第137回 塞門刀車(さいもんとうしゃ) とおせんぼ
塞門刀車
中国の防衛兵器の1種がこの塞門刀車です。
定型化されているという訳ではなく、色々なタイプがあり、ヤル気みなぎる攻撃的な物から縁起物や細工物みたいな物まで本当に様々です。
インターネットで検索すると、台車に棚状に木を組み、木製の大きな棘を沢山取り付けたタイプがヒットしてきますね。
実はサイズも小さめの物から大き目の物まで様々なんですが、このサイズにも理由があります。
今回はこのあんまり馴染みの無い、防衛戦専用の武器というか兵器にもなる『塞門刀車』を見て行きましょう。
◇◇◇
~形状と使い方~
塞門刀車は木製の2輪車です。
時代劇でちょこちょこ登場している『大八車』とか、自転車やバイクの後ろで引っ張っている事もある『リヤカー』とか、牛が引っ張る荷物運びの『牛車』などが近い形状ですね。
これらの荷物運びの台車の上に、木を棚状に組み上げたり、分厚い板を壁のように固定したり、虎の置物の口から槍を飛び出した物を配置したりします。
そして、この車を引くのではなく押して使います。
塞門刀車の幅は城内の通路や城門の幅にピッタリと合うように設計されています。
城門が突破されたり、城内の通路に敵軍が侵入してきた時が塞門刀車の出番となります。
防御側の兵士達は、通路の幅ピッタリの棘の壁になっている塞門刀車を全力で押して通路を駆け抜けるのです。
つまり攻撃方法は体当たり1択です!
当然攻撃側の兵士達にとっては、通ってきた道を戻るか、トゲトゲの塞門刀車に跳ね飛ばされるかの2択を迫られる訳です。
右か左に避けようと思っても、そこは右も左も壁か城門の木枠になっている訳ですから逃げようがありませんね。
命惜しさに来た道を全力で逃げる事になります。逃げないと塞門刀車に備え付けられた棘や槍にグッサリか、車輪に潰されてしまいますからね。
防御側の兵士は逃げる敵兵を追いかけるようにして、塞門刀車を全力で押して行きます。勢いが弱いと敵が逃げてくれませんから、命がけで押していきます。
そして、突破された城門や破られた壁に塞門刀車を押し付けて固定します。
あら不思議、城内に押し入ってきた敵兵は外に追い出され、破壊されたはずの防衛設備が塞門刀車に変わって復帰しているではありませんか!
これが塞門刀車に色々な大きさがある理由です。
通路や城門より小さければ敵兵が避ける隙間になってしまいますし、大きければそもそも通路を通る事ができません。
その防衛する場所にピッタリのサイズをオーダーメイドしておかないと、効果が発揮されないですからね。
塞門刀車に備え付けられている棚状の木組みや、壁のような板にはほどほどにスペースが開いていますので、そこから槍を突き出したり、矢を放ったりする攻撃をする事ができるようになっています。
道を塞いでも、攻撃できなければ結局の所破壊されてしまいますからね。防衛専用の武器でありながらも攻撃の要にもなるように設計されています。
◇◇◇
使われる時は城門や城壁を破壊されるというかなり劣勢な状況になっているので、実戦で使われたという記録はあまり残ってはいません。
使われる頃には敗戦濃厚ですから、最後の抵抗のアイテムだったのかもしれません。
当然、中には荷物運びのための台車を活用して即席のバリケードのように塞門刀車を作成して使用した実例もあったはずです。
城門は基本的に木で作られており、そもそも人が通行することを前提としているため、城の城壁と比べると強度が低く、突破された場合に一気に敵兵が入ってくる最大の弱点となっていました。
その弱点を少しでもカバーするためのアイテムがこの塞門刀車だったという訳です。
前述した虎の置物の口から槍を生やしたような物は、街中の道を封鎖するときなどにも使われたりしていたようです。
イベントの時などに道を封鎖するなら、無骨な物としてではなくユーモラスな物の方がよかったのかもしれませんね。
なんにせよ、左右に逃げ場のない状態で、全面に棘や槍を備えた車が突っ込んでくるという武器ですから。恐ろしい事に変わりありません。
体験してみたい方は右左に逃げ場のない路地で、大型バイクに追われてみるとかどうでしょう?
塞門刀車に追われる兵士達の気分を味わう事ができるかもしれません。
あ、実際にやったら危ないですからね。
やっぱり体験はしない方がいいですね。
通さん!
創作によくある遺跡の狭い上り坂で、大きな岩が転がってくるっていう描写を思い出す武器ですね。