第182回 拐(かい) いろいろあります
拐
棒に把手を取り付けたシンプルと言えばシンプルな武器になります。
トンファーの原型になったという説もある、中国の打撃武器が拐なんですが……
どっから書いたらいいのかな、と思うほどサイズや形状が沢山あります。
しかも、資料によって呼び方が微妙に違う。
詳しく知りたい方は「拐 武器」とかで調べてみてくださいね。
拐という字には「かどわかす だましとる」という意味がありますが、この武器の扱い方を考えると結構納得できるように思います。
予期しないところから、予期しない攻撃が飛んでくるような使い方ですし、相手の武器を抑えたり絡めとったりすることが得意ですからね。
トンファーもくるくる回って打撃をしてきましたが、この拐も同じように攻撃ができます。
攻撃手段の多さは形状によっても変化するため、総合的にはトンファーの攻撃種類を越える扱い方を持っていると言っても過言ではないでしょう。
今回はそんな拐をみていきましょう!
◇◇◇
~種類と大きさ~
「T字型になっている武器を拐という」とか、「T字・L字・Y字・十字など様々ある」とか、「T字を牛角拐または羊角拐という」とか色々書いてあります。
牛角拐や羊角拐とかで調べると、なぜか焼肉店がヒットしてきました。
サイズや形状によって色んな名前の拐が存在しています。
中には鉄の刃なども組み合わせてあったり、材質も木材ではなく一部もしくは全部を金属製にしてあったりということもあるようです。
全部鉄は重すぎるから、さすがにファンタジーかなと思うんですが、木製の拐をメッキするかのように金属補強ならできなくはないか……
まぁ、それだけ色んな種類があるんですよ。
色々調べてみるとT字型の杖のような形状で、横棒部分は円柱状。一方は先が窄まっていて、反対は平らになっているといった日曜大工で使う金鎚を大きくしたようなタイプがよく出てきます。
他にもT字・L字・Y字・十字などの形状に、L字型のト字型を組み合わせたタイプも存在します。
棒と把手の太さや形状にも色んな種類があるようでして、棒の先端部分も真っ直ぐだったり、上記のように右と左の形状が違っていたり、色々あります。
長さは90センチ程度~130センチ程度とされていますが、使い手の体の大きさや好みに合わせて90センチ未満・130センチ以上の物もあったのではないかと思っているところです。
片手・両手・補助武器・二刀流どれでも使うことが出来る所がさらに複雑。
90センチ程度の短めな物は短拐と呼ぶ事もあり、片手で使う、二刀流にするなどが出来ます。
補助武器にする場合は右手にメインの武器、左手に拐となります。しっかり武術を習得している場合、片手の拐と反対は素手にして、組技や近接の打撃、蹴り技なども絡めることも可能です。
130センチ程度の大型の物は長拐と呼び、両手で使いますが、両手だとトンファーのように回転させる打撃がやりにくいので片手で使うこともあります。
棍の扱いも打撃や蹴り技を組み合わせますから、長拐も同じように攻撃が組み合わせできます。
しっかり扱い方を習得していれば、現代でもホームセンターで販売されている杖がT字型の拐として使えるようになると断言できるほどです。
いや、先が90度近いカーブしている鉄パイプも拐になりえますね、ちょっと大きめのハンマーもいける?
拐を連想させる形状を持ったものは沢山ありますね。
拐は国や軍としての単位で使われているというよりも、民間の武術として受け継がれていている面が強くあります。
使い方の種類が多すぎて習得に時間がかかること、複雑な形状のため効果的な製造などに難が出やすい事などから国や軍としては採用しにくいのかなと思う所ですね。
坑道の掘削道具から拐が生まれ、坑道内の道具であり有事の際は武器に出来た道具だったという説が有力視されています。
確かに、狭い所かつ足場が悪い中で打突をするとなると、短拐の形状は使いやすい上に持ち込みやすかっただろう推察できます。有事の際に武器化され、その技術は職人の間から発展したことでしょうから民間に受け継がれたこととも矛盾しません。
形状と歴史に触れた所で次は使い方いってみましょう。
◇◇◇
~使い方は書き切れない~
本当に色んな使い方ができます。いや、本当にすごいんですよ。
形状と大きさによっても出来る・出来ないが出てくるので、サイズや形状によっても解説の詳細が変わってきます。
そもそも片手・両手・二刀流に加えて、補助武器として使えるという持ち方の幅の広さ。
他の武器や手技・足技・組技との組み合わせまで入れたら、とんでもない事になります。
さらに拐ならではの特徴として、トンファーでも触れたように「持ち方が定められていない」ということがあります。
長拐であれば、中心付近を持って棍として扱いながら、端を持ち把手部分でピンポイントな打撃や相手の武器を絡めたりする技を追加できます。やろうと思えば首や足などに引っかけて拐だけで投げ技まで狙えます。
二刀流や片手の短拐でも予期しない打突や直線的な動きかと思ったら、回転させての不意打ちも出来ます。
もちろん基本とも言える把手部分を手に持っての打突が強力ですから、狭い場所に誘い込んで相手が武器を壁とか天井とかにぶつけた瞬間を狙ってもいいですね。懐に一気に飛び込んで、お腹サンドバックにしてやれば瞬殺です。
棒術・棍術の動きに把手部分を活用した技が追加されて、さらに体術も組み合わせができるというのが拐の使い方になります。
宋の時代に書かれた「武経総要」という書物に様々な拐が紹介されているとの記述が散見されています。
拐が武器として使われたのは明(1368年~)の時代からであり、民間伝承でもあったことを踏まえると様々な試行錯誤が入って現代に伝わっています。
その地域ごとの文化や生活の影響を色濃く受けていると思うと、様々な種類や流派ごとの違いなどが拐の形状や大きさが様々な事に繋がっているのかなと思いますね。
使い方も「うちはそういうのやってない」とか「あー、それは先代の得意な使い方だ」とか色々出てきそうですね。
複雑!
ある意味、世界で最も複雑な武器の1つなんじゃないかなと思ってみたり。
軍隊で採用されないのは、扱い方が様々過ぎて、個人個人の技量を推し量る事が難しい事も理由じゃないかなと思ってみたり。
あと把手が邪魔になって輸送しにくいとかもあるかなぁ。
木製だから、材料費は比較的安価になるところはメリットではある。




