第150回 ケラウノス(幻想武器) ゼウスの力
雷霆
ケラウノス
ゼウスの雷
天候というのは信仰や畏怖の対象であり、神々の力の一端に触れる物という考え方が老若男女の区別も、人種や民族の違いも乗り越えて、古今東西の世界の余すところなく広まっているものです。
神話の中の王道とも言えるギリシャ神話の世界でも、こうした天候というものが神の力として信仰を集めていたわけです。
ギリシャ神話で天候を操る最も強い力を持っていたのが、天空神ゼウスです。
オリュンポスの神々の父にして、全人類の父であり、全世界の空である「天」「雲」「雨」「雹」「雪」「雷」の全てを自在に操ります。
姿も自在に変える事ができ、牛や鷲などの生き物ばかりか、生命体でもない雲や雨にまで変身できます。
神々と人類の守護者であると同時に支配者でもある最高神がゼウスです。
偉大な神様ですが、色んな神様や人間との間に子供を作ったりして、それが後々に色んなトラブルになったり、戦争になったり……
ギリシャ神話の戦いや悲劇を『大体ゼウスの責任』とかいう人もいるくらいのトラブルメーカーな神様だったりもします。
夜空に輝く数々の星座もゼウスが関わっているものが多くあり、その全てを見るだけで本が何冊も書けてしまうほど。
そんな、強い力と影響力を持っている神様が、己の武器として手にしているがの今回とりあげる「ケラウノス」です。
最強の神様が操るからには、最強の武器だと思いますよね?
そうなんです、というかむしろ強すぎてスケールが壊れてやしないかと心配になるくらいの威力を持っているケラウノス、恐ろしい事です。
それでは、ゼウスの怒りの雷霆へ行ってみましょう!
◇◇◇
~ゼウスの雷~
冒頭でも述べましたが、ゼウスはありとあらゆる天候を操る事ができます。
天から降ってくる物って雨や雪をはじめ沢山ありますよね。
その中でも一番直撃した時に目に見えてダメージが大きい物が雷です。
一度落ちれば木を丸焦げにして岩を砕き、木造の家は燃え上がり、あまりの光と音に直撃をさけても目や耳をやられてしまうほどです。
落雷の直撃を受けていなくても電撃の余波だけで人が死んでしまう事も珍しくありません。
登山中の人が雷雨に巻き込まれてしまい、崖の上に落ちた雷が岩を伝って人間を黒焦げにしてしまったというとんでもない事案もあったりします。
人工衛星がとらえた映像では雷は地表ばかりでなく、宇宙空間にまで放電が確認できているそうです。
こうやってみると雷ってとんでもないですよね。
ゼウスはこれほど恐ろしい雷を自由自在に操ります。
全知全能とも呼ばれるほどの神様ですから、世界の端から端まで余すところなく見てらっしゃることでしょう。
その辺の小石に至るまで狙いすまして「ちゅどーん」と雷を落とす事も簡単ですから、命中精度、威力ともにえげつないものと言えます。
雷一発のエネルギーは確かにすさまじい、ですが「ケラウノス」の本来の威力ではありません。
ゼウスが調整して、ものすご~~~~~~く威力を絞って使っている状態がこの雷です。
ケラウノス本来の力というのはこの世界どころか、宇宙すらも超えて届く物になります。
雷で燃え上がる家のように、大陸を焼き尽くす。
雷で打ち砕かれる岩のように、世界を破壊する。
それどころか、全宇宙そのものにまで力を届かせて、宇宙の根源でもある混沌まで焼き払ってしまうほどになります。
さて、それがどれほどの物なのか、神話にその一端が描かれています。
◇◇◇
~雷霆ケラウノス~
ゼウスはティターン神族の農耕の神クロノスと大地の女神レアーの末の子として生まれました。
ハーデスやポセイドンはゼウスの兄弟として有名ですが、ゼウス誕生時にはこの世にはいませんでした。
正確には、ゼウス以外の兄弟姉妹は生まれた直後に父であるクロノスに飲み込まれています。
これも、クロノスが我が子に支配権を奪われるという不安に囚われてしまっており、生まれた実の子供達を次々と飲み込んでしまっていたからです。
まったくトンデモナイ父親もいたものです、こんなことができたのも凄まじく巨大な体と力を持っていたティターン神族であったからこそできたんですね。
母レアーが産着で包んだ石を用意してクロノスに飲み込ませる事で、ゼウスだけは匿う事に成功します。
ゼウスはニュムペーという下級の女神や精霊とされる存在を育ての母として、力をつけながら成人を迎えることができました。
成人したゼウスは父クロノスに嘔吐薬を飲ませ、兄弟姉妹を吐き出させる事に成功します。
末弟であったゼウスでしたが、下の兄弟姉妹から順番にクロノスが吐き出したため、現世ではゼウスが一番上となり兄弟姉妹の産まれ順が逆になってしまうという妙な奇跡も起こってしまいました。
末弟でありながら、長男となったゼウスは父親に復讐を果たしたい弟・妹達と父のクロノスと神族ティターンへ戦いを挑みます。
ゼウス率いるオリュンポスの神々と、古き時代からの支配者であるティターン神族との全宇宙の支配権をめぐる恐ろしい戦争がはじまりました。
ゼウスはケラウノスに力を込めて投げつける事で、全宇宙に振動を与えながらティターン神族を一撃の下に焼き払います。
ケラウノスはティターン神族がいるありとあらゆる空間に届き、その光で視力を永遠に封じてしまいました。
ケラウノスの放つ熱は業火となり、ティターン神族の体を次々と焼き尽くしていきました。
ケラウノスの力はすさまじく、ティターン神族を打ち倒すだけではとどまりません。天と地をひっくり返し、あらゆる空間の空を引裂き、大地に業火の爪痕を残します。
さらには宇宙の中心でもあり、原始の神であり混沌そのものでもあるカオスすらも焼き尽くしてしまいました。
ゼウスが放ったケラウノスにより、完膚なきまでに潰されたティターン神族。彼らを待ち受ける未来は残酷なものになりました。
宇宙の果てであり、冥界の最奥にある奈落そのものでありながら、奈落の神であるタルタロスにティターン神族は未来永劫封じられることになったのです。
放っただけで、これほどの被害を与えるものがケラウノスの本来の力、ひいてはゼウスの力がこれほどまでに届くというお話でした。
神々を越える神々のさらに上を行くのがゼウスの力なんですね。
神の怒り!
怒らせると世界どころか、世界の源までも滅んでしまう。
スケールがでかすぎて分からなくなっちゃうくらいの力の行使。