第39回 金棒 豆で退治される鬼が持つ
金棒、金砕棒、鉄棒
色々な呼び方がありますが、日本昔話で鬼が持つとされている武器。
野球で使われるバットを長く大きくして、鉄製にする。柄の部分には丸い穴が空けられているデザインで、相手を殴り飛ばす部分には鉄製の鋲が付けられてトゲトゲになっている事が多いですね。
今回は金棒として進めて行きます。
鬼の身長が約2メートルと仮定して、その身長くらいの長さの金棒があったとします。
材料は全て鉄、金属を溶かして型に入れるという鋳物と考えれば製造は確かにできます。
ですが、そんなに大きい鉄の塊はどれほどの重量になったでしょう?
想像でしかありませんが、全て鉄製だとしたら何キロじゃありません。
何トン単位の重量があるでしょう。これをブンブンと振り回す鬼!
何という筋力! 何という剛腕!
平然と振り回すためには体重も必要になるので、金棒の重さと丈夫さも加わって、岩でも壁でも簡単に打ち砕いたでしょう。
はい、それはフィクションです。
違うよー、人間はそんなの振り回せないよー。
実際の金棒は芯は木で作られていて、その周りを鉄板で補強して作られていました。
木は鉄板を張りやすいように六角や八角に加工されていました。
金棒が実際に作られて使われていたのは日本で、鎌倉時代~室町時代に使われており、源平合戦の頃からの文献に時々記述が見られるようにます。
武人が己の腕力や威光を誇るようになると流行して使われるようになりました。
かの有名な弁慶が持っていた道具の1つにも金棒があったとされているそうです。
金棒の長さは200㎝~360㎝、重量は3㎏~5㎏ほどと、色々な長さの物があり、長ければ長いだけ重くなっていました。
打撃武器としては結構な大きさですので、これをブンブンと振り回していれば威圧感はすごい物になります。
勢いをつけて振り下ろせば威力は十分、木の板程度なら簡単に粉砕できたことでしょう。
もちろん、全てが鉄製の物も少数ですが存在しています。
間合いが狭く、短いくせに重いので、動きが遅くなってしまうため、戦場には向きません。
杭を打つときのハンマーや、建物の取り壊しには使えたかもしれませんね。
なんて思いましたが、野球バットサイズでも100㎏にせまる重量があることがわかりました。
中身まで全部鉄だとしたら、人間では扱えません。中身を空洞にしたり、小さくても木の上に鉄板をはったりと軽量化の取り組みがされていたようです。
◇
文献や記録に金棒は登場していますが、実際に使われているシーンが描かれている事は少ないです。
この時代の戦いには集団戦法という物があまりありませんでした。つまり、個人戦というような扱いが多かったということです。
薙刀やスネの別名の泣き所で有名な弁慶ですが、薙刀以外にも様々な武器を使うことができました。
その中にも、金棒があったとされています。
弁慶は個人の強さでは無類とされ、現代まで語り継がれています。金棒が使われていた時代とも重なっていますね。
個人が重視されているとすれば、姑息な手で勝つよりも、豪快で力強く相手を叩きつぶすように勝った方が自身の武功がより大きく評価されそうです。
その点であればこの金棒は大きさといい、鉄で作られている重厚感といい、持っている姿も絵になります。
豪快に名乗りをあげて、金棒を振り回して見せる。
向かってきた相手を横なぎにぶっ叩いて吹っ飛ばす。ブンブンと振り回しながら、ゆっくりと他の相手に向かって行って、剣も槍も金棒で弾き飛ばす。
そんな姿をみれば、鬼が出たと言われて、農民あがりの訓練が足りない兵士たちは逃げ出していくでしょう。
戦場に集団戦法や軍としての連携が求められて、組織だって運営されるようになると、個人個人の力に重きを置く事は少なくなりました。
振り回して使う金棒はこうした組織的な集団での運用では、味方にあたる危険や、振り回すための場所の確保が難しいといった理由のため、使う人が減ってしまい段々と廃れてしまいました。
打撃武器の代表格とも言える西洋のメイスは、一度廃れた後にプレートメイルの対策として再度日の目をみるようになりました。
ですが、この金棒は戦場に再度登場する事がなく、伝承やおとぎ話の武器として語られるようになりました。
戦場で決死の形相でこの金棒を自在に振り回す姿は鬼にも見えた事でしょうから、語り継がれるのも納得です。
鬼に金棒!
鬼わー外!!
これを書いてた時は節分です。
日本昔話の王道とも言える鬼の武器ですね。
○○入道って言われるような僧兵が持っていたりするシーンもあったり、なかったり。