第33回 ソード・シールド 盾に剣をあわせて攻防一体!
ソード・シールド
その名前の通り、剣の盾いや、盾の剣です。
縦長の身長の半分くらいの盾をまずイメージしてください。
その盾を中心に「*」のように刃を生やした形状です。
色々な種類があったようで、丸い盾に一本角のように剣を付けたもの、太陽の記号「☀」のように盾の周りに剣を並べた物など色々あります。
中にはカギ爪やフックのようなものが付いた盾もありました。
持ち手部分は近代でも見る警察の盾のような形ではなく、中心に一本の縦棒があり、盾についた剣の近くには握りになる部分が設けられていました。
盾として構える時には片手で通常の盾と同じように構えます。
武器として使う時には握りの部分を両手で持ったり、握りと中心の縦棒を持って構えたりします。
身近にある物だと、中華鍋の特大サイズを持ち上げているような構え方になっている。
それか、障子の張替の時に障子の骨の真ん中当たりを持っている時みたいな感じかな。
盾と剣を一緒にしたイロモノ……
いやいや、画期的なアイテムでしたが、その分大きさや重量もすごい事になっていました。
全長は2メートルにも及び、刃の数が少ない物は6㎏程度、多い物になると10㎏を越える程です。
ファンタジーの王道のロングソードが最大でも3㎏に届かないので、どれだけ重いかが分かりますね。
この盾というか武器が使われていたのは15世紀の西ヨーロッパです。
しかも、トーナメントや決闘にもこれを持ち込んでいた記録が残っています。
トーナメントにはいくつかの形式があり、相手の騎士を馬上から叩き落した方が勝ちというルールが有名です。
日本語に訳すと「馬上槍試合」とされていますね。
いくつかの派生の中にはこれ以外のスタイルもあったとされています。
名前がトーナメントではなかったかもしれませんが、決闘スタイルや団体戦などもありました。
ここで、このソードシールドを両手で持って、敵の攻撃を防いだり、振り回して攻撃したりという戦い方で使われていたのです。
両手で使う盾もありますし、この盾を構えて前進する攻め方もあります。
暴徒の鎮圧で警察や軍隊が採用している方法にも盾が使われています。
しかし、盾を構えて前進とは結構疲れます。
空気抵抗をもろに受けますし、相手に当たったら相手の重量も加わります。
べニア板を正面に構えて「□」の状態で歩くのと、「I」のように持って歩くのでは断然「I」のほうが楽です。
これだけの大きさになると、空気を押すためにも力が必要な事が体感できます。
このソードシールドは、べニア板のように持ち方を変える事は難しかったのです。
理由は簡単、重いし「□」の状態では刃が地面などにひっかかってしまうからです。
盾の状態では防戦一方、かといって剣を相手に向けると盾があさっての方を向いてしまい、防御手段がありません。
攻防一体の形状でありながら、どっちかしかできない。
重くて、振り回しにくくて、攻撃の軌道がまるわかりになるので、すぐに廃れました。
本当にすぐに消えてしまったんです。
武器の資料などを見ていると○○世紀~○○世紀とか、××時代~××時代とか書かれていますが、このソードシールドは「15世紀」としか書かれていないのがほとんどです。
使われなくなった理由の1つに「かっこ悪い」もありそうですが……
そりゃあ、中華鍋振り回すような戦いを見るより、馬上の槍のほうがかっこいいですから。
勝ち負けも落馬というハッキリしたポイントがあるので、見る方も迫力を感じますよね。
盾だけ振り回す騎士の戦い、確かにあんまり見たくないです。
防御態勢! 攻撃態勢!
すぐに切り替えられません!
決闘では女性がこの盾を振り回しているという絵をどこかで見た記憶があります。
たとえ軽い物でも6㎏以上、持ち上げて振り下ろすならともかく、振り回すにはすごい筋力が必要になります。
たくましい。
盾というリクエストを時々頂いております。
盾を武器にする。武器に盾を付けるという発想から作られた武器は意外と沢山あります。