第24回 スペツナズナイフ 刃が飛び出す奇襲武器
スペツナズナイフ
通常のナイフとして扱う事ができるが、柄の中に仕込まれた強力なスプリングで刀身を打ち出す事ができる。
奇襲や暗殺に特化したナイフ。
実用されているかはどうか資料が無く不明。
『スペツナズ』はソビエトの特殊部隊の名前であり、ここで使われていたとされているが、実戦配備されていたかどうか以前に開発されていたかどうかすら不明。
この『不明』という部分がロマンをくすぐってきます。
これはインターネットで検索すると、沢山画像も出てきます。
射出した刀身が相手に突き刺さるように先端は鋭く作られており、刀身の真ん中には穴が空けられており軽量化のための細工まで見て取れます。
もちろん通常のナイフとして使う事ができるため、近接での武器やサバイバルの道具としても十分に機能します。
普通のナイフかと思いきや、音もなく打ち出された刀身がターゲットの胸や首などに突き刺さる。
呆然としているターゲットの目には、柄だけが残ったナイフをこちらに向けて、ニヤリと笑う暗殺者の姿が見える。
などとかっこいいシーンになるはずなのですが、まず暗殺者が姿見られた時点でダメじゃね?
こういった武器は隠されていることが最大の威力です。
この武器が色々と突っ込みどころが沢山あるという理由の最も大きい物は『有名である』という点です。
ギミックが搭載された武器というのは、相手がそれを知らないという事が最大の効果を発揮します。
不意打ちはバレたら何の意味もありません。
妙にゴツイ作りの割りに刃の部分が鋭くスマート、こんなナイフを相手が持っていたら思うでしょう『あの刃、飛んでくるんじゃない?』と、この時点で効果は半減します。
このナイフが有名になったのは1980年代のことらしいです。
なるほど、それまでに『使われていたかも』しれませんね。
さて、解説にいってみましょう!
◇
使い方について、普通のナイフのように相手を切る、突くという事にもちろん使うことができます。
スペツナズナイフには刀身の根元が円柱になっており、それを包むように持ち手がかけられています。
円柱の中の一部が空洞になっており、その中は持ち手に取りつけられた強力なスプリングが仕込まれています。
普段はこのスプリングが縮められた状態でロックされていますが、ロックを外して、持ち手に仕込まれたトリガーに触れると縮まったスプリングが一気に伸びて刀身を飛ばします。
さっと言ってしまうと『投げナイフ』と同じです。
刀身を打ち出してしまう訳ですから、残ったのは手のひらサイズの持ち手の部分だけ。
握り込んで拳の強化くらいは出来るでしょうが、丸腰と一緒です。
確実に相手に当てるという確信があるときだけしか使えなかった。一か八かの武器といえるでしょう。
相当に切羽詰まっている状況です。
それこそ、貴重な武器を手放す事になる刀身の打ち出しを実行するとは考えにくいですね。
スプリングについても、刀身が相手に致命傷を与える所まで刺さる強さを考えると、人間では装填することが出来なかったと思われます。
もちろん、ナイフをどこかに固定したり、石などに押し当てながらなら装填できますが、手が滑ってナイフを弾いてしまえば怪我の元です。
さらに、いかに強力なスプリングを使っていても、縮んだ状態で長期間置いておけば、ヘタってしまうので、十分な射出速度が得られず刀身を失うだけになってしまう可能性があります。
悲しいことに、そんな事故の可能性がある武器は実戦には向いていません。
開発には時間がかかる上に、製造コストも馬鹿になりません。
機構が多い上に奇襲要素のある武器なので量産も考えにくい。打ち出した刀身の回収は確実ではない事も含めると、メンテナンス費用も高い。
さらに得られるメリットが『意表を突く投げナイフ』という1点のみ。
打ち出すのに狙いを付ける必要があるくらいなら、ナイフを2本持っていて、1本は投げられるようにしておく方が現実的です。
見た目が武器に見えない物であれば、相手に全く警戒をさせないで不意打ちができます。
例えば、ベルトのバックルがナイフになる。軍帽の鍔の部分から小さめのナイフが出てくる。
袖口からアイスピックのような金属針が出てくる。
このように手ぶらと見せかけられる暗殺アイテムがあれば、ターゲットのすぐ近くまで行っても無警戒でしょう。
スペツナズナイフは見た目がナイフなので、相手は武器を持っている人物として、こちらを警戒してしまいます。
実用性を考えれば考えるほど、否定する要素しかありません。
ですが、スプリングによる射出は物音を小さくさせる事ができます。
暗闇で離れたターゲットを暗殺するために、極めて少数が作られたと考えると否定することはできません。
ピストルなどを持ち込めない場所でも、ナイフなら持ち込みを許可される施設もあったかもしれませんし、工具に紛れ込ませる事もできたかも。
◇
この武器を私がここまで否定的に言う理由は、先ほども述べたように『有名になった』からです。
暗器、隠し武器、忍び武器、などと言われている武器は、ばれてしまった以上はそのメリットが失われてしまいます。知られていない事が最大の武器なんです。
バレたら、バレたで、ただのナイフの先端を相手に向けて、スペツナズナイフを持っているかのように見せかけるブラフも使えますが、そこまでして使うのかという疑問が出てきます。
とても人気がある武器なので、自作している方も多く居らっしゃいます。
ギミックについても色々と考察されて、実用も考えて今日も多くの有志の方が作成に取り組んでいます。
ウクライナの博物館にはスプリングの仕掛けが仕込まれた実物があるようですが、真偽についてはわかりません。
自作などもいいですが、発射の機構や、ナイフの長さや形状の都合、銃刀法にとても接触しやすいため本当に注意しましょう。
これほど有名になる前であれば、何人か犠牲者も出ていたと考えられます。
もしかして、歴史を変えるほど成果もだしていたかもしれません。
必殺ナイフ!
本当に有志の方々が研究に研究を重ねているアイテムです。
銃としても、刃物としても、銃刀法に引っかかってくるので危険極まりない。
だからこそですよね!
リクエスト頂いた武器です。
色々と否定的に書いてしまったんですが、だからこそロマン!
かなり好きな武器です。