第131回 長巻 薙刀じゃないですよ刀です
長巻
長巻拵え
長巻野太刀
ゲームなどにもたまーに登場するのがこの長巻です。
日本刀の柄の部分を長くしたものとか、薙刀の一種とされていることもあったりしますが、カテゴリーとしては「刀」として分類されています。
発展は刃の部分だけで90センチを超え、全長で1メートルを優に超える大太刀を扱いやすくするために、握りとなる部分を長くしたことが長巻の始まりです。
如何に体が大きく、力自慢の人間ともいえども、1メートルを超える大太刀を丸一日振り回していては疲労して動きに精彩を欠いてしまいます。
また、大太刀専門に技術を磨いてきた人間ばかりではありませんから、熟達者には疲労軽減のため、修行中の人間にとっては扱いやすさのため、段々と握りの部分を長くした大太刀が開発されるようになりました。
長くなった握りには太い糸や革紐を巻き付けて手が滑ったりすることが無いように加工されていきました。
握りを「長く」して糸や紐を「巻き付け」た太刀が登場してきました。
さらに後の時代になってくると、最初から太刀の刀身に長い柄を取り付けて革紐などを巻き付けて仕上げた武器が登場してきました。
これが今回とりあげる長巻です。
◇◇◇
~長巻って?~
長巻は小柄な人や、太刀の扱いに慣れていない人でも威力が大きい攻撃に加えて、振り下ろしばかりではなく、突く・払うなどの様々な扱いが出来る武器でした。
様々な武器の扱いになれた人物でも他の武器に劣るということはなかったため、初心者~上級者まで扱えるため広く普及していくことになりました。
全長、2メートル前後、刃渡り1メートル前後、重量5~7キログラム。
日本風に言うならば、柄3尺ないし4尺、刀身3尺前後、野太刀より幅は広い。
槍より間合いに劣るが、取り回しに優れる。
といったところでしょうか。
どう考えても両手持ちの武器ですし、薙刀の1種とされることも納得です。
中には大長巻などと呼ばれるさらに大きな物まで存在しているようですが……
長巻の時点で十分デカいので、扱いにくくなっているような気しかしませんね。
まぁ『槍に慣れぬ者には長巻を持たせよ』などと言われ、長巻は威力と扱いやすさのバランスがよい武器だった事が伺えます。
たしかに、槍は集団で使ってなんぼですし、一糸乱れぬ呼吸と連携があってこそ本領を発揮します。
長巻なら1本あれば、構えて控えさせているだけでも威圧の効果にもなり、敵兵に無理やり攻めるようなこともさせません。
柄の部分の作りには様々あり、木そのままになっている物、革を巻き付けある物、木の柄に金属を巻き付けてその上から革を巻き付けてある物などなど、本当に様々なタイプが存在しています。
無理矢理や捨て身の覚悟で敵兵がすり抜けてきたりしても、長巻を持って控えていれば、簡単に対処できますね。
相手が刀を抜いたなら間合いに優れる長巻が有利ですし、薙刀であれば、長巻の持ち方で間合いが互角どころか突き攻撃も得意とする分長巻が有利です。
有名な武将達も長巻を使う部隊をわざわざ編制していたり、槍などの部隊の周辺に長巻を持つ兵を配置するなど、隙を埋めるように長巻を活用していました
中には大将の馬廻として、長巻を持った兵を配置したりしました。
重さと刃の切れ味を活かして、文字通り人体を真っ二つにする事も達人であれば可能なほどの威力を生み出します。
それほど熟達していない人物が扱っても、腕一本を切り落とすほどだったそう。
多少へっぴり腰になってもこんな威力に繋がるってことですね。
こわいわぁ……
室内や陣地内の比較的狭い場所でも槍などと違い振り回せる長さである事、立てて持つようにして控えており、時に構える時にはその大きさから威圧する効果が高い事。
有名で力を持っていた武将でも長巻を扱っていたため、見せるだけでも効果は高かったことでしょう。
こうした武将の周辺に控えるポジションでも長巻が採用されていたので、近衛兵や親衛隊とも言えるエースクラスでも長巻は信用に値する武器だったと言う事ですね。
薙刀が重心を全体の中心に置いてバランスをとったという武器である事に対して、長巻は刃の部分に重心が置かれています。
◇◇◇
~平和な時代の長巻~
さらに時代は進み、江戸時代という平和の時代となると、長巻はその特徴とも言える長い柄を短く作り直すようになりました。
これは、個人で3尺を越える刀の所有が禁じられたため、打刀や太刀として長巻は作り直し・打ち直しされるようになったという訳です。
ここにも、時代によって武器が作り直されるという現象を見る事ができますね。
こうして作られら物は長巻直しと呼ばれ、個人の所有ばかりか、時には神社に奉納されることもありました。
さらには少数ですが「長巻直し造り」として、新しく作った刀剣にも関わらず、長巻を打ち直して作ったように見せた刀まで登場してきています。
それだけ長巻の威力が語り継がれていたという事です。
作者のピーターは資料や写真でしか、長巻を知りません。
ぜひ、実物を見てみたいですね。
両断!!
重さと切れ味が両立するばかりか、柄が長い事による力のかけやすさ、エゲツネェ……
中国の戦争で使っていた武器などのリクエスト頂いております。
まず、資料の読み込みをしている所ですので、気長にお待ちいただけると幸いです。