第152回 アメンタム 投擲ストラップ
アメンタム
アメントゥム
amentum
古代ギリシャ槍とセットで使われていた、投擲用の紐、ストラップがこのアメンタムです。
厳密に言うと武器そのものではなく、武器に組み合わせて使われていた。オプションアイテムとも言える物です。
これを使う事で命中精度が下がる変わりに、威力と飛距離が跳ね上がったとされています。
古代ギリシャで投げ槍を使っていた有名な存在は、ぺルタという盾をもった軽装部隊ぺルタストが有名です。彼らの持つ投げ槍には革のストラップが取り付けてあり、投げる時に革のストラップに指をかけて投擲していたとされています。
年代で考えると、この革ストラップをアメンタムと言う事ができると思います。
調べてみると部隊名とか、国の歴史とかに当たって行ってしまうので、武器そのものの情報って中々出てきません。
もしかしたら別の言い方などもあったのかも……
古代ギリシャというワードだけでもロマンが加速するのに、武器にまだまだ未知の情報があるなんてロマンが止まりません。
さて、今回はアメンタムを使うと投げ槍がどう変化するのかを見て行きましょう!
◇◇
~アメンタムでの投げ槍~
アメンタムが使われていたのは、古代ギリシャです。
年代で言えば西暦0年の前後150年程度でしょうか、現代から考えれば1850年も昔の事です。
日本だと縄文時代の後の弥生時代になる頃で、卑弥呼様が存命している頃になります。
通常の投げ方では、投げ槍の飛距離は20メートル程度だったとされています。
戦場でアメンタムを使ったと想定した実験では30メートル程度まで射程が伸び、初速も上がったため威力も向上されていることが確認できたそうです。
たかが10メートルと思うかもしれませんが、人間同士の戦いでは攻撃範囲が僅か1センチ違うだけでも致命的な力の差に直結することがあります。
相手の攻撃範囲が20メートル、こちらの攻撃範囲が30メートル。
どうでしょう、自分達が安全地帯からの一方的な攻撃ができるという、最高の環境に見えてきませんか?
当然ですが、距離が遠くなれば遠くなるほど命中精度が下がります。
1対1では攻撃を外すという事は自分の危険が一気に増加するので、この命中精度にこだわる事は非常に重要です。
1発の命中率は低くても、1部隊の全員で投げれば槍の雨になるので避けようが無く、自分1人でも相手が固まっている所に投げつけてやれば誰かに当たりますね。
使う状況が少し違うだけで、得られる成果が大きく変わってきます。飛距離ってとっても大事ですね。
アメンタムの巻き方によっては、回転をかける事で、弾丸が飛んでいく時のような安定性を槍に持たせた状態で飛ばすこともできたとのこと。
敵が近い時には水平に近い形で狙いやすいように投げていたのでしょうが、敵が遠く相手の間合いの外から攻撃する場合にはアメンタムを使用し、斜め上に投げる飛距離優先の投擲で先制攻撃をしかけていきます。
槍が安定して飛行するということは確実に先端が相手に向きますから、威力の向上だけでなく、地面に突き刺さる槍によって「攻撃されている」という実感に直結するので、大変に恐ろしい思いをすることになうでしょう。
古代ギリシャのぺルタストは、散兵状態になっての投げ槍攻撃や、隊列を組んだ白兵戦など、状況に応じた戦い方ができたようです。
散兵状態になり独り独りでささっと集団の攻撃範囲外から一発投擲。これを繰り返してチマチマダメージを与えていって、弱体化させたところで隊列組んでの全軍突撃。
相対したら面倒なことこの上ありませんね。
こうした戦術の組み合わせや、小回りの良さを活かし、強さの代名詞とも言えるスパルタの重装歩兵をぺルタストの部隊が破ったと記録が残っているほど。
投げ槍、恐るべしです。
◇◇◇
オリンピックの競技のやり投げでは、1984年に100メートルをオーバーした飛び過ぎ記録が残されています。
飛び過ぎてルールが改正されてしまったそうですが……
一説にはアメンタムが使われた投げ槍は最高で約80メートルも投げる事ができたとされています。
現代の最高記録に迫る程の飛距離を叩き出したと考えるとちょっと現実離れがすごいですが、これも戦場ではなく、整えられた競技の場であればあり得ない話ではないのかもしれません。
飛べ!
アーメントゥームという槍を調べている時に情報が収集されました。
これは有名でアプリゲームにもなっている作品に登場してくる槍ですね。
ギリシャのこうしたアメンタム付きの槍を「アーメントゥス(アーメントゥーム)」と呼んでいたという説もあり……
いつもながらの「所説あります」です。
もしかしたら、時代の研究が進むにつれて「間違ってるやん!」ってなってくるかもしれませんね。
それもまた、ロマンです!