第138回 狼牙棒 トゲトゲトゲトゲ
狼牙棒
狼牙棒
以前に紹介した、袖溺に似ている武器です。
袖溺の元は中国から入ってきた武器とされている説が有力とされていますので、原点は狼牙棒だったのだとピーターは思っております。
棒の先端にラグビーボールをセットしたようなシルエットをしており、このラグビーボールに狼の牙を思わせる鋭い突起を大量にとりつけています。
モルゲンステルンやモーニングスターといったトゲトゲ鉄球を思わせる武器ですね。
使われていたのは中国、宋の時代、西暦で言うと960年~1279年の間とされています。
ですが、中国の歴史の中では狼牙棒を思わせる武器があり、出土品としても確認されているようです。
つまり、似たような武器は語り継ぐ人が居ない時代にも存在していたというわけです。恐るべき中国の歴史の深さですね。
今回はこの狼の牙に覆われた狼牙棒を見て行きましょう。
◇◇◇
~あらためて形状~
先ほども述べたように、トゲトゲのラグビーボールを頭にした棒です。
このトゲトゲにはいくつかバリエーションもあるようで、名前の通り牙のような弧を描いているものや、針のようなものなどもあるようです。
この頭の部分は40~60センチ程度だったようで、大きさも様々ですね。
長さは長兵器と短兵器の2種類あり、長兵器は全長170~190センチ程度、短兵器は全長100センチ程度になるように柄が取り付けられていました。
中にはこのトゲトゲの球体を、棒の上下に1個ずつ取り付けた物も存在しています。
双頭剣のような双頭狼牙棒ですね。これはぶっちゃけ使いにくいような……
これだけ様々な形状があるため、重量も0.5~3キログラム程度までかなり幅が広くなっていました。
短くて頭が小さく、棘が小さく少ない物は軽くなっています。長くて頭が大きく、棘が大きく多い物は重くなっています。
馬上など不安定な場所で戦う時には、短兵器の狼牙棒を装備していました。片手で扱う必要があり、振り回した時でも自分の体勢をコントロールしやすくするためですね。
歩兵など両手で狼牙棒を扱う事ができる兵士達は長兵器の狼牙棒を装備していました。十分な間合いをとりながら、敵が馬上に居ても戦う事ができるからですね。
◇◇◇
~使い方~
トゲトゲの鉄球が取り付けられている棒なので、扱い方はモルゲンステルンやモーニングスターと一緒です。
狼牙棒が使われていた宋の時代は、兵士達の防具が重装備になっていった時代でもあり、普通の剣や槍のような刃では効果的なダメージを与える事ができませんでした。
狼牙棒は鎧の上からでも強烈な打撃によって戦いの継続ができなくなる程のダメージを与える事ができました。
鋭い棘は鎧を貫いて致命傷を与える事もできました。例え致命傷にならなくても、打撃によってめりこまされた棘は複雑な裂傷を与えます。
馬上で振り下ろせば、高低差や馬のパワーも加算されますから、その傷はとても深い物になった事でしょう。
徒歩で使っていても、十分なスイングで叩き込めば遠心力が強い味方となるので威力は十分だったことでしょう。
狼牙棒を叩きこまれた敵兵は、複雑に刻まれた裂傷と肉の色が変わる程の衝撃を受けることになり、裂傷と打撲という2重のダメージのため戦場に復帰する事が難しくなります。
装甲をもろともせずダメージを与えるため、重装備の敵に対しては確実な武器という位置づけだった訳ですね。
また、長兵器の狼牙棒だと馬上などの高所にいる敵兵を引きずり降ろしたり、壁などの障害物の上に引っかけて足場にするなど、様々な使い方もすることが出来たようです。
こうした応用の幅が広い事も狼牙棒の特徴と言えるでしょう。
潰せ! 引き裂け!
なんか、似たような武器の解説が今後出てきそうな気がする。
というか、もうこの時点であっちこっちの武器に『そっくりやなぁ、形状も使い方も……』って思う物が出てきている……
こういう年代や地域が違うのに、使い方や形状がそっくりの物もあり。
年代や地域が繋がっていて、系列としてみれる物があり。
やっぱり、武器って面白い!