第18回 ミョルニル 北欧神話の雷神トールのハンマー (幻想武器)
ミョルニル、ミョッルニル (今回はミョルニルに統一)
北欧神話で凄まじい怪力と雷の力を持つ、神トールが扱うハンマー。
最近はいろんな作品でトールが取り上げられていて、その剛力や雷の力を振るっています。幻想武器の類の例に漏れず、このハンマーは数多くの能力を誇っています。
特に雷や投げつけても戻ってくるという部分はスポットライトを当てて描かれていますね。
投げつければ、必ず相手を打ち砕く、ホーミング機能。
手元に帰ってくる帰還機能。
骨と皮になってしまった獣をも蘇らせる、蘇生機能。
振り下ろした場所を清める、聖域の生成。
雷を操る事ができる、操雷の能力。
いやぁ、沢山ありますね。
現代でもトールは崇拝の対象となっていて、天候を操る農耕の神、子供の成長を見守る神、子宝の神などとされています。
当然、ものすごく戦でも強い神様なので、戦いや剛力の神という側面もあります。
結婚式や新婚生活のお守りとして、トールの持つミョルニルは魔除けや幸せのアイテムとして根強い人気があるほどです。
ご利益も沢山です。
さて、ではそんな神様のハンマー、ミョルニルを見ていきましょう!
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ミョルニルの形状ですが、本当に大きなハンマーです。
すさまじく重いので、使い手のトールですらもメギンギョルズという力を増幅させる帯を纏っていないと振るう事すらできなかったとされています。
ハンマーの頭の部分と比例して、柄の部分がとても短くなっているので、力も非常に入れにくい形状をしています。
本当に持ち手がちっちゃいんです。
サイズをイメージするなら、土木工事用の一番大きいハンマーに子供のおもちゃサイズの柄を取り付けたような、かなりアンバランスなサイズをしています。
これは北欧神話でお馴染みの悪神ロキが、ミョルニルを作る小人族にちょっかいを出して、柄の部分を短く使いにくくさせたという逸話があるためです。
トールはこの使いにくくも凄まじい力を持つハンマーを操り、数多くの巨人族を打ち倒していきました。
世界をも締め上げる大蛇、ミドガルズオルムもこのハンマーによって倒されています。
数多の巨人をも一撃で葬ってきたのですが、このミドガルズオルムは1度では倒せず、トールとミョルニルでも数発の打ち込みを倒すまでに必要としました。
一撃で倒れないほどミドガルズオルムが強いのか、これを打ち倒したトールとミョルニルの力がすごいのか、スケールが大きすぎて分からなくなります。
トールの息子アグニは、父を超える力を持っており、メギンギョルズを使わずともこのミョルニルを自由自在に扱ったとされています。
もう、どんだけ強いのかわかんないですね。
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戦いにはとても強かったトールでしたが、姦計や計略といった絡め手は苦手としていました。
数少ない敗北のエピソードには悪神ロキの宮廷に招かれた時の物があります。
エリという巨人族と組手をする事になったトールですが、このエリというのは『老い』という現象そのものだったのです。
誰でも老いて行きます。老いが進むほど、力は衰えて、反射反応も鈍くなっていきます。
それは神とて例外ではありません、人間に比べれば悠久の時を生きる神族と言えども、やがては老いて行きます。
力任せにエリに立ち向かうトールでしたが『老いる』という現象は力でねじ伏せられる物ではありません。
徐々に老いてしまったトールはエリをねじ伏せる事なく、膝をついてしまいました。
北欧神話はゲルマン地域全域で信仰されており、ケルト神話ともお隣同士くらいに関係が深い神話です。
この雷の神トールとミョルニルは、土地の名前や人名などいたるところに痕跡が残っています。
北欧の文字で占いなどに使う『ルーン』でも場を清めるためにトールハンマーという所作や儀式が残っているほどです。
巨人を砕く! 雷の一撃!
北欧神話では、悪魔や悪の存在、病気の具現などといった悪しき物を『巨人』と表現します。
巨人を次々と打ち倒すトールは、悪魔を払う善なる強き神という存在です。
力の帯メギンギョルズに加えて、鉄の手袋イルアン・クライビルもつけてからミョルニルを扱っていたという作品もあります。実際の神話ではこっちのほうがポピュラーなのかなぁ。