第161回 陣鎌 いくさじゃ~!
陣鎌
戦場で使われた鎌の事です。
戦国時代、戦に持っていくアイテムは「陣」という文字が頭に付くので「陣羽織」だとか、「陣太鼓」だとか、なんでもなんでも陣・陣・陣となります。
陣鎌は、陣地を作る時などに邪魔な草を刈るために使われる事がメインの道具でした。
よく時代劇で、布で周辺を囲った陣の中に大将が家臣を連れて並んで座っているシーンなどがありますが、あれを作るための草刈りをするのに使われたりしていたんですね。
絵になるシーンのためには下準備がやっぱりあったんですよ。
これが意外と大変。
普段は稀に人が通る程度の山道や草むらの一角を切り開くことになるため、普段使いの鎌よりは大振りの物が使われる傾向があったようです。
そんな道具の陣鎌ですが、これを武器としても使えるように変化させたり、専用の技術を編み出したりと、様々な試行錯誤が行われてきました。
結果的に出来上がってきたのが、道具であり武器である、一説では忍びの武器とまで言われるようになった陣鎌です。
草刈りだけじゃなくて、首も狩る!
今回はそんな陣鎌をみていきましょう!
◇◇◇
~陣鎌の構造~
といいますけれども、武器として使う鎌は「同じ物無し」と言われるほど、一個一個の形が違っています。
刃の弧の描き方、刃の長さ、刃の取り付け方、尖端部分の突起の有無、柄の長さ、様々です。
そういえば、ホームセンターとか金物屋さんでも扱っている鎌ってお店ごとに微妙に作りが違っていますよね。
陣鎌になる物の傾向としてですが、いくつか特徴があげられます。
①大振りである
②先端が両刃、もしくは疑似刃仕上げである
③柄の先端部分にまで金属がある(木の柄に刃をはめ込むタイプではない)
④鎖の取り付けや、尖端に突起など、農具には不要な機能がある
といった所ですが、必ずしも全ての特徴をもっている訳ではありません。
大振りであるのは威力をあげるため、尖端が両刃である事は刺さりやすくするため。
ここまでは分かりやすいですね。
柄の先端部分は鎌の付け根、つまり背中部分を使うため、柄の木材では強度に不安があるからですね。
最後は柄の先端部分に突き刺しができるように短剣のごとく仕上げてあったり、鎖を通して鎖鎌として運用するなど、あきらかに農具以外に活用できる特徴です。
実家に古い蔵があるという方、変な鎌が出て来たらもしかしたら陣鎌かもしれませんよ。
◇◇◇
~扱い方~
当然ですが、優先は道具です。
もしかしたら、忍びの者が農夫に変装するときに持っていて違和感が無い武器として、陣鎌が選択されていたかもしれません。
自軍の陣地を作るため、物資の動線を確保するためなど、陣鎌で邪魔な草木を払っていきます。
基本的に大振りな鎌なので、こうした作業も得意分野です。
さて、そんな作業中に敵の偵察の兵士と鉢合わせてしまいました。
いや、もしかしたら、農夫に変装していた事が見破られてしまったのかもしれません。
みたいな場面では、相手は刀を抜いて構えてくるわけです。
相手が鎧武者なら走って逃げやすいですが、軽装で来られていたら逃げても追いつかれてしまうかもしれません。
また、自分がやられてしまったら任務がこなせませんし、相手に自分の事を報告されてはまずい事になります。
『やるしかない』
と手に汗をかきながら、陣鎌を握り、神経を研ぎ澄ませて行く事となるわけですね。
鎌の先端は金属ですので刀と当たってもすぐには壊れません、まず鎌の刃を下にして構えます。
柄の長さによっては両手で持つ事もできますが、鎌は片手で戦う事が多いですね。
当然ですが、相手が刀だろうが、槍だろうが鎌よりは間合いが広いので、真っ向勝負では後の先を狙う形になります。
一回は相手の白刃をギリギリで避ける必要があるんですね。
上段からの振り下ろしが来れば僥倖、鎌を刀に合わせるように振りますが、この時には鎌の背中で合わせます。
当然ですが、半歩だけ刀の軌道から体をズラして、弾けなくてもかわせるようにします。
鎌の背中を刀に当てて弾けば、一瞬だけ隙が生まれます。
相手の懐に飛び込めれば、鎌の先端で急所をグッサリ刺す事もできますが、あまりにもリスキー。
鎌の背を刀に当てたので、切っ先が相手に向いています。これを活用しましょう。
狙いは首は首でも、手首ねらい。
弾いた直後に鎌を降ろし、腕や手首を狩りにいきます。
相手の攻撃を受ける時にも、鎌の首部分で刀を抑えたり、受ける瞬間に手首にまで切っ先を届かせたりと、攻防一体の動きが求められるわけです。
鎌で相手の武器が押さえられれば、肉弾戦に持ち込めます。鎌以外にも短刀でも持っていれば即座に抜いて超接近戦に持ち込んでやりましょう。
最初の一撃、その一瞬の見極めが甘いと、相手の刀で両断されてしまうことになります。
逆に上手く行けば、刀を受けるついでに手元を切ったり、首や胸などに切っ先を突き込んだりという攻撃ができます。
鎌なので、振れば先端が勢いよく飛び込んでくれますし、引けば切ってくれるので、難しく考える必要はありません。
普段の作業で切れ味を出す扱いは十分できてます。
当然、十分に育った草・枝をスッパリやる刃ですから、人間の肉くらいならキレイに切ってくれるので、触れるように当てるだけで十分効果はあるんです。
ということは、こちらが草むらやら木陰やらに隠れて、相手の首を背後からかき切ってやるなんて攻撃もできるわけです。
首がむき出しで無くとも、防具の隙間や守りが薄いところに向かって、陣鎌を突き立ててやれば、命は取れなくても重症を与えることも可能です。
確かに陣鎌は体術に優れた忍びの武器、なんて言われるのも納得ですね。
鎌術・二丁鎌術として、武術としても体術と組み合わせて発展してきているため、詳細な扱い方についてはどこまでもどこまでも深くなっていったのも、また陣鎌なんです。
かき切ってくれるわ!
二丁鎌術になると、本当に実践的になります。
一本でも十分にやりようはある。
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