表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

180/200

第159回 鎌槍 強さも難度も最上級

鎌槍(かまやり)


 時は戦国、嵐の時代

 個人の武勇に頼る戦いが残るばかりか、集団戦法による「団隊」としての強さも求められる、そんな時代。


 火薬を使用した新型の武器だけでなく、槍や弓などの年期の入った武器も洗練に洗練が重ねられていった。


 そんな激動の時代の中で進化した槍の1つが鎌槍です。

「十文字槍じゃんか」

 とかおっしゃる方もいらっしゃいそうですが、鎌槍の形の中の1つが十文字槍となります。


 鎌槍が十文字槍ではなく、十文字槍が鎌槍の1種類なんですね。

 形状によっては十文字鎌槍とか言う事もあったそうです。

 とはいえ、武器の分類については所説に諸説でごっちゃしてますから、この先分類が変わってきたりすることもありそうです。


 通常の槍の穂先に、右側左側に枝となる刃を持つ姿が一般的です。

 この枝の形状も様々で、槍に対して90度に付いている十文字スタイルだけではなく、月のように先端が相手の方に向いているものもあります。

 さらに、微妙に角度をつけたり、包丁のように一方や平らに近く、もう一方は弧を描くようにしているなどの微妙な違いも存在しています。


 長さも様々、主な物は2.5メートル~3メートル程度ですが、中には人の身長程度の大きさに調整されている物もあるようです。


 有名な話では胤栄(いんえい)という武芸に秀でた宝蔵院流槍術の創設者が、修練の途中、水に映る己の槍に、三日月が重なり、その姿から槍に三日月型の刃を取り付ける事を思いついた。

 こんな逸話も残っているほどです。


 使い方がものすご~く広い上に、中にはその使い方をするための非常に繊細な技術を求められる物までありますから、今回は長丁場になると思われます。


 それでは、とんでもなく強い上に、美しい姿を持つ鎌槍。

 詳しくみていきましょう!!



◇◇◇



~基本の突き~

 槍の基本は突き、というイメージがめっちゃありますが、実はこれが難しいんです。

 鎌槍はこれが出来やすい作りとも言えますね。


 長槍などでは、その長さと重量を活かして、高い所から振り下ろして相手を叩きのめすようにして使いますが、この理由は使い手の熟練不足や、経験不足を補うためでもあります。


 敵と十分に距離を取りつつ、長さを活かして槍の屋根を作ることで防御力をあげつつ、敵に近づくという恐怖心を和らげます。


 もし、長槍でヘタに突いてしまうと、相手の体を貫いてしまうことになります。

 すぐに引き抜ければいいのですが、勢い余って、ガッツリ貫き切ってしまうと貫いた敵兵がそのまま重りとなってしまい、次の敵の相手ができず、戦場で丸腰となってしまうわけです。


 また、貫いた直後に引き抜かないと、人間の筋肉の収縮で簡単に引き抜けなくなるという事も発生します。

 これでも同じく、一時的に槍が使えなくなるので大きな隙ができてしまいますね。


 このように、槍の突き技は相手の体に致命傷を与える丁度良い深さの突き技を放つ事が求められるのですが、鎌槍は枝の刃の所で勝手に止まってくれます。

 程よく致命傷の深さで、即座に引き抜けるので、連戦になっても十分に対応ができる訳です。


 1対1では突き技も相手に見抜かれる可能性もありますが、ただの槍と違うのは枝の刃の存在です。

 ギリギリで避けようとしても、枝の刃が首筋や脇腹などを通り過ぎてくれれば、それだけで致命傷になります。

 また、目、膝、手首、足首などを切ってくれれば、戦闘能力を大幅にそぎ落としてやる事ができます。


 枝の刃の効果を最大限に発揮するために、槍を回して突き技を放つ角度を調節することが求められます。

 突いている間に僅かに動きを与える事も必要です。

 相手にとって予期しない動きを発生させ、避けたつもりが切られていたという幻術のような技も繰り出せますね。


 喉元を狙った軽い突き。そのまま入ればそれでよし。

 相手が避ければ、枝の刃で首すじ狙い。

 大きく避ければ引き戻し、僅かに回して脇腹狙い、これで入ればそれでよし。

 相手が避ければ、枝の刃で脇腹狙いか、僅かに引いて太もも狙い。


 このように、1回突き技だけで、喉・首筋と2回致命傷を狙えます。

 さらに次の突きでは、脇腹も穂先と枝の刃で2回狙われていますし、フェイントで軌道をそらせば足までターゲットに入ります。


 槍の中では比較的短い分、複雑な取り扱いに優れている鎌槍は突き技1つとっても、これほど複雑になります。

 突き技から縦横へ薙ぐ動きにつなげれば、さらに応用範囲は広がることとなり、首狙いから枝の刃での腕や足への突き刺しなどもやろうと思えばできそうです。



◇◇◇



~応用編、受けと崩し~

 今度は防御と反撃の糸口の作るための技です。


 相手の攻撃を穂先と枝の刃の間で絡めとる事ができます。

 例えば刀を受けたとします、槍を横に振れば刀を相手から一瞬だけ離す事ができますし、捻ればそのまま刀を抑え込むことができます。


 鍔迫り合いと違い、刀を抑えているのは枝の刃ですから、穂先は相手に向いているということになるので、プレッシャーも段違いで与えられますね。


 捻りを加えた状態で相手の刀を通した力比べなら、振って使う刀と押して使う槍では圧倒的に槍の方が直線的に力を加えられるという状況です。

 このまま押し込んで穂先を突き込んでしまえばいいわけですね。相手に弾かれないように絶妙に捻りを加える事を忘れないで下さい。


 下段からの攻撃も同じように絡めとる事ができますが、明らかに届かない間合いからは攻撃は飛んできません。

 相手に懐に飛び込まれないように、絶妙な距離の取り方が基本となりますが、もし飛び込まれた時には穂先や柄の部分を上手く使って捌きましょう。


 むしろ、最初から相手の刀を絡めとる事を狙って、体に触れるような所をギリギリで突くという攻撃を繰り返し、相手がこちらの突きを弾く瞬間を絡めとる事がより実践的に思いますね。


 一度、捕らえてしまえば圧倒的に有利になりますから、積極的に狙っていきましょう。

 もちろん、相手が槍などの他の武器だったとしても抑えたり、弾いたり、逸らしたりすることは十分できます。


 さらに、こうした絡めとりの動きだけでなく、せっかく枝の刃があるので体勢の崩しにも使う事が出来ます。

 首狙いの突き技を避けられても、相手の体に槍を押し当てるようにしつつ槍を引くと、枝の刃の背中側で後頭部を叩けますね。


 足狙いの突きが外れても、枝の刃を引っかけたり、膝の裏を引き戻すときに当てたりするなどができます。

 所謂『膝かっくん』という、後ろから膝の裏側を押してバランスを崩させる発想と同じですね。

 引き戻した瞬間に捻れば、足の裏側を切りつけたり、跳ね上げさせたりすることで、転倒まで引き起こせます。


 相手が転んだり、バランスを崩してくれたら最高の好機です。

 そのままグサッとやってしまいましょう。


 こうした体勢を崩させる方法も多種多様、発想次第でいくらでも考えられます。



◇◇◇



~その他の使い方~

 いかがでしたでしょうか、基本の突き技の広さに加えて、からめ手の複雑さ、このどちらも瞬時に繰り出せる長さと重量。

 すでに頭はパンパンなことでしょう。


 でもまだあるんです。

 石突の部分は誰も触れていませんが、ここにも細工がされている物があります。

 石突が金属で尖らせてあれば、それはそのまま武器として使えます。


 さらに石突の形状によっては工具のようにも扱えるようになってます。

 扉をこじ開けたり、何かをつき壊したりするときに穂先の切れ味を落とさずに済みますね。


 横穴のように穴をあけている事もありますが、これは足場が悪い場所を飛び越えたり槍を支えにしたりするときに使います。


 一本適当な木の枝か何かをこの穴に突っ込んで、沼地や泥沼に石突を突き立てれば、横棒となった木の枝が、忍者道具の『みずぐも』のように泥地に沈み込むのを防いでくれます。

 棒高跳びのように一瞬の支えにしたり、両足を泥に取り込まれないために鎌槍を3本目の足にしたりとするわけですね。


 これほど様々な扱いができる鎌槍は、技能の高さ、適切な判断力、適切な扱い方の選択、そしてこれらを瞬時に行う思考の瞬発力と判断の速さが求められます。


 さらに、鎌槍といっても一本一本で造りが違うため、それに合わせた扱い方と修練も一緒に要求されるのです。

 ね、だれでも使えるもんじゃないでしょ?


 ※片方にのみ枝となる刃を持つと、片鎌槍。両方にある物を両鎌槍と分類することもあります。

天下無双!


 扱いが激ムズなんですが、持ち運びについても枝の刃がある分、持ち運びにくい作りです。

 沢山持ち運ぼうとすると、すっごいかさばる。


 先端を保護する鞘があるんですが、丁字型になっていて、ちょっと可愛い。

 横棒部分に枝の刃が収まって、穂先は縦棒部分に収まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 長さ的にも、持ち運びが大変そうな武器ですね。沙悟浄みたいに絶えず手に持ってるイメージでしょうか。 実際は冒険の旅で携帯するより、戦で使うのでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ