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第175回 混天截 これ使えるの?

混天截(こんてんせつ)


 中国は明の時代に作られた。王折(おうき)王思義(おうしぎ)によって作られた『三才圖會(さんさいずえ)』という書物に記されている武器が混天截です。

 この三才圖會は今で言う百科事典のようなものであり、歴史上の人物や様々な物品の絵が多数載せられています。

 全部で106巻から構成されているので、その情報量はすさまじいものですね。


 中には、文章で示された物から無理やり絵に起こしたものも乗っているそうですが……

 作られた1607年という年代を考えると、その発行までにどれほどの困難があったことか用意に想像できますし、集めた情報そのものの真偽も追いにくい時代だったことでしょう。


 そんな三才圖會のなかに、とてつもない武器が乗っていました。

 一般兵では扱うどころか、持ち上げることすら困難、歴史に名を刻んだ者達のなかでも「豪傑」で名をあげた、数少ない者だけが扱う事ができる武器。

 それが混天截です。


 さて、どんな武器なのか見ていきましょう!



◇◇◇



~最強! 混天截!~

 重量タイプの槍を4本まとめたんじゃないかと思うような長物です。

 全長は2~3メートルとされているようですが、おそらく2メートルだと考えています。

 だって、3メートルなら人類では扱えそうにありませんから。


 柄は少々太めではあるものの、通常の槍とそれほど大きな差はないように思える見た目で、石突部分は丸く、金属がはめられている程度のシンプルな作り。

 先端部分は鉾と言うのか末広がりな刃がついており、その先端は4つに分かれています。


 先端の刃の回り、4方向に40センチ近い月牙が取り付けられています。

 月牙の柄に近い先端から、中心になる先端の刃の先まではなんと50センチにも及びます。


 この時点でシルエットはもはや京都の庭に置いてあるような、豪華な灯篭が先っぽに付いているかのようですが、まだまだ終わりません。


 なんと月牙の柄に近いほうに、鎖が取り付けられており、その先端には拳ほどもある鉄球が分銅としてつけられています。

 鎖の長さはおそらく1メートル程度はあるはずです。


 1本の中央の刃、4本の月牙、4本の分銅つき鎖。

 これが1本の槍としてまとめられたのが、この混天截です。


 重量は何と7キログラム!

 重心はどう考えても武器の山になっている先端に置かれることになりますから、一般人は先っぽに引っ張られてしまって、持ち運ぶだけでもヨタヨタになってしまいます。


 ……筆者ピーターはぶっちゃけこれだけ先っぽについていて、7キログラムって「軽いんじゃね?」と思ってしまいます。

 ですが、月牙部分の刃が薄く作られていたり、分銅部分も底や中に空洞を作っておくなどで素早く扱えるように工夫されているとしたら、あり得る話です。


 こんだけごちゃごちゃついてたら、重すぎて柄がへし折れたりする可能性までありますから、実際に使うために工夫されていたのだと思います。



◇◇◇



~最難関! 混天截!~

 相手が鎧を着ていようが、大盾をもっていようが、関係ありません。


 混天截を全力で振り抜いてやれば、重量感たっぷりの月牙がめり込んだ直後に、プロ野球選手のストレートのような鉄球が4発も飛んできます。

 一撃目で体勢が崩れ、鉄球4連撃でもうボロボロ、体制が崩れて鎖で動きを止められてしまった所に「おかわり」のもう一発がくるわけです。


 これだけでも十分に恐ろしいのですが、月牙が4本もあるので、これを使わないわけには行きません。

 一撃加えた後も手を返さずとも振り戻してやれば、違う相手にも攻撃できますし、捻って使えば月牙が相手の攻撃を次々と払って行ってくれます。


 もちろんシンプルに突き攻撃も有効です。中央の刃は先が太くなっており先端が分かれているため、刺さり過ぎにはなりにくい構造です。


 鎖も4本もありますから、敵に絡みつかせる、武器を絡めとる、刃の間合いよりも離れた相手を打ち据える、色々できます。


 どう考えても最強ですね!


 ……どう考えても『使えれば』最強でね。

 そもそも、真っ当に振れないんですよ、重いだけでなく、尖端が複雑な構造をしているので、すっごい空気抵抗を感じるはずです。


 ということはスイングにスピードが乗りにくいばかりか、一振りで持って行かれる体力もすごいことになります。

 振り終えたあとに分銅が飛んでいきますから、これもコントロールしなければならないので、引き戻す際にはタイムラグで重量を感じることとなります。


 そんなわけで、すっげークセが強いんですよ。

 このクセも理由ですが、あまりの重量で体力もごっそり持ってかれますから、簡単に息があがってしまうんです。


 さらに、鎖が4本もついていることにも気を付けなければなりません。

 柄の手を置く位置によっては、鎖と分銅が自分の手や体を打ち据える可能性が出てきます。


 鎖同士が絡んでしまったり、敵に絡みつかせたは良い物の、絡みついた場所から混天截が動かせなくなって、2撃目が出せなくことも十分に考えられます。


 これだけのクセの強さと扱いにくさの中、相手の攻撃を華麗に捌く技術も求められます。

 力が入ればいいというものでなく、相手に当たる瞬間の月牙の向きによっては威力が低減するため、当てる瞬間にまで気を配らないといけません。


 鎖を使う場合はそのことも計算して、力加減を調整する事が求められます。

 超怪力で超繊細な力加減が求められる武器が混天截です。

 ほんのちょっと力加減を間違えたら、ものすごい大きな隙ができるか、自滅してしまいますからね。


 こいつを自由自在に使えたら、間違いなく一騎当千の猛者といえるでしょう。

さいきょうのぶき!


 最凶か最狂の間違いじゃないかなって思う。

 自分が身長2メートルの筋肉ムキムキの大男だったとしても、混天截は自分の得物にはしないかなぁ……

 走り回って距離をとりながら、拳大の石を投げつけてやれば一方的に攻撃できちゃうように思ってしまう。

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― 新着の感想 ―
なんだか、すごい怖そうなおじさんが持ってそうです。しかし、数ある武器からこれを選ぶのには理由があるはず。大切な場所を守る番人とか似合いそうですね!
銅拳からはや幾年…またも三才図絵ですな。 当時は皆目見当もつかなかった解説がなんとなくわかるようになりました。 (翻訳機能様々です) 翻訳された解説を解読するに、銅拳ならびに混天截を含めた24種の…
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