第162回 ボロック・ナイフ ちんちん!
ボロック・ナイフ
ボロックダガー
キドニ―ダガー
結構知っている人もいて、あちこちのゲームにも登場しています。
ボロックとは「睾丸」のことで、その名の通り、鍔の部分に円形や球形パーツが取り付けられている短剣です。
つまり『ちんちんナイフ』ですね!!
……あの、ふざけてないですよ、ほんとにこんな感じで呼ばれてたんですよ。
ボロックとキドニ―で別の武器として扱われていたり、ボロック・ナイフから発展していった別の刀剣もあったりするので、実はかなり広い範囲で長年に使われていた歴史ある短剣です。
使われていたのはヨーロッパで12世紀(一説には11世紀)から17世紀まで、ボロック・ナイフの要素を持った短剣が使われていました。
それも、民間から軍隊に至るまで、あちこちに浸透しているまでになっていたんです。
さて、今回は男性器をモチーフとしているボロックナイフを見ていきましょう!
◇◇◇
~形状~
全長25センチ~30センチ程度になります。
握りとなる柄部分は8~10センチ程度なので、刃渡りは20センチくらいになります。
短剣なので言うまでもありませんが片手で使います。
大きく広まったという物としては結構大型な印象を筆者ピーターは受けておりますので、実戦だけでなく様々な用途として身近に置かれていたことでしょう。
柄は円錐状に作られていて、柄頭に向かって段々と太くなっていきます。材質も木製の物や金属製の物、年代によっても変わっています。
デザインは本当に様々で、なんにも彫刻されていないものから、豪華な装飾になっているものもあるんです。
しかも、中には柄頭の手前に段差を付けて、柄頭自体は段差から丸みを帯びさせたような、男性器そのまんまにしてある物まであります。
ボロックという球状の装飾は全般に見られますが、丸い金属板や金属の球体など、ここにも様々な違いが見て取れます。
古い物ほど金属板が取り付けられている物が多いようです。
このボロック・ナイフ独特の装飾は、ナイフを手にするときの手がかりになるため、手探りで探り当てて引き抜くことがやりやすいようになっています。
柄部分が装飾分大きくなっているので、攻撃を受け止める事もやりやすい形状と言えますね。
刃も根元が一番太く、尖端で交わるまで両刃の直線が伸びる王道な形状です。
柄頭が太くなっているため、突いた後の引き抜き時に力がかけやすいので、突きを得意とする短剣に分類できます。
大きさといい、使い勝手の良さといい、理にかなった構造をしていますね。
◇◇◇
~最後に~
ボロック・ナイフは男性用の短剣として用いられ、幅広く使っている人が居たとされていますが、実戦のために使い込んでいたのは騎士達となっています。
当時から「ちんちんナイフ」という感覚で呼ばれていたわけですから、後発型のボロック・ナイフは腎臓を意味する「キドニー・ダガー」と呼ぼうとする動きがありました。
腎臓は豆のような両端に膨らみを持つ形状をしています。
猟師さんとかの間では、獲物の腎臓を「マメ」と言ったりすることもあるほどです。
キドニー・ダガーは睾丸状の装飾は控えめなデザインとなっていて、これをボロックの両端のふくらみにかけて、名前の変更をさせようとする動きがあったようです。
「ちんちん」と「マメ」やっぱり「ちんちん」のほうがインパクトあるので、大枠の名前は変わらなかったみたいですけどね。
ちんちん!
冗談っぽく感じますが、男性器や女性器というのは、生命や力の象徴とされる事が多くあります。
男性器を象徴として自らを奮い立たせたり、力を得る願いをかけたり
女性器を象徴として家族のために生きて帰る意思を強めたり、
色んな願いが込められていますね。
キドニ―は「親切」という意味もあるという説もあるようです。
ミセリコルデのように、魂を神の下へと送る短剣という意味から来ているとのこと。
確かに、そういった用途にも使えそうです。




