第163回 なえし 十手の下位互換?
なえし
十手の横棒を取っ払って、鉄の棒の状態にしたものです。
一端には穴があけられており、そこに紐を通してありますが、この紐は結構な長さを持っていて、約1メートルになることもあります。
なえし自体の長さは30~40センチくらい。
江戸風に言うなら「長さ1尺の鉄棒に3~4尺の紐を結び付けた物」って感じでしょうかね。
主に使っていたのは江戸時代の目明しと考えられます。
目明しとは、岡っ引きなどとも言われ、役人の手として色んな調査や警備などを担っていた者達の事だそうです。
とはいえ、十手など他の道具もあったことでしょうから、これを持っていたのは下っ端だったかもしれませんね。
筆者ピーターも調べてて初めて知りましたが、時代劇とか詳しい人なら「当たり前のことじゃん」とか言われそうですね。
では、十手から横棒を取っ払った、なえしを見ていきましょう!
◇◇◇
~実は色々~
ただの鉄棒と思うなかれ、形状自体も沢山あります。
四角・五角・六角の鉄棒という基本の形状だけでなく、太さや長さもそれぞれ違ってくるのでバリエーションが豊富です。
紐の長さの事も踏まえると、1本1本違ってくるので、おなじ物は2つ無いと言っても過言では無いかもしれません。
そして使い方にしても基本的に打ち据えるようにして使いますが、ただの鉄の棒と言えども、扱いの発想次第では関節を極めるなどの別の攻撃にも使えます。
もちろん、丈夫な鉄の棒ですから隙間に差し込んでこじ開けたりする工具としても使えます。
紐の部分も相手を縛り上げたりすることにも使えたことでしょう。
十手に比べると、持ち運びしやすく、紐もくるくると巻きつけておけば邪魔になりません。
闇夜にまぎれてコソコソっと悪事の証拠をつかむために忍び込んだりするときにも有用だったに違いありません。
◇◇◇
なえしの名前の由来は「萎える」。
つまり、相手を萎えさせるという所から来ているようですが、鍛えた棒という意味もあるそうです。
なんにせよ、とっ捕まってなえしを構えている岡っ引きに囲まれていれば、、、
気分も萎えるので何でもかんでも話してしまったことでしょう。
御用だ!
十手と提灯以外にも「御用だ!」が似合う武器の1つですよね。