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第31回 ブーメラン 敵に当たったら帰ってこない、複雑な理論の飛行

ブーメラン


 投擲武器は世界中のあちこちにありますが、弧を描く軌道をとり、なおかつ手元にまで戻ってくる物となるとこのブーメランくらいです。


 世界のあちこちで使われていたと考えられていますが、木製のため後世になってから実物が出土しないため、詳細が追い切れていないともされています。


 オーストラリアの先住民アボリジニがこのブーメランを使っていたことが有名です。


 アボリジニとは不思議な民族で、独特の文化があるというだけでなく、独特の技術まで持っています。


 このブーメランの王道な形は「く」となっていますが、これには右側と左側で厚みを微妙に調整してあり、さらに重心のバランスも考えて作られています。


 この微妙にして絶妙なバランスがあることで、浮き上がる力や空気抵抗を抑えるなどの効果が発揮されます。

 そして、投げるときの回転による遠心力なども影響して『戻ってくる』という現象につながっているんです。


 どうやってアボリジニはこれほどまでの不思議で、しかも高い技術を編み出したのでしょうか?

 製法と投擲の両方に技術の開発が求められるのがブーメランです。


 アボリジニは自らの体と心に癒しを与えるため、様々な植物のエッセンスを使い、それを個人個人の体質に合わせて調合していたとも言われています。


 もう、ファンタジーの世界と通じているのではないかと思うような神秘ですよね。


 投擲武器は石などを投げるなどは別にして『ここに当たらないと効果がない』という武器が結構あります。


 矢とか槍なら、先端が相手に直角に近い角度で当たらないと刺さらない。

 投げ斧なら、刃の部分が当たらないと効果が無い。

 ボーラなら、絡みつかせるなら紐、打撃なら重石、目的によって当てかたが違う。


 となりますが、ブーメランはその効果範囲が広いんです。

 ブーメランなら「く」の上部分でも真ん中部分でも、当たればその回転力の打撃で十分なダメージになります。


 プラスチック製の軽い物もありますが、実際に手元に帰ってくるブーメランでは1㎏近い物もあります。


 1㎏近い木材が、ヒョオンヒュオンと風を切って襲ってくるわけですから、そりゃあ威力が高いでしょう。


 実際のブーメランは一発で小型~中型の動物が失神するほどですから、実はイメージよりも『ゴツイ』事が多いです。




~バトルブーメラン~


 手元に帰ってくるのがブーメラン、ではありませんよ。

 実は手元に戻ってくるタイプの方が少ないんです。


 「く」の形でバランスを取って調整されたブーメランは戻ってくる性質をもっていますが、これもまっすぐ戻ってくるわけではありません。


 大きく弧を描いて飛ぶので手元というより、自分の横や後ろ側から戻ってきます。

 戦いの場面だとしたら危なくないですか?


 自分の投げた武器が返ってくる、相手の投げた武器が飛んでくる。

 なんとおそろしい、自分で自分を攻撃しています。


 多数対多数の場合はもっと悲惨です。

 大きく弧を描いて戻ってくるという事は、味方の集団を突っ切る軌道になる事もあるでしょう。


 フレンドリーファイア、つまり味方に飛び道具を撃ち込んでしまう確率が跳ね上がります。


 戦いのために作られたブーメランは鳥の嘴や、鎌のような形状をしていて、先端部分が相手に引っかかったり、刺さったりするように作られていました。


 これらは、重さも1㎏を越える物もあり、手元に戻ってくるタイプよりも1~2回り大きく作られています。




~ブーメランの起動~

 手元に帰ってくるブーメランは狩猟用ですが、ゲームなどでは敵に当たっても手元に帰ってきています。


 すごいのになると繰り返して敵に当たりながら、最終的に手元に正面から戻ってきてますよね。

 これは雷神トールのミョルニルのような特殊能力でもないと出来ません。


 狩猟用ブーメランは獲物に当たるとそこに落ちます。

 飛ばすためにかかっていた力が獲物に衝撃として伝わるからですね。

 衝撃を受けた獲物が失神や怪我といったダメージで動けなくなるので、今夜の食事とされてしまう訳です。


 当たらなかったら、飛ばすためにかかっていた力が失われないので、飛んで戻ってきます。

 使い減りのリスクが少ない狩猟武器が、一般的なイメージのブーメランですね。


 アボリジニのブーメランには先端に突起がついている物もあり、これの軌道はさらに複雑な物にすることができます。


 宗教的な意味もあったのかもしれませんが、障害物を縫うように避けて獲物に当てる事もできたかもしれません。 




~色々ブーメラン~

 現代ではスポーツや娯楽用として様々な形状のブーメランが開発・販売されています。


 ヘリのプロペラのような3本の羽を持つもの、十字になっていて、それぞれの羽が昆布のようにうねっているものなど様々です。


 プラスチックで作られたブーメランでもちゃんと投げれば手元に戻ってきます。


 『ブーメラン手作り』と検索すれば、牛乳パックや折り紙、段ボールに木材と様々な素材で作る方法が沢山ヒットしてきます。


 このブーメランの戻ってくるという機能は地球外でも効果的なようで、無重力の状況でも成立します。


 国際宇宙ステーション内で紙製のブーメランを投げるという研究で証明されています。


 ということは、惑星サイズのブーメランに強力な回転の力をかけると太陽系を一周して返ってくるかもしれませんね。

 地球に当たれば大参事、未曾有の危機になります……

 おっとSFになるところでした。


 ブーメランが独特の軌道で飛ぶ原理は、揚力の発生・回転軸がぶれる歳差運動・高速回転による安定性のジャイロ効果、これらがある事とされています。


 宇宙空間では重力の影響が無いため、もしかしたら別の力学の理論も影響しているかもしれません。


 あれ? やっぱりSFになっていく。

ブーメラン! ブーメラン! ブーメラン!


 自分の発言が自分への指摘になっていること。

 自分がやった事が、回りまわって自分がされること。


 トレーディングカードゲームで、カード1枚を相手の手札に戻す効果にもブーメランてあったなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ブーメラン。 おや、これはまた特異なものが。 実際の狩猟用は、くの字どころか弓なり程度の反りで、持ち手の反対側に比重がかかるようになっていて、振り下ろす縦の動作で遠心力で飛んでいくとか。 …
[一言] ブーメランで懐かしくなりました。 木製のくの字ブーメランを手元に戻ってくるように投げるのが難しかったです。 風向きが重要で左の頬で風を受けるようにして、ブーメランは縦にして投げるのが良い感じ…
[一言] こんばんは。 ブーメラン、あまり戻ってこないんですね。 投げて帰って来るのなら、すごく便利な武器だと思うのですが…… 自分へのブーメランはありますね(^^;) なるべくそうならないように、…
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