第11回 双剣 1つの鞘に2本の刃 神速の連撃
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双剣 (そうけん)
中国で発達した2刀流の剣。普通2刀流は欠点の方が多く、発展する事が少ない少数派の剣でした。
それが中国では2刀を扱うという技術が発展して、それが受け継がれていきました。
当然、使う剣も片手に1本ずつ持つ事を前提として進化したものがあります。
創作のロマン武器も含めるとなんと3種類も存在しています。
1つはロマンあふれまくるアイテムなので、実際には2種類。王道はタイトルにもある1つの鞘に2本の刃が収められている剣です。
資料として、中国の双剣の演武を見たけど、めちゃくちゃ動きが早い。
中国拳法も動きが早いけど、あれは体の使い方とかから複雑な連撃を撃ち込んでくるから、それに通ずる物を感じました。
手の前でひゅんひゅんと振っているのも、同じように振っているわけではないようで、相手の攻撃をいなしたり、わざと避けさせて体勢を崩させたりなど一発一発に意味がありそう。
実に複雑に組み立てられている型ですね。
この早い動きを可能にしているのは剣の形状、刃の部分を薄く、軽くし、柄を重くする事で切っ先を早く複雑に操作する事が出来ています。
あの豪華な柄の形状は手元を重くするという実用的な意味があるようです。
薄い刃が早く飛んでくる、1度当たればざっくり切れる、そんな斬撃が雨のごとく襲い掛かる。
恐ろしい、恐ろしい。
◇
形状説明ですが、まずは王道から行きましょう。
『太極拳 双剣』とネットで検索すると出てきます。1本の鞘に2本の剣が映っている写真が沢山ありますね。
これは剣の柄部分が一方は通常の剣のように鍔があり握りがありますが、反対の面は平らになっています。
これが2本合わさって入っているので、納刀してあるときはパッと見て1本の剣になります。
イメージしやすい画像を探したら『連刃刀』で検索するとヒットしますね。
これは1本の剣として作られていてツインブレードともいわれますが、1つの鍔から2本の刃が並んで伸びています。
この剣の間の空間が無く2本が1本に見えるほど、2本の剣がくっついている状態で納刀され、抜刀しても1本に見えるほど重なっている状態になっています。
ツインブレードは2刃1刀ですが、双剣は2刃2刀です。
実践では、この剣を抜いて相手には1本の通常の剣を持っているように見せます。相手に切りかかる時に2本に分けて連撃につなげられます。
相手にしてみれば、いきなり剣が増えたわけですから、意表を突かれて上手く反応できません。
かろうじて1本を避けても2本目が襲ってきます。そこから、演武でも見せるような斬撃の雨が降ります。
さらに、実践で使う2刀の刃は切っ先は鋭く突きに向き、剣の中間は少し幅が広く斬撃に向き、柄に近ければ太くて攻撃のいなしに向いているそうです。
使い方が複雑すぎると言えますが、使いこなせば恐ろしい存在です。
単純に考えても、2本の剣で左右2択と上下左右斜めと突きがあり、1手目で18種類と2手目では18×18種類。
つまり2手で324種類もの攻撃のパターンが存在します。
これが連撃ですから、受け身に回った瞬間が敗北に繋がります。
相手の意表を付けるだけでなく、2刀という利点を最大限に活用していますね。
武器数が増えると持ち運びに困難が生じるので、この1つの鞘にしまえるというのは、かなり大切なことです。
その点を非常にうまく抑えている剣と言えます。
◇
次の形状は日本では青龍刀と呼ばれている刀の形状になります。
これは間違いで正しくは柳葉刀となります。
しかも、厳密に言うとこれも正解ではないようで、中国の剣の種類や使い方、歴史などはめちゃくちゃ複雑で絡み合って、まざりあっています。
中国武具の資料を買ったら少しずつ読み解いていきますが、、、
そもそも体系化が不可能とも言われているらしい。
少数民族に伝わっている武器も地域ごとでルーツが違ったり、大きな国に取り込まれるなかで文化や技術に変化があったりして、簡単には分からない世界を作っています。
中国恐るべしです。
さて、二刀流にもできる柳葉刀ですが、剃りのある中国の刀です。
青龍刀の名前の時点で大体の方が形状をイメージできたと思います。
この柳葉刀、重そうに見えますが、2刀で使う物の場合、とても軽く500グラム程度しかない物もあるそうです。
そして、素早く使うために手元のほうが重くなっているので、実際の刀身はメッチャ薄いことは間違いありません。
これだけ薄いとなると、やはり早く振れるので、骨は切れなくとも皮膚と肉までは十分にスッパリやられてしまいます。
達人になると骨まで切れるそうですが、なんで切れるんだよ、、、
技術で色んな不可能を乗り越えるのも中国のすごさですね。
演武で使う時は1本が多いようですが、2本使っている動画も公開されています。
興味のある方は見てみるといいかもしれません、とにかく剣劇が早い早い。時々上半身をそらせたり、飛び上がったりするのは相手の足元狙いの攻撃をよけたりするための動作だと思います。
先ほどの剣もそうですが、大きくないので長物は苦手でしょうが、距離を詰めればそんなことは関係ありません。
室内での戦いなどであれば、大きく振りかぶる必要がないので有用だったと思います。
1本でパリィできれば、もう1本が確実にヒットします。中国流の俊足の連撃があってこそ成立しています。
干将莫耶と言われる双剣がこの形に比較的近いですね。
でもこれも、事実とは違ってまた違う種類の刀かもしれません。
本当に中国の武器は扱う技術とも相まって奥が深い。
◇
ここからは完全にロマン武器です。
おまけと思ってください。実用性は皆無ですが、みんな絶対好きなはず。
名称は『双頭剣』と言います。
2本の剣が合わさり、持ち手から上下に刀身が伸びている。もしくは片刃の剣が上下に合わさっている。
持ち手の部分を両手で持って、回転させるようにして斬撃を与えていく武器です。
ゲームなどでは恐ろしいスピードでの回転を加えた斬撃を連続して放つ武器として存在しています。
これは、悲しいことに欠点しかありません。
持ち運びにくい、1刀に比べて重さは倍で間合いは半分よくて同じ、鍔競り合いで片方の刃を押されれば自滅、回転させるための動きが大きく避けられる。
切ってだめならと突いてみても攻撃に力が入らない、次の攻撃は剣を回すか、自分が剣ごと回転しながら使うため疲労が激しい、回すの失敗したら自滅する。
かっこよく投げるシーンもありますが、投げたら帰ってきません。
さらに重い上に大きく振れないので、1本の剣を投げるよりも飛びません。
そもそも、戦闘中に武器を投げるとは自殺行為か降伏の証です。
2刀に分けて使う細工になっている物もあるようですが、それだと合体させている時、2刀流にしている時の両方の鍛錬が必要となってきますね。
練習量も倍どころか、左右反転も入れると4倍の鍛錬が必要になります。
魔法とかスキルとかのファンタジー補正がかからないと、使えません。
やってみたくて、長めの棒の真ん中を持って振り回したら、まあ自分の体を叩く事叩く事。
そして、ものすごい勢いで目が回り、ものすごく疲れます。
スポーツチャンバラとかで平和に使って負けてあげるのがいいかもですね。
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中国では、雌雄や陰陽など2つの相対する物という考えというか、概念という物があります。
それがこの双剣という存在にも影響しているように書いていくうちに感じてきました。
最初にあげた1つの鞘に2本の刃は本当に完成された武器です。
重量、形状、持ち運び、これらの要素を押さえた上で、それを扱う技術、中国の歴史で磨きに磨かれた存在と言えます。
世界でも2刀を使うという事をこれだけ発展させた存在は他にないかもしれません。
リアルに実践的な2刀流が存在!
形状は直刀に近いのですが、長さや重さの詳細資料が手元になく、調べても確信には至りませんでした。おそるべし中国の層の厚さです。
直刀は長さ80~130㎝ 重さ500~1000グラム程度です。
片手で扱うため、この中でも一番小さい 長さ80㎝ 重さ500グラム程度だったと推察しています。
まだまだ勉強!




