第179回 旋風砲 右向け左向け
旋風砲
シュワンポンパオ
中国は宋の時代に登場されたとする投石機が旋風砲です。
大体の投石機はシーソーのようにして石を投げ飛ばす構造をしています。
シーソーって簡単に向きが変えられないので、敵の部隊みたいな動き回る物を狙うときや、城でも右側・左側などあちこちに投石を仕掛けたい時には、シーソーの台座ごと向きを変えるという大がかりな作業を求められてしまいます。
まぁ、敵さんが部隊だったとしたら、そんな手間のかかる回転中に突撃してこられて投石機ごと持っていかれることでしょう。
旋風砲はそんな欠点を克服した投石機になります。
それではさっそく、見ていきましょう!
◇◇◇
~形状と使い方~
一本の柱が空高く伸び、尖端には右左へと回転することができる仕掛けが取り付けられています。
その仕掛けの中に上下に可動する機構があり、ここが投石のためのシーソーの機構になっています。
シーソーの一方には紐と石受けが取り付けられており、ここに数キログラムの石を乗せます。
反対側は屋台の紐くじを思われる程の沢山の紐が取り付けられ、これを1人1本持ってタイミングをピッタリ合わせて引っ張る事で、石を投げる訳です。
まあ、イメージするとしたら、屋根より高い鯉のぼりのポールですね。
風見鶏が右左を向いたり、カラカラと回る車輪が取り付けられていれば、その部分がシーソーになっていると想像しやすいことでしょう。
高さも5~6メートルとされているようですので、鯉のぼりのポールは妥当な高さではないでしょうか。
根元の部分も地面に置いてあるというだけではありません、強風や石を投げる衝撃に耐えられるように地中深くに埋められ、その周りに支柱が立てられてメインの柱と一緒に木を組み合わせて固定されます。
柱の1/3程度は地面に打ち込まれているとのことなので、柱の全長は9メートルはあったと思われます。
周囲の支柱は高さ2メートル程度、2/3程度は地面の中なので、支柱の全長は6メートル程度だったことでしょう。
紐も人間が全力で引っ張っても決して切れないほどの強度のため、重量も半端ではありません。
クラス全員どころか、町内会全員で引っ張るような綱引きの綱くらいはあったことでしょう。
この引っ張るための紐は40本あることが基本の形らしいので、綱引きの綱40本分の重量が加算されます。
全体の重量は300キログラムを越えてくるので、かなりの大型であることが分かります。
40人が1人1本を担当、攻撃対象の方向へ向かって右左へと行進して方向を合わせます。
掛け声に合わせてタイミングをずらさずに紐を引っ張って、投石のための上部機構を動かしていきますが、この時にタイミングや力加減を誤ると、転倒するなどの事故につながります。
最悪、投石するはずだった石が自分の上に落ちてこないとも限りませんから、慎重かつ大胆な操作が必要です。
射程は80メートル近くあったとされています。
2キログラムの石が80メートルも飛んでくるとなれば、装備なんて意味がありません。ガッチガチに防御を固めていても直撃しようものなら、衝撃と重量でひき肉にされてしまいます。
人間ではなく建築物相手でも城壁に穴が開く威力になっていたはずです。
◇◇◇
~バリエーション~
投石機には「中」とか「重」といった投げられる石の重量や大きさによって区分があるようで、旋風砲は「中」に分類されるようです。
投石機と言えば人間より重い岩を投げられる物もあるため、旋風砲は「中」と言われても納得です。
人間では投げられない程度だが、持ち上げられる程度の石を投げているわけですからね。
比較的本体も軽量のため、メインの柱ごと回転して攻撃方向を変えられるタイプ、
5つの発射機構を備えていて、独立して向きを変えつつ投石できるタイプ、
地面に埋めずに運搬できるタイプ、などなど
重量が大きいとこうしたバリエーションも作りにくいですからね。
色んな種類があるということは状況や環境に合わせて使用されていたと思われます。
旋風砲専門の部隊も編成されていたという記録もあるようなので、当時の国家としては積極的にしようしていた一品だったと言えそうです。
右向け右!
あ、もうちょっと左。
とっさに向きを変えられるってことなら、やっぱり敵部隊の迎撃を考えていたのかなと。
数キログラムの石なら補給もそれほど難しくないし、現地調達も可能でしたからね。
重量級となると、投げるための岩の確保も大変だったことでしょう。
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