしれません。
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大物の剣、振る系統の攻撃がメイン。
資料が足りないのは事実なんですが、どこで使われていた剣でしょうか。
戦場では槍などの長物に対しては剣は効果が薄くなってしまいますね。
逆に室内では短刀とされる系統の物が威力を発揮します。振って使う双手剣では壁や柱、家具が邪魔になるため存分に効果を発揮する事ができません。
実戦で使われた記録を調べてみたのですが、信憑性が高い物が見つけられません。
そもそも中国では薙刀のような形状の長物武器が多数存在しています。
柄の部分を木製にすれば刃に使う金属を少なくする事が出来る上に間合いも広くなりますので、双手剣よりも資材を節約して効果的な武器にすることができてしまいます。
どうやら一度、双手剣は存在が途絶えてしまい、後の世に復興させたのが現在の演武につながっているようです。
過去、斬馬剣という武器があり、それは馬の脚を切ることで騎兵を攻略するための長剣でした。
これは二郎刀という振って使う槍のような長物の武器に進化していきましたが、この原型が両刃の長剣だったため、それが双手剣のような形状をしていたと考えられます。
つまり実戦では、馬の足を切りつける事で騎兵の攻略をすることや、弓兵があまりにも接近されてしまった敵兵に対しての近接武器として使われていたと考えると納得がいきます。
弓兵は騎兵に突撃されてしまえば惨殺される運命にありますが、この双手剣を持った人がいれば、騎兵にも何とか抵抗することができるでしょう。
ただ、何とか抵抗できると言っても、切り付けた馬の体が倒れてくる、落馬する兵士の下敷きになる、そもそも騎兵の攻撃にさらされるなど、死に至る危険性は多数あります。
双手剣は決死の覚悟を持った兵士が扱う武器として存在していたと考えて良いと思います。
トゥヴァイハンダーも陣形の中では最前列で騎兵対策の槍兵のなかに飛び込んで戦うために作られたと言われています。
両手剣の使い手は常に死と隣り合わせの戦いを強いられています。双手剣となんとも残酷な共通点があったものです。
両手で持つという時点で守りを捨てた剣、双手剣は己の守る者のため、己の保身を考えない、決死の刃といえるでしょう。
命を燃やせ!
両手剣の使い手は「後退」という行動と「保身」という概念を投げ捨てたのだと思う。
リクエストありがとうございます。
中国武器ってのは本当に奥が深い。