第37回 ドス 脛に傷ある任侠の武器
ドス・匕首・合口
鍔が無く、木の柄と鞘を持つ。30㎝程度の直刀。日本刀でいう鍔の部分が無いため納刀してある状態では1本の棒のようになる。
任侠映画などでドスと呼ばれており、丁半博打でサイコロを振っている人が腰に差していたり、抗争のシーンとかで持ってたり、抜かれたりしている。
柄も鞘も白木で作られているイメージが強いですね。
今回は「ドス」という言い方で進めて行きます。
中国で匕首という名前の武器があるが、これはまた別の武器なので、混同しないように注意が必要です。
ちなみに匕首の場合はカテゴリーは暗器になります。
ひらがな「あいくち」から変換で匕首になるけれど、私のパソコンだと「ひしゅ」からでは変換できません、なおの事混乱しそうです。
刃の作りは日本刀と同じ片刃です。
合口という名前の由来は、納刀の状態がピッタリ納まる所から。鞘の入れ「口」に刀身が「合」う、「口に合う」から合口と言われるようになりました。
30㎝くらいの物はドス、これを超えてくる長い物は長ドスと呼ぶこともあるようですが、実物は見たことないですね。
よく思い出しても、ドスそのものの実物もみたことないなぁ。
1メートルを超える長いドスもあるとされていますが、そこまで行くと「日本刀」ですよね。
ちなみに、刀身の長い短いに関わらず現行の銃刀法では『刀剣類』に分類されるため、所持に規制がかかる物になります。
うかつに持っていると速攻で違法になりますから、要注意です。
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どこで買えるんですか?
という質問が来そうですが、昔からアンダーグラウンドなアイテムとなっているようで、簡単には購入できません。
刀剣を作る人がこっそり作って流していたとか、海外から持ち込まれた物だとか、色々とあるようです。ほんと、どこで実物買うんですか?
任侠映画では、このドスを使って指を落とすようなシーンや、柄を持って「ワシにお前を切らせるな」といいながら詰め寄ったりするシーンなど、色々と描かれております。
この武器の本来の使い方は「突き」です。
切りつけたり、指のような骨などの固い部分がある所を狙って、断ち切るような使い方はしません。
パッと見て、突きには向かないように見えますが、その理由は鍔にあります。
刀剣類で「突き」攻撃するために必須とも言える部分が鍔なのですが、ドスの場合この鍔がありません。
鍔には様々な役割があり、刀剣全体のバランス調整、鍔迫り合いなどの近接時や手指狙いの攻撃から手を守るなどがあります。
相手の体に武器が刺さる時には抵抗が生じます。
このときに手の位置がずれてしまいますが、刀身の方に手がずれてしまうと自分の手がざっくり切れてしまいますね。
この手の位置のずれを止めてくれるのが鍔の役割の1つです。
日本刀であれば、握りの部分に紐が編み込むように巻かれており、これも滑り止めになりますが、ドスにはそんなものはありません。
ドスの場合、柄元に小指をかけたり、柄本を自分の体に押し付けた状態で体当たりするように使います。
こうする事で、手の位置をずらさずに刀身に体重という重さをかけて突きの威力を高めます。
包丁程度の刃渡りでも、根元まで刺されてしまうと致命傷ですが、実は刺されただけでは死亡率はそんなに高くありません。
致命傷を与えるためには、刃の部分を下ではなく上に向けた状態で刺します。
そして、刺さったあとは右手を内側にねじり、傷口を広げながら内臓を切りつける事で確実に致命傷を与えます。
刃を上に向ける理由について、明確には書かれていない事が多いのですが、刺さる場所は腹部になる事が多いため、そこから下よりも上に致命傷になりやすい内臓が多い事が理由の1つにあげられます。
指を詰める理由もこのドスの使い方に由来するものがあります。
右手は多くの人が利き手としています、ドスは柄本に小指をかけて使う武器ですし、ねじる際にも小指の力は重要です。
ドスに限らず物を握る、つまり武器を握るために小指は重要な働きをしています。
この小指を落とさせることで、武器を握れなくさせて「もうお前は戦えない」とする事が、指を詰めさせる意味の1つになっています。
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このドスが重宝された理由は、刀身が木の柄にピッタリと納まり、全長が30㎝程度のため、袖に隠したり、持ち運びがしやすかった事。
腰に差した状態でも座るときに邪魔にならないなどが挙げられます。
昔の賭博を開催する博徒は、あちこち旅をしながら行く先々で場所を借りて賭博場を開いていたため、博徒には移動のしやすさも求められていました。
賭博にトラブルは付き物です。
移動の際にも護身のための武器は必要だったでしょうから、持ち運びやすくて使いやすい武器に短刀やこのドスが選ばれていったのでしょう。
今の日本で、護身用だったとしてもここまでの武器は必要ありませんし、暴対法の取り締まりで関係者と誤解されてしまうかもしれません。
ドスが欲しいからと言って、鍛冶屋さんに頼んではいけませんよ。作る人まで巻き込んでしまいます。
やめろ、やめ、ぐはぁ!
ってシーンもあるけど、刺されたりした時って叫べないって。
「え?」って状況は把握しようとするから、話せなくなると思う。
叫ぶときは、そこそこに痛い時だけど、切られたり刺された時は最初は痛くない。




