第178回 トンファー 多種多様な技
トンファー
旋棍
トンファー・バトン
みんな大好きな武器の1つ、トンファー。
我が国日本、沖縄発祥の武器です。
そのルーツは中国から伝わってきた拐という武器が沖縄で発展を遂げたという説と、石臼の取っ手に使われていた「L」の形に近い木のパーツを武器化したという説の二つがあります。
沖縄では馬具からヌンチャクが生まれたとされる説があるなど、生活に深いつながりがある道具から武器が生まれた話があるので、どっちもありそうに思いますね。
トンファーは一本の棒に90度の角度で持ち手ともなる短い棒が組まれて「ト」の形をしている武器です。
2本1対で右と左で一本ずつ持っていることが多いですね。
もちろん片手でも使えます。
この「ト」の横棒持って構えると、拳より少し長いくらいの場所から、肘からちょっと出た所くらいまで縦棒部分が出っ張るようになります。
棒もまっすぐではなく、中が太くて先が細くなる、沖縄の武術で使われる「棍」の特徴を持っていることが多いですね。
全体が丸く削り出されているタイプもありますが、横棒との継手となる部分は角ばっていたり特に太くなったりしています。
人に合わせて長さも変わるのか、使う木材によっても変動するのか長さ・重さは様々です。
手から肘までの長さの1尺が約30センチなので、長い棒の長さは大体40~50センチくらいになりそうです。
数字で聞くと意外と短いようにも感じますが、横棒部分もあるのと、棍という太さもあるので、手にすると「大きい」と感じることでしょう。
扱い方の基本となる武術を習得した上でないと、真っ当に扱うことができません。
まあ、ただの棒でも手にしたら強くなった気がするものですが、トンファーは手に持ったとしても『え? これどうすんの?』って気分にさせられます。
心得が無いと、基本の持ち方でパンチする以外の使い方は一切出来ないどころか、思いつくこともないでしょう。
武術の基本を身に着けた上で、トンファーの修練が加算されるわけですから、扱い方の難易度はかなり高い武器といえます。
それだけ使いこなせたら強いんですけどね。
では、加工した木の棒にも関わらず、白刃の雨でも倒されない。
そんなトンファーを見ていきましょう!
◇◇◇
~防御~
極々一部の防御方法を見てみます。
「ト」の横棒を持ってボクシングのファイティングポーズをとると、腕の外側にトンファーの縦棒部分が来ます。
腕の外側に一本の棒があるだけ、相手の武器がここに当たれば自分が打たれる・切られることはありません。
空手などの武術で相手の攻撃を払うような型をそのまま使えば、相手が刀だろうが、棍棒だろうが、払いのけて回避することができます。
いくら達人と言えども金属バットの振り下ろしを素手で受ければ怪我しますが、トンファーを使えば難なく受けることが可能になります。
もちろん刀だって例外ではありません。
え? トンファーごと切られる?
それはヘタな受け方をしたからですね。
きちんと使えば刃の側面よりにトンファーが当たりますから、表面削られることはあっても切断されはしないはずです。
そもそも、固い木で作られているトンファーを動き回っている中であれば一刀両断は難しいです。
横棒の握り方をわずかに緩め、腕を振るとトンファーが回転しますので、この回転の勢いで武器を払うこともできます。
相手が全体重を乗せた重い一発を打ってきても、両手でボクシングのガードのように腕をあげ、両腕を自分の体と頭にピッタリくっ付ければ武器はトンファーが受け止め、その重さや衝撃は自分の体で止めるので、十分に耐えることができます。
体を軽く切りつけるような軽い攻撃は片手で受け流し、強烈な踏み込みの一発は両手で止める。
武術で鍛えた身のこなしも加えれば、雨のような斬撃でもくぐり抜けられますね。
別の修練も必要ですが、もうちょっとだけ距離が取れる方法もあります。
持ち方を変えてみましょう。構えた時の肘側に来ていた部分を持ってみてください。
棒の先に持ち手だった所の棒が来ていますね。
鎌にそっくりにみえませんか? ということは、鎌と同じように使えるということです。
この横棒部分に相手の武器を引っかけてやれば武器破壊技が使えますね。
相手の振り下ろしを弾いて、トンファーを振り上げてやれば相手のアゴを叩き潰せます。
やろうと思えば鎌槍のように回転の力で横棒部分で払う、絡めとるという動きも可能です。
やっぱり難易度が高いですね。
基本の構えの防御技だけでも、素手では受けられない攻撃を受けられるようになるので、大幅な戦力アップですが、トンファーの真価は攻撃あってこそです。
次は攻撃を見ていきましょう。
◇◇◇
~攻撃~
攻撃の方法を全部解説すると、昔の電話帳とか、図書館でも奥の奥にあるような資料みたいな、ものすごく分厚い本が出来上がってしまうほど多種多様です。
しかも、攻防一体の技にもなっている型もすごく種類があります。
この中には近接の打撃だけではなく、関節技や投擲術までも含まれるので、扱い方の幅の広さが際立ちます。
なので極々一部の解説に留めさせて頂きますね。
トンファーの使い方を一個一個書いてたら、それだけで、連載が持ててしまいます。
武器マニアでなくトンファーマニアになってしまうのは回避しなければ。
トンファーのまたの名を「旋棍」とも言うようにクルクルと回して使う姿が一番印象にあるかと思います。
拳が顔面に向いているのに、横からトンファーが半回転して打ち据えにくるわけですから、受けにくくて仕方ありません。
しかも手や体の向きを調整すれば横からの殴打だけではありせん、上下左右に斜めも加えたあらゆる方向からの回転打撃です。
一発でも喰らえば、体制が崩されますから、その隙をつかれて連撃で撃ち込まれてしまいます。
バカスカ撃たれてしまえば強烈な脳震盪を起こして、傷みを感じる前に世界が歪んでお花畑のお散歩ができますね。
しかも動きはボクシングのワンツーパンチのようにくる訳ですから、素早く対応しなければなりません。
もちろん回転させずにそのままパンチすることもできます。
拳が痛む事がありませんので遠慮なく力が込められますし、威力もトンファーの先端一か所に集中しますからただのパンチよりも威力が向上します。
苦し紛れに攻撃しても、前述した防御技術であっさり止められ、くるくる回るトンファーでボッコボコ、回転してない打撃でグッサグサです。
関節技も棒を使った絞め技があるのですが、それの威力を上げた技があります。
トンファーと腕の間に首など締上げる箇所を挟むようにして、もう一方の手を交差させるようにしてトンファーの縦棒を掴む。そのまま交差させた腕を引いてやります。
腕とトンファーに挟まれているのに、引き寄せられるトンファーの力はまさに万力のごとく、首なんぞ絞めれば血管でも気道でもまとめてキュっとなるので、あの世への直行便になってしまいます。
多分、こうした強烈な絞め技は禁じ手となっていることでしょう。
実践の場で、こうした絞め技が使える状態まで持っていけるのは、かなりの技量の差がないと成立しませんから、殺意高いですね。
さらには投擲で攻撃することでも、その形状を活かして特に威力が高い横棒の先端部分を当てるようにしたり、走っている足の間に滑り込ませて、引っかけるようにして足を止めさせる技も生まれています。
一個一個の使い方、それぞれに鍛錬が必要ですが、本当に万能ですね。
◇◇◇
アメリカやヨーロッパなど、何か所かの国では警棒としてトンファーバトンが採用されています。
通常の警棒よりも防御力が高いため、刃物などへの対処がしやすい事などが理由となっているようです。
落っことしても、コロコロと転がってどっかいっちゃたりしませんからね。
材質も硬質樹脂などになり重量がありますので、くるくると回す動きをするのは大変ですし、習得するまでの時間もかかりますから、回転する打撃に使わずに警棒としての運用や、ガードするための装備として扱われていました。
暴徒対策には格闘技技術もしっかり習得した回転打撃まで使える達人に、トンファー・バトンを持たせて鎮圧に向かわせたりもするそうですね。
一昔前は非常に強度が高く、長さか40センチにもなる大型の懐中電灯にグリップ式の横棒を付けてトンファー化させる装備まであったそうです。
ちなみ、警棒を投げて相手を止める技はコッチの方が有名です。
様々な国で使われている経過があるため、トンファーの攻撃力・防御力の高さは世界が認めているという事に他なりませんね。
万能!
攻防一体の武器であり、攻撃も防御も目まぐるしく変わる。
決まりきった型の練習だったとしても、ちゃんと回転させてくるトンファーを受けれるまでにどれだけ練習が必要なんでしょうか。
気が遠くなりますね。




