第122回 モルゲンステルン 聖水を撒く?
メイスってえげつないんですよ。
今回のはエグイ武器です。
モルゲンステルン
モーニングスター
星球武器
聖水を撒く棒
ホーリー・ウォーター・スプリンクラー
モルゲンステルンはドイツで生まれた武器であり、柄頭に棘がついたメイスです。
モーニングスターの原型ともなった武器ですが、これをモーニングスターと言ったりすることもあります。
ええい! ややこしい!
後にメイスやフレイルの形に進化していくだけにとどまらず、宗教的な儀式で聖水を撒くために使われていた、尖端の穴の開いた球体のパーツや、いくつもの筆をとりつけて刷毛のように仕上げている棒がモルゲンステルンの形状に似ていたことからも通称や俗称が付けられています。
ええい! ややこしい!
モルゲンステルンはドイツ語、モーニングスターは英語のため、棘付き鉄球に「明けの明星」という用語も持ってきた言い方なので、正確にはモルゲンステルン=モーニングスターのため、フレイルタイプは亜種や発展がたともいえるでしょう。
ほんっとに! ややこしい!!
ピーターとしては棘付きメイスはモルゲンステルン、棘付き鉄球の殻物がついたフレイルはモーニングスターだと思っています。聖水を撒く棒は言葉遊び的な呼び方だと思います。
諸説ありますし、所説もありますから、強制するつもりはありませんが、ピーターの認識はこうなっていますからね。
今回は聖水とかの別名を持ちながらも、慈悲のかけらも感じない危険なモルゲンステルンを見て行きましょう。
◇
名前のモルゲンステルンというどことなく重厚さを感じさせてくれる名前はドイツ語ならではという印象ですね。
騎士や兵士達に好まれた武器として知られており、フルプレート対策というだけでなく、見た目の威圧する効果や、比較的短いため持ち運びがしやすい特徴もありますね。
長さ50~80センチ、重さ2~2.5キログラム
13~17世紀にかけて使われていましたが、1900年代の世界大戦中などでも登場していたという記録も残っているそうです。
柄頭の形状で一番の定番は鉄球に棘がついたものでしたが、こればかりではありません。
円柱状の柄頭に規則正しく鉄の棘が付けられている物、まっすぐな柄の先端部分に棘が付いた鉄の輪がはめられている物、薄い鉄板を刃に見立てて先端をグルリと取り囲むように並べた物。
他にも釘バット状の物や、栗のイガのような物など様々な形状をしていました。
ホーリー・ウォーター・スプリンクラーという名前は冒頭でも述べた、全体の形状が聖水を撒くための棒に似ているという理由の他にもう一つあります。
ブラックユーモアというか、侮蔑するような理由なのですが……
モルゲンステルンを叩きつけると当然ですが、相手の体が鉄球で潰されて棘が刺さります。
こうしたグロテスクな攻撃方法になるため、嫌でも血液や体液が辺りに飛び散るということになります。
儀式として聖水を撒いたかのように、敵兵の流血が辺りにまき散らされる様を「血液・撒き(スプリンクラー)」と言ったという訳です。
なんと恐ろしい呼び方をされていたのでしょう。
それだけ威力が高かったとも言い換えられるのかもしれません。恐ろしい威力があるからこそ、こうした名前がついた訳ですね。
人間ためらいもなく人間を叩き潰すということはできません、これを実行するためには「殺らなきゃ、殺される」「ここで引いたら家族・友人が殺される」といった切羽詰まった極限状態。
もしくは「相手は人間ではない」として認識すること、このような洗脳状態が必要になります。
こんな鼓舞でもされていたのでしょうか?
『やつらは人間ではない、悪魔を崇拝する異教徒である! このままでは我らの父母は殺され、妻と娘はさらわれ、男は奴隷となるだろう! 奴らを我らの武器で浄化し、その血を聖水として奴らの魂を天へと送ろう!』
みたいに、されたら敵国の人間は「人間の姿をした悪魔」と認識します。「やらなければ自分達の被害が大きくなる」と考え、害虫の群れを駆逐するかのごとく、ためらいも罪悪感も感じずにモルゲンステルンを振り下ろす事ができるようになります。
……なってしまうんです。
◇
昔から戦争とは恐ろしい物です。
善悪の概念も崩壊させられますし、後になって自分のしたことの罪悪感に悶え苦しむ事になります。
このモルゲンステルンの特徴の1つに物音がしにくいという特徴があります。相手が鎧を着こんでいるということが無ければ、軽く振り下ろすだけで大きな音もせずに相手に致命傷を与えることができます。
1900年代に使われていたのも、塹壕戦で敵兵の所へ飛び込んで戦うために使われていたとされています。
こうした世界大戦の後には戦争という極限状態を過ごした事で、日常生活にすら致命的な精神症状を引き起こすPTSDという症状を持ってしまう兵士が沢山でました。
当時はこのような精神的な症状については、心が弱いだけとか、情けない奴とされていましたが、後に戦争での悲惨な体験が心に大きな傷を残した精神的な症状であることが分かりました。
モルゲンステルンは敵を倒すという武器ですが、その倒し方は2度と目を覚ます事がないようにするという手段です。
正義の名の下にモルゲンステルンを振るい、自らの心を砕いた人も多く居たことでしょう。
潰れろぉ!
全力で振り下ろさずにはいられない極限状態。
酷い、本当に恐ろしい武器です。