第157回 スティムリー こっそりグサッと
スティムリー
紀元前1世紀、世界最大の帝国とも言えるローマ帝国、もうだれでも知ってますよね。
『ローマには英雄は居ない』
なんていう人もいますが、それはローマで採用された軍のシステムにあります。
徹底的にシステム化することによって『英雄○○』といった、個人の名前の下に人を集めるのではなく。
軍をシステムとして捉え、徹底的な訓練や役割分担をして、攻撃の方法や防御の方法、普段の準備に至るまで、徹底的にマニュアル化しました。
そして、そのシステムとマニュアルを1人1人に割り振って訓練していました。
なんと、こうした軍のシステム化するという運営方法は現代でも、ほとんどの国で採用されています。
そんなローマでは様々な武器や罠も様々に開発され、国土を広げるなかで他の国や民族が持っていた技術も吸収していきました。
なので、ものすごい数の武器が存在しているのがローマなんですね。
ローマだけに絞っても連載が持てちゃいそうなくらい、ほんとに山盛あるんですよ。
今回取り上げるスティムリーもその中の1つになります。
設置型のトラップなんですが、これがなかなかに嫌らしい仕事をします。
さて、さっそく、スティムリーを見ていきましょう!
◇◇◇
~とうせんぼ~
まずは形状の説明からいきましょう。
杭の上部にフック状の金具を取り付けたものが、スティムリーです。
このフック状の金具の先端部分は、銛や釣り針のようなかえしが付いている刃に仕上げてあります。
グッサリ刺さるばかりか、肉や衣類に引っ掛かって抜けにくく、例え抜けたとしてもダメージを広げるようになっていました。
なかなか性格が悪いって、この時点でも思いますよね。
では使い方ですが、杭の部分を地面に打ち込んで、金具を飛び出させておけば設置完了です。
垂直に打ち込むよりも、斜めにして相手がやってきそうな方向に金具の先端が向いている事が理想の形になります。
杭がそこそこな重さを持っていて、地面に固く突き刺さっていれば、簡単に動かしたりはできませんから、一度設置すれば、ずっとそこに居てくれるのがスティムリーです。
雨の日も、風の日も、例え目立つところに置かれて、だれも近寄ってくれなくても、そこに居てくれるのがスティムリーです。
金具自体は小さいですし、杭も大型である必要はありません。
予算も製造も比較的低コストで、運搬も楽ですので、山盛り持ってきて、見渡す限りに設置することもスティムリーなら可能です。
敵が籠城をしたときがスティムリーの出番になります。
敵陣に続く道ばかりか、人が通れそうな草むらだろうが、森だろうが、徹底してスティムリーを地面に打ち込んでおいてやりましょう。
メインの道を塞ぐような大型の設置物が置けない場所でもスティムリーなら大丈夫。
どう頑張っても、抜け出したり、逃げ出したりできないようにしつつ、敵の補給部隊も通れなくさせることができました。
夜も昼も、雨の日も風の日も、そこを通ったのなら……
そこでずっと待っていたスティムリーに貫かれ、肉を裂かれ、血を流しながら、捕まるまでうずくまる事になるでしょう。
あとは、いつでも飛び道具を撃てるように準備して、見張りに『なんかあったら呼んでね』とお願いしておいてください。
血まみれでうずくまる敵兵が見つかるまで、自分は優雅なティータイムでもしつつ待っていましょう。
もし、敵が捨て身で突撃してきても大丈夫です。
スティムリーに阻まれて動きが鈍ったところへ弓矢や投石で一網打尽ですよ。
◇◇◇
~通れないし、外せないの~
なかなかえげつない、スティムリーは簡単に設置できる上に強固さを兼ね備えてるということです。
意外と通行止めにするようなアイテムは、ひょいっと動かされてしまうんですが、スティムリーは杭に取り付けてある上に沢山設置する事ができます。
一個一個取り外していれば、すぐ気付かれるので、攻撃を受けてしまいます。
しかも、一個ごとに杭を引っこ抜かなければならないので、かなり面倒です。
みなさんも、庭の地面に打ち込まれている杭を10~20本引っこ抜いてと言われたら嫌気がさしますでしょ?
しかも敵兵がウロウロしている中でなんて、精神的にゴリゴリ削られます。
しかも! しかも! 鋭い返し付きの刃がこっちを向いているので怖い怖い……
気が付かないで、触ろうものならズッタズタ、怖い怖い……
こんな小さい刃なのに、スティムリーは心をゴリゴリ削ってくる武器なんです。
グサッと!
馬の足に突き刺さって動きを止める事すらも可能です。
強行突破はさせないという作りなんですね。
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