第121回 モーニングスター 爽やかな名前なのに
モーニングスター
ボール・アンド・チェイン
前回挙げたヒッターよりもさらに古い時代の武器です。
厳密には、モーニングスターとボール・アンド・チェインは別の意味を持っているんですが、資料によっては同じカテゴリーとして扱われたりしています。
モーニングスターですが、これは皆知っていると言ってもいいほど有名な武器ですよね。
筆者ピーターはこの武器を知ったのは幼い事にプレイしていたゲームでした。
初めてこの武器の名前を見た時に「モーニング・スター=朝焼けの星」と読み、夜明けの明るい空でもなお明るく輝く星をイメージしました。
そこから、星のような飾りをついた魔法のステッキだと考えました。
魔法使いの装備に違いないと思い、ゲームの武器店で購入。
装備のメニューを開いて、魔法使いの装備欄に入れようとするのですが、表示されるのは「装備できません」という文字ばかり。
おかしいと思いまして、攻略本を手にとったところ、そこに書かれていたモーニングスターはですね。
ピーターのイメージしていた朝焼けの星という魔法のステッキではなく。
鉄の鈍くて重い輝きを放つ、星のように大量のトゲに包まれた、触れただけで死んでしまいそうな恐ろしい鉄球がそこにありました。
その鉄球は、これまた鈍い輝きを放つ、大きな鎖がついて鉄柱とも言える柄に繋がれていました。
魔法使いの装備ではなく、ゴリゴリの前衛に出る戦士やオークやトロールなどの大型モンスターが手にする武器だったという訳です。
今回はこの効果が証明されている棘付き鉄球、モーニングスターを見て行きましょう。
◇
戦場でのフレイル系統の武器は、身分の低い従者たちが何とか戦う事ができるようにするために作られており 、低予算でありながら高威力で鍛錬も比較的少なくて済むという武器でした。
ですが、騎士の重装備化により、プレートアーマーやそれを越える全身鎧のフルプレートアーマーの登場によって、より攻撃力を高める必要が出てきました。
より重く、より鋭く、より早く、それでいながら、攻撃時の衝撃を一点に集中させることで、分厚い鉄板に包まれた騎士という、人間を叩き潰す武器が考えられるようになったという訳です。
ボール・アンド・チェインはフレイルの打撃部位である殻物に球体を使用した物の総称です。
実際棘の無い鉄球が装着されている物もあったりするので、これは間違いない事です。
この鉄球の利点は攻撃時の衝撃が、衝突時に曲面の頂点の1点に集中するという点
そして、この球体に釘のような棘が付いていれば、鉄球で釘を打ち込むような破壊力を発生させる事ができるということです。
棘付き鉄球で殴られるという事は、自分が5寸釘を打ち込まれる藁人形になったも同然と言う事ですね。
こうした棘付き球体は13~14世紀頃にドイツで最初に登場してきたようです。
当時、ケッテンモルゲンステルンとよばれました。このモルゲンステルンはトゲトゲの柄頭を持つメイスのことを指していて、ケッテンとは鎖に繋がれたということを意味する単語になります。
棘付き球体を持つフレイルは、威力や見た目の恐ろしさなどが評価されて騎士たちの間に広まり、モーニングスターと呼ばれるようになりました。
実際にはモルゲンステルンという鎖に繋がれていない物もモーニングスターと呼ばれる事もあったようです。
ですが鎖付きのタイプのモーニングスターは50~80センチ程度の柄に50~80センチの鎖、直径10センチ程度の棘付き鉄球で構成されており。
重量は2~2.5キログラムに抑えられておりました。
ですがこれだけの重量を鎖を通した遠心力で振り下ろされたとすると、薪割りの斧の一撃のようなものです。
中身が詰まったスチール缶でもコーヒーのミニ缶でも叩き潰せる薪割り斧の一撃が、上から振り下ろされるばかりか、横なぎにも飛ばせるのがモーニングスターです。
しかも鎖で操作されるということは、バックラーなどの小盾でメイスの柄を押さえるようなブロック方法が通じません。
例え柄を押さえられても十分に加速された殻物は、相手の体にめり込んで大ダメージを与えてくれます。
◇
こうして、棘付き鉄球の威力の高さを十分に証明したモーニングスターは、後の世でも棘付きの鉄球。つまり星球の殻物は威力が高いと語り継がれ、それに見合った成果を出していきました。
長さも比較的小型だったため、馬上などの扱いにくい場所でも使う事ができるばかりか、周辺に障害物が多い施設の中や林の中でも十分に振り回しながら戦う事もできたはずです。
銃の登場でフルプレートアーマーが登場するよりも前から、重量や扱い方の習得などの様々な理由から廃れて行き、銃の登場でその姿を消しました。
ですが、この星型鉄球の威力の高さには疑いも間違いありません。
確かに、現実世界でも鉄板を凹ませるには超重量のハンマーを使ったり、2階から漬物石を勢いよく投げ落としたりすれば可能ですが、鉄板を貫くとなるとそうそう簡単にはできません。
モーニングスターはこの鉄板に穴をあけられる、とんでもない武器ということができるでしょう。
現実でも、建物の解体に巨大な金属球がハンマーとして用いられていますね。
球体をスイングして使うということが高威力になるという事が活用されています。
無骨!
鎖付き鉄球の中でも連続で攻撃が繰り出せます。
柄や鎖が長すぎると、これができないんだ。