第154回 リングダガー そんなに使われてないです
リングダガー
その名前のとおり、柄の頭が輪になっている全長30センチ程度のダガーです。
なんともシンプルですね。
インターネットで検索すると「ナイフをモチーフにした指輪です。シルバーアクセサリー」なんてページが出てきますね。
うーん! おしい! これだとダガーモチーフのリングなので、略してダガーリングになっちゃいますね。
使われていたのはヨーロッパ、実戦の場に投入されていたのは14世紀の中ごろのお話し。
アンテニーダガーという、リングではなく三日月というか輪の一か所をかけた形状を柄に持つダガーから発展してきたのが、このリングダガーです。
全長30センチ程度、刃渡り20センチくらいで、小さいですが鍔となるパーツも取り付けられていました。
柄部分が10センチ程度、そのうち柄の先端の輪の部分は直径3センチ程度の穴をあけるようにして作られています。
刃の厚さは比較的細く作られているので、突き刺す事が得意そうな形状をしています。
この輪には鎖を通して、自分の体に括りつけて持ち運ぶことができます。
14世紀はプレートアーマーがバリバリに活躍していた時代ですので、白兵戦の激しさは凄まじい物です。相手の鎧ごと叩き潰すような、ゴリゴリのゴツイ武器でバカスカやりあってた時代です。
紐や簡単な留め具で身に着けていれば、いつの間にか落としているに違いありません。
体に固定することが出来るリングダガーはプレートアーマーの騎士様だけでなく一般人も手にしました。
一般人は鎖ではなく紐を通して落下を防いで身に着けていたとのこと。
こうしていると、用途はただのナイフと同等に感じますが、持ち運びやすさや紐と組み合わせてた用途の広がりはアイデア商品と言えますね。
一見、長期にわたって使われていたように感じさせるリングダガーですが、14世紀の中頃から後期までのわずか数十年で表立って使われる事はなくなってしまいます。
この時代のヨーロッパ地方は実は短剣がものすごい種類あるんですよね。
15世紀に入るとパリィイング・ダガーやマン・ゴーシュなどの複雑な形状や機能を持った短剣が登場してきます。
時代と時代の合間に存在していた貴重な武器だったとも言えますが……
プレートアーマーでガッチガチにして、でっかい剣や重いメイスやハンマーでの殴り合いの中では、リングダガーは前線で活躍できなかったんじゃないかぁ……
「あ? ダガー? 邪魔邪魔、いらん!」
ってされてたかと思うと、ちょっと切ない。
落ちない! 落とさない!
日本だと縁起物になるかもしれません。