第169回 薙鎌 便利なんだなコレ
薙鎌
同じような形状の物で「藻切」とか「藻外し」と言ったりもします。
農作業用の鎌の柄をですね、「ぐーん!」っと伸ばして、全長2~3メートルの柄をとりつけた鎌が薙鎌です。
刃渡り10~30センチ、大きくても40センチ程度の刃になっているので、サイズ的にも農作業でよくみる鎌ですよね。
呼び方の違いは厳密にはサイズの違いを刺したり、用途の違いで呼び分けたりもあったようですが、その違いはあまり明確な物ではないようです。
使われていた地域は名前を見ても分かるように日本。
1200年頃~1600年頃にかけて、武器に道具にと薙鎌が使われていました。
うん、結構長い期間ですよね。
使われていた期間が長いというのは、それだけ便利だったり、儀礼的に取り入れられたりした歴史があるって話が多いものです。
ですが、こんな長い鎌が儀式に入ってきた記憶はピーターにはありません。
つまり、便利グッズだったという訳ですね。
さて今回は、そんな便利グッズの薙鎌を見ていきましょう!
◇◇◇
~便利な薙鎌~
鎌という道具は趣味でもなんでも農業にちょいとばかり触れている人なら手にしたことはありますし、使い慣れている刃物の1つと言えます。
それが、ちょっとばかり柄が長くなったところで、使い慣れている刃物ですから、引っかける・引き切る・突き立てるといった操作はそれほど難しくありません。
その柄の長さを活かして、馬上の敵に引っかけて引きずり下ろすこともできます。
相手が鎧武者でも関係ありません、鎌なので腕やら足やらを狙えばいいので、一撃で命を奪うなんてことは一旦おいといてかまいません。
叩き落してから、鎧の隙間を狙って鎌の切っ先を差し込んでやればいいだけです。
攻城戦でも上にいる敵の足元をねらったり、壁の上に引っかけたりなんてことも出来たことでしょう。
つまり、それほど戦に熟達した武将でなくても薙鎌をもっていれば戦力になったわけです。
以前に書いたバトル・フックなどと近い扱い方になっているので、時代や場所が違っても近い発想で武器が作られていると考えると面白いですよね。
◇◇◇
~薙鎌の真価~
また、薙鎌が真価を発揮するのは水上戦です。
この場合は藻切・藻外しの方ですが、便宜上まとめさせてもらいますね。
もちろん、水上戦では敵を引っかけて引き倒すという使い方はもちろんですが、敵を船から水面へ落とすことにも使われます。
普段というか、本来の使い方は船に絡みついた海藻を引っかけて外したり、網や紐などを離れた所から切ることなどに使われていました。
船は大きいので、いちいち登ったり降りたりするのも面倒だし、水の上ではわざわざ水中に降りたりなんてできませんからね。
薙鎌みたいなものが必要になったわけです。
戦いの中では敵の船に引っかけて引き寄せたり、乗り込む時の支えにしたりと、戦闘の主力というよりも補助のアイテムとして活用されていました。
落っことした荷物も回収したりできたでしょうからね。
戦いの真っただ中では2メートルオーバーの薙鎌と一緒に他の武器なんて持てない訳ですから、この薙鎌を武器として扱うしかないわけです。
馬上の鎧武者と違って、水上の敵兵なら軽装であることが多いですから、首筋に刃を振り下ろすもより、首や腕などをかき切ってやるもよし。
ただの道具の鎌が、命を刈り取る死神の鎌に早変わりです。
船の上なので、振り回すというより、ピンポイントで狙っていきますね。
あっ、もちろん鎌の背中部分で相手を突き落としてもいいですよ。
転んでくれたら大チャンス!
純粋な武器として作られた槍よりも、鎌の方が手に馴染むのは早いとされていました。
他の武器よりも手軽に使う事ができる可能性が高いと言えるでしょう。
見た目な地味でもある薙鎌ですが、実は武器にも道具にもなる。
鍛錬も軽めで使用できる便利なアイテムになっていました。
意外と万能ですし、材料や製造費用も比較的安価だったと予想できることも魅力の一つだったことでしょう。
手が届く!
高枝切バサミをイメージしてしまったピーターだったりします。
意外とこういう横向きに刃がついている長物って使いやすいんですよね。