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第139回 多節棍 長梢子と短梢子

多節棍(たせつこん)


 西洋ではフレイルと言われるタイプの中国で使われていた武器。

 中国の長い歴史の中の宋(960~1279年)の時代に作られて、使われていたとされています。



 広い意味で多節棍と言うと、三節棍や五節根、多数の短い棒をそれぞれ鎖でつないだ多節鞭なども入って来てしまいます。

 ここにも中国の武器の体系化が難しいとされる理由を見る事ができますね。



 様々なタイプが存在しているので、基本形のヌンチャクやフレイルなどと似ているタイプを今回は取り上げて行きます。

 細かい所まで書くと、とてつもなく長い話になってしまいますから、興味がある方はこれを切っ掛けに調べてみると面白いですね。



 今日とりあげる多節棍は長い棒と短い棒を鎖や縄で繋ぎ、尖端がプラプラとぶら下がっている状態にしたものです。

 棒の長さに違いがあり、片手で使う短い物を短梢子(たんしょうし)、両手で使う長くて大きい物を長梢子(ちょうしょうし)と呼びます。



 これは多節根ではないとしたり、短梢子と長梢子を別物として扱ったりする事もあります。

 歴史の解釈の中で変わったり、解説する資料によっても内容に差がある場合も出てきますので、いつもながらの『諸説あります!』ということでよろしくお願いします。



 それでは、多節棍の基本的なタイプの短梢子(たんしょうし)長梢子(ちょうしょうし)に絞ってやっていきましょう!



◇◇◇



~短梢子~

 握りになる長い方が64センチ前後、打撃につかう短い方が25センチ前後となっています。

 重さは使っている木の材質や繋ぐ鎖の長さ、威力を上げるための金属の輪があるかないかなどによって変わってきます。



 短梢子は基本的に片手で使います。

 どうやら、これを左右1本ずつ持つ2刀流ならぬ、2棍流も存在しているようです。

 中国って、人間の器用さでカバーできる可能性があるものは、大体は実戦に持ち込んでいる凄さがありますね。



 まぁ、1人で2本持っていても戦力が2倍になるというわけではありませんから、基本的に1人1本もっています。



 片手で扱いますが、長梢子に劣るという訳ではなく、十分に加速させていれば相手が鎧兜を身に着けていても、それごと骨を砕くことができます。



 ヌンチャクもこのように扱う事ができるので、中国発祥かと思いきや、ルーツは日本の沖縄にあるとされています。

 ですが、紀元前770~450年頃、中国の春秋・戦国時代には「連挺(れんてい)」という50センチ程度の木の棒2本を鎖でつないだ武器が存在していました。

 ヌンチャクにそっくりですね。



 連挺これは城壁の上から敵兵の頭を叩き割るように攻撃することができました。振り下ろす力に重力を味方につけて強烈な一撃を放つことができます。

 短梢子も発想は同じ、片手でも繋がれた短い棒を十分に加速させれば人体に致命傷を与えられます。



 片手で使う事ができたため、馬上でも片手に手綱、もう一方に短梢子を持って戦うことができます。

 相手が騎兵なら相手の武器を絡めとることもできますし、歩兵が相手なら振り下ろしてやれば一撃で倒すことができますね。



 なるほど、2本持っていれば、1本で相手を絡めとり、もう1本で止めの一撃をプレゼントというわけですね。

 こうした鎖がついた武器だからこそ、絡めとるという手段が使えますね。



◇◇◇



~長梢子~

 短梢子を長くしただけのようですが、長さの比率や使い方は異なってきます。

 握りになる長い方が160センチ前後、打撃につかう短い方が41センチ前後です。

 短梢子に比べてかなり大型になっていることが分かります。

 



 こちらは片手ではなく、両手で使います。

 そりゃあ、身長ほどの長さの棒を持つ訳ですから、片手で振り回すにしては大きすぎますね。



 両手で持っている事と、長さがある事で短梢子に比べて複雑な攻撃を繰り出す事ができる所に特徴があります。

 もちろん威力も短梢子より高いです。単純計算でも半径2メートルを超えるスイングを叩きこまれるわけですから、威力が低い訳はありません。



 長さがある事で、相手が馬上や段差の上などの高所だったとしても問題なく打ち据えることができます。

 打撃に使う短い棒が十分に加速されていれば、足の骨だって叩き折ることができるので、無力化させるには十分です。

 例え叩き込めなくても、短い棒を重りにして、鎖部分を足にからみつかせれば引きずり下ろす事もできます。



 握るための棒部分も160センチもありますから、これで直接叩くこともできます。

 この場合、尖端に繋がれている短い棒が勝手に追撃してくれるので、1人で2段攻撃となるわけですし、自分の方が相手よりも高い所にいるなら、重力をも加算したさらなる強攻撃をはなる事ができます。



 一撃防がれてしまっても、遅れて飛んでくる短い棒で叩かれる。

 短い棒を警戒していれば、長い棒で直接殴られたり突かれたりするわけです。

 さらに、短い棒と鎖で相手の武器を絡めとり、長い棒を反転させて短い棒が付いていない石突部分で殴打するという事も可能です。

 逆に、石突側で足を払って体制を崩した所へ、十分に加速した短い棒を叩き込む事もできますね。



 そもそも多節棍は棒術をベースにしていますから、こうしたどこの部分でも握る事ができて打撃に使えるという棒の特徴を最大限に活用した攻撃を放つことができます。

 ただでさえ1本の棒を変幻自在に扱う棒術に、紐で繋がれた棒が加算されているので、その動きを見切る事はさらに難しくなります。



 1人で2段攻撃をできるようにした上に、遠心力を味方に付けて破壊力を増強。

 長い棒その物を1本の棒として扱うことができる上に短い棒が付いているため、攻撃の選択肢が凄まじい広さを持つ。

 これが、長梢子という武器になります。


 

 言うまでもありませんが、複雑な扱い方ができる程、鍛錬は大変ですからね。

 しかも、手段が多いほど、咄嗟の時に使い方が混乱してしまうものです。

 十分な使い方の習熟と実戦の経験、この両方を兼ね備えるまでの道のりは遠く険しいものになっています。



◇◇◇



 中国の宋(960~1279年)の時代はこうした多節棍以外にも殴打のための武器や斧・剣・槍に加えて、飛び道具でもある弓や弩などが多数作られた時期でもあります。



 これまでに使われて来た武器も当然現役だったので、中国の武器が一気に発展し、人間が手に持って使う「武器」ではなく、固定して扱うカタパルトのような弩、巨大な石の弾を投げつける砲などの「兵器」も登場してきました。



 さらには火薬も投入されてくる時代だったため、試行錯誤して様々な武器を作って行きました。

 おそらく、戦場では「なんだあの武器!? 初めて見るぞ!」なんてことは日常の光景だったことでしょう。



 今回とりあげた短梢子と長梢子も、そんな混乱と試行錯誤の中で産まれて来た武器といえますね。

叩き割る!


 やっぱり遠心力という回転の力ってすごいのよ。

 この力があるからこそ、絡みつくという現象と、鎖や縄に繋がれたもう一本が時間差で打ち込まれる攻撃ができるんです。


 久しぶりの投稿になっておりますが、今後とも応援よろしくおねがいします!

 リクエストも時間かかるかもしれませんが、出来るだけ取り上げて書いていきます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヌンチャクって沖縄発祥だったんですね(゜Д゜)全然知りませんでした…
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