第38回 デブテシュ 海に囲まれた島の武器
デブテシュ
木の棒とサメの歯で作られた武器、長さも様々。分類は刀剣とされることが多いらしい。
オセアニア、キリバス諸島で使われているが、使われ始めた年代は不明。
キリバスが発見されたのは18世紀なので、それ以前の事が分かっていないんです。
木の棒にサメの歯を並べるように取り付けた武器。釘バットの釘をカッターに変えたようなイメージを持ったのは私だけかもしれません。
みるからに怖っわ~い。
長さは30㎝程度の物から100㎝を超える物まであり、重量も長い物で1㎏程度。
1本の棒状だけでなく、枝分かれした物なども存在しており形状は様々です。
素材としては高級な物ではないが、見た目のインパクトは強力。
致命傷を与えるというよりも『これで叩かれたくない』と思わせる威圧の効果も高そうです。
木の棒にサメの歯がびっしりついているものですから、戦意も喪失しますよね。
だって、すっごい鋭いおろし金で叩かれる上に皮膚や肉を削り取られるような攻撃ですよ、怖い怖い。
さて、今回は恐怖のおろし金、デブテシュを見ていきましょう!
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世界のあちこちに存在する武器に使われる素材は、木や金属などが主になりますが、時代や地域によっては石や骨などが使われています。
素材を加工する技術の進歩によっても武器は様々に姿を変えています。
世界には手に入る素材に制限がある地域もあります。
事実、日本も硝石を採掘などによって手に入れる事が難しかったため、火薬の進歩が遅れていたとされていますね。
西部劇でバキュンバキュン撃ちまくっているピストルも、豊富な火薬の原料があったからこそです。
今回のデブテシュは手に入る素材に強い制限がある地域の武器です。
それは海に浮かぶ島国であり、島という場所の都合上、大地から手に入る素材に頼っていてはあっという間に資源が枯渇する状況にあります。
そして、仮に鉄などがあったとしても、それを精製するための燃料も足りません。
木材とサメの歯を素材として選んだ理由もここにありますが、性能を考えると納得の理由です。
サメの歯は鋭く十分な切れ味を発揮しますが、1つ1つが小さく単体で武器にするには向きません。
木材も軽い物であれば素早く扱えますが、重さが無いと棍棒としての威力は期待できません。
ですが、サメの歯と木材、この二つを組み合わせれば、打撃ではなく、斬撃に近い削り取るという使い方ができるデブテシュが出来上がります。
軽いという事がデブテシュの特徴とも言えるので、これも珍しいポイントの1つだと思います。
武器にはある程度の重さが威力のために必要になり、メイスなどの打撃武器ではその重さこそが破壊力に直結するからですね。
相手の命を奪うような性質があるかと言われると、その性質は弱いですね。
どちらかと言うと傷をつけるような効果が高い武器といえます。
傷つけるだけならより早く使えるように、軽い方が都合がいいですね。
かなり深く考察して作られていることが分かります。
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単純にデブテシュを見ると……
奇妙な武器とか、苦肉の策で作られたとか思われるかもしれません。
これは全ての方向を広大な海に囲まれ、島国として独特な文化や風土が培われて来た環境の中では、このような武器が登場してきた事は自然な事といえます。
世界のどこでも金属が手に入ると思ったら大きな間違いですし、島という環境ではその島を構成する物によっては石すら満足に手に入らない可能性すらあります。
素材が制限される中でも武器としての見た目の威圧感、軽さと威力の両立を成立させているデブテシュ。
キリバス諸島などの島国地域以外ではサメの歯という素材も手に入りにくいため、作る事が難しい特殊な武器です。
ぜったい痛い!
武器ってのは見た目で「やられたくない!」って思わせる事で相手の戦意を削ぐ効果もありますからね、見た目ってのも大事なんです。
剣を首に当てられる事も怖いけど、新品のおろし金を肌にくっ付けられるのも怖い。
「これを引かれたくなければ、言う事を聞け!」
あの、すみません、剣ですか? おろし金ですか?
「どっちもだ!」
はヒィ!