第125回 プッシュ・ナイフ グリップが特徴的
意外と資料が少ないのよね
プッシュ・ナイフ
プッシュ・ダガー
ブッシュじゃないですよ「プ」です。
コルク抜きのようにナイフの刀身の根元にグリップとなる横棒が通っているナイフです。
『T』のようなシルエットになります。縦棒がナイフ部分、横棒がグリップ部分になります。
この横棒を握ると指の間からナイフが出ている状態になります。
パンチを撃つ要領で対象に差し込んだり、刺してからねじるといった強力な攻撃を繰り出す事ができるナイフです。
殴りつけるように使う、ジャマダハルのようなパンチングソードと対比させられたりしますが、明らかに大きさに違いがあります。
全長でも中指の長さ程度になっており、大き目の物でも全長は10センチ程度。
刃の形は指で握り込む部分は細く、その先に横幅3センチ程度のダイヤやスペードを思わせるような刃がついています。
両刃になっていると銃刀法に思いっきり引っかかってしまいますから、市販されている物の大半は疑似刃にしてあったり、鋸のような形状に仕上げたりしてあります。
短いけれど、太い刃、グリップ部分もそれほど大きくなければ太めのベルト程度の幅の場所に隠す事ができますね。
今回はこの独特なナイフを見て行きましょう。
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~発祥~
一説によると中世に鎧の隙間をつらぬけるように作られたとされていました。
鎧を着こんだ敵兵を転ばせて、押さえつけた所にとどめを刺すために携帯されていたと言いますが……
これ「スティレット」だと思うので、わざわざグリップの向きを変えたナイフを作ったとは考えにくいと思う筆者ピーターです。
それに、プッシュダガーの刃は短いので、鎧の隙間に差し込んでも肉体への重症・致命傷にまでは至りません。
鎧通しのように使うには向かないということですね。
ピーターとしては19世紀のアメリカに発祥があるという説を推しています。
銃器が発展して、重装備の鎧が廃れた後の話。暴発などの危険がない小型拳銃が発展するまでの間、自衛の武器としてナイフ等を携帯する事があった時代。
大きな銃や、明らかな刃物を身に着けてプラプラ歩くなんて危険極まりないですよね。
この時代にプッシュ・ナイフが登場したという説です。
上着の中にナイフを入れたりする事もできたでしょうけれど、ベルトや靴などの普段は武器が入っていないような所にも隠せるナイフとして、プッシュ・ナイフの原型が登場してきました。
中にはチョッキの端に引っかけるようにしてぶら下げる事ができるタイプもあったほど、堂々と持ち歩いている人もいたようです。
プッシュ・ナイフに限らず、この頃に発生した犯罪・事件には刃物が使われて怪我人が多発、重症化する傾向があったため、まとめて規制されてしまいました。
さらには携帯可能で暴発などの危険がすくない小型拳銃の登場で一気に駆逐されていったという訳です。
◇
~威力~
後、第1次世界大戦をはじめとした大規模な戦争の中ではこうした押し付けたり、殴りつけたりするようなナイフが使われるケースがありました。
狭い場所で扱う事ができる武器として、時に現場にある物資を組み合わせてサーベルの柄のようなパーツをグリップにして、尖っていて長い金属を取り付けたプッシュ・ナイフ状の武器を即席で作っていました。
振りかぶるような動きは必要なく、口を押えて、差し込めば声も出させません。
後にアルミのグリップを持ち、光の反射をしないように黒い塗装でツヤを消したモデルが製造されるようになり、パンチナイフと呼ばれました。
長い物では13センチにもなる刃を持っており、突き込まれでもしようものなら簡単に致命傷に至ってしまう恐ろしい武器になりました。
街中で使われていたような、小さなナイフでも殴りつけるようにして押し込む訳ですから、見た目以上の威力を誇っています。
グリップの形状の都合もあり、刺したあとにひねるときにも力が十分に伝わりますからね。
現在でも販売されているプッシュ・ダガーは小さい刃でありながらも、握り込む事でしっかりと刃をホールドできますから、見た目以上の切れ味と安定した使い心地があります。
ロープ程度の太さの紐を切ったり、段ボールなどを止めているテープのカットどころか段ボールその物の切断。
紙類のゴミを出すときには便利に活躍しそうですね。
他にも、魚を締めてさばいたりすることもできるようです。
もちろん、尖端で穴をあけたり、木片のバリを取ったりするにも使えますし、刃が比較的丈夫なので隙間に差し込んでひねってこじ開けたりなど発想次第では日曜大工にも活用できます。
刃渡り数センチなので、ポケットにスッと入りますし。
タイプによってはグリップ部分にリングが通してあるので、ストラップのように身に着けておきますから持ち運びも簡単です。
くれぐれも抜き身でプラプラさせてたらいけませんよ。
ちょっと欲しいけど、一般的な通販サイトでは見当たらない……
3000円くらいから販売されているみたいなので、個人ショップにオーダーメイドかなぁ。
どこからでもナイフ!
ベルト、ポケット、靴などどこでも隠せます。
やろうと思えば、帽子やパンツ、リュックと背中の間など隠す場所に加えて、ストラップやアクセサリー、チャームみたいに堂々と。
暗器や隠し武器の要素も備えております。