第147回 アダガ 槍・剣・盾の欲張りセット
アダガ
アダーガ
一目見たら忘れられないインパクトのある形状をしている盾、いや剣、じゃなくて槍……かなぁ。
全長110センチ前後の短槍の中央あたりに、凧をイメージさせるアーチがある四つ角が出っ張った盾が取り付けられています。
そして、盾の中央からはまっすぐな短剣が槍に対して垂直に伸びています。
独特な形状ではあり、盾・剣・槍と様々なパーツがあるので重そうに見えますが、重量は1.5~2キロ程度と軽量に抑えられているのが、このアダガです。
たまーにですが、ゲームとかでも登場したりしますね。
攻撃力だけじゃなく、防御力まであがる剣だったり、槍だったりという扱いになっている事も多いですね。
盾として、攻撃力アップだったりすることもありますが……
これだと槍での2刀流みたいな、滅茶苦茶なモーションになっちゃいますね。それでも成立するのがファンタジーのすごい所です。
今回はこの欲張りセットとも言える、アダガをとりあげていきますね。
それでは、いってみましょう!
◇◇◇
~アダガの歴史~
アダガは14世紀頃にスペインにもたらされ、騎兵部隊などを中心として16世紀頃まで使われたとされています。
その用法は槍であり、剣であり、盾であり、殴りつけるような格闘武器でありました。
ルーツをたどると、モロッコにあった丸い盾に刃物を取り付けたものにさかのぼる事ができます。
丸盾に短剣がセットされているのが一般的でしたが、これの上下に槍状の柄を取り付けたものでした。
これが、広まっていくにつれて、剣の部分、盾の部分、槍の部分とそれぞれに改良が加えられていき、スペインを中心に使われるようになったというわけです。
騎兵部隊が主にこのアダガを装備して活動していたとのこと。
スペインからヨーロッパ各地へと普及していきました。広まっていくにつれて細かい改良も加えられて行った事でしょう。
ですが、改良が加えられる中でも、槍、盾、剣のセットであることは変わりませんでした。
構造が複雑であり、取り扱いにも特殊な技術が求められ、持ち運びにも難があるのですが、見た目のインパクトが強いため、パレードなどにも使われることもあったそうです。
一説には特定の民族に伝わって、その民族・部族だけが使うようになっていたという話も目にしたことがあります。
モロッコよりも前の起源にまで遡ろうとすると、中国にあるサイテイという、ナックルガードから上下に棒が出ている形をした、攻防一体の格闘武器に行き着くという説があります。
結構な歴史があるもんですね、ちょっとびっくりです。
◇◇◇
~アダガの用法~
改めて、形状を確認しておきましょう。
槍は110センチ前後というショートスピアです。
盾部分は一片が長さ20~30センチという小さめの盾になります。
剣部分は、槍を握りとして拳の延長に刀身だけが30~40センチ伸びている。
以上がアダガの形状です。
敵との距離が離れている場合は、槍を構えて突き攻撃を中心として戦います。
ですが、アダガの本質は槍の間合いではありません。
相手が接近してきた場合は、盾を構え、剣を相手に向けての戦いにシフトします。
相手の攻撃を盾でさばきながら、殴りつけるようにして剣を相手へ突き込みます。盾で自分を守りながらの突き攻撃はまさに攻防一体の必殺技になりますね。
槍部分の中心部分に盾が備え付けられているので、相手が攻撃をしてきても、アダガを回転させるように振れば、槍部分で相手の攻撃を弾き飛ばすことも可能です。
また、接近戦では槍の先端を上ではなく下に向けて構えます。
この構え方の理由の詳細は資料を見ても書かれていないのですが、恐らく押し合いになった場合、穂先が自分に当たる事を避けたり、接近戦中でも相手の足を突き刺して行動力を奪う攻撃をするためだと、筆者ピーターは考えているところです。
槍の間合いで牽制しながら急所への突きを狙い、接近戦では攻防一体の盾ごとの突き刺しや体当たり、下半身への槍攻撃、これだけでも十分強そうですね。
相手が剣の突攻撃を受けてくれたら、儲けもの。思いっきり突き飛ばしてしまえば即座に槍の追撃ができますね。
そしてアダガは持ちにくいとは言うものの、大型の槍や兵器を持ち運ぶに比べれば、重量はかなり軽量になりますので、体への負荷はかなり軽いといえるでしょう。
また、大きさもそれほど大きくないですから、狭い場所でも問題なく振るう事ができますね。
ゲームだと盾だったり、槍だったり、カテゴリーがはっきりしないこともあるアダガですが、臨機応変で様々な手数の攻撃を繰り出せる、見事な武器であることがわかりますね。
合体!
「ぼくのかんがえた、さいきょうぶき」
ってのを実現させたような武器ですよね。