第167回 マクアフティル 黒曜石の剣
マクアフティル
マカナ
マクアウィトル
黒曜石のチェーンソー
南アメリカ、アステカ人が使っていたとされています。
聞きなれない言葉ですが、現代の言葉に訳すと「刀剣」となるとのこと。
パッと見た所羽子板のようなシルエットを持っていますが、当然のこと羽子板のようなオモチャ、観賞用品という訳ではありません。
原始的な材料を使っているのですが、人間の首すら落とせるとも噂されるほどの切れ味もっています。
重量は1キロ~1・5キロ、全長は100センチメートル程度。
全長100センチの中で握り部分が30センチ程度あるので、片手でも両手でも扱うことができるサイズです。
タイトルにもあるように刃の部分は黒曜石で作られていますね。
ですが、黒曜石は細かい破片のように分かれてしまうため、刀剣になるような大きな刃は作れません。
さて、どうやって作られているんでしょうかね?
今回はそんな不思議な刀剣をとりあげていきましょう!
◇◇◇
~材料と形状~
30センチ程度の直線の棒が握りとなり、70センチ程度の長方形の板が取り付けられていますが、この長方形の部分は一本の木か削り出したのか、握りと組み合わせてあるのかがハッキリしません。
再現されている物は、一本の木の棒を削り出して根元から段々と太くなるようにして作られています。
たしかに組み合わせているよりも一体化しているほうが強度が高くなるので、効果的な作りだといえるでしょう。
柄頭は円形の加工がされていて中心には穴があけられています。
使われている木材は樫、つまりオークで出来ています。
強度が十分なので、この状態でも棍棒としても使えますね。
板の腹の部分には丸い模様が刻み付けられているので、これがさらに独特の存在であることをアピールしていますね。
さてマクアフティルの最大の特徴のブレードですが、これが黒曜石です。
様々なバリエーションがあり、年代によっても作り方が変わってきます。
黒曜石は小さく薄く剥がれるようにして割れるのですが、この割れ方が非常に薄くなるため鋭い切れ味を生み出します。
その切れ味はなんと手術用のメスと同等か、それ以上にもなるという、とんでもない切れ味です。
この黒曜石の破片を、マクアフティルの切っ先としてオーク材に埋め込んだり、はめ込んだりして並べていきます。
最終的にはマクアフティルのブレード部分に規則正しく並ぶような状態になるため、結果的に黒曜石で一枚のブレードを構築することができるのです。
後期のマクアフティルは黒曜石の刃が隙間なく付けられており、本当に一本の刃に見えるほどだったとも考えられます。
そこまででなくても、隙間を開けながらでも十分な切れ味を発揮することでしょう。
中には牙のよう鋭く尖った黒曜石がはめ込まれている物もあったようで、これは黒曜石のチェーンソーと言っても過言ではない見た目になっていたことでしょう。
黒曜石もただはめ込まれていたものもあれば、接着剤になるものを使って強固に取り付けられていたとのこと。
職人の技術が光りますね。
どの形態だったとしても黒曜石のブレードがいとも簡単に肉を切り裂いていきます。
破損すれば、比較的簡単に黒曜石のブレードを交換をすることが出来る上、オーク材部分だけでも、両手持ち棍棒ですから、たとえ黒曜石が無くても頭蓋を叩き壊すことが可能です。
恐ろしいですねぇ、見た目も独特性があり、ブレードに刻まれた文様が存在感を主張しますから。
姿があるだけでも威圧することができる武器と言えるでしょう。
◇◇◇
~威力と歴史~
資料によって使われていた年代が大きく異なっていて、名前も違っていたりしますが、様々な地域で扱われ、年代によって名前も変わっていたことがその理由のようです。
古い物ではアステカ人達よりもはるか昔の時代に、マクアフティルと言えるような武器が登場しています。
証拠となるものが、チチェン・イッツァのマヤ文明の遺跡から、マクアフティルが武器として扱われた壁画です。
この壁画からは片手にマクアフティル、片手に盾を持ち、羽飾りのようなものを旗のように背負い戦っている姿が描かれており、歴史の古さを物語っています。
スペインとの戦いにマクアフティルが用いられた経過があります。
その中から『馬の首すらも落とす』という逸話もあり、この武器で首を落とされた捕虜たちがいたと歴史書にも残されているとのこと……
恐ろしいことです。
強度も調整された馬の首の模型を再現して、マクアフティルで切り落とす実験では、3度の切りつけで切り落とすことに成功しています。
この威力に関しては間違いありません。
威力だけ見ると、現代の刀剣にも遅れをとらないように見えますが、ヨーロッパ諸国で産まれた金属製の刀剣や防具類に太刀打ちできず、戦場からは姿を消していく運命をたどります。
分類によっては棍棒に分類されることもまるマクアフティルは、威力をあげるために「振る」という動作が不可欠のため、突き攻撃や押し込むような斬撃では威力が低下してしまうのですが……
オークと黒曜石のマクアフティルを金属製の武器防具に向かって振り下ろしたなら、一撃で砕け散ってしまうことは言うまでもありません。
振るという動作が必要になるため、密集陣形での戦闘も苦手としたことで、重装備で隊列を組まれると1対多数とならざるを得ません。
とくに鋭い切っ先を活用した突き攻撃でも金属製の武器に軍配があがってしまい、マクアフティルは戦場から姿を消していきました。
使っていた部族が次々と姿を消していったため、金属製の武器を用いた近代文明に排斥された歴史と重なっていると言えるでしょう。
ストーンブレード!
公私ともに忙しくて、更新が後手後手です。
遅くなっていて申し訳ないっす。