第113回 ショーテル 世界でも類をみない曲刀
ゲームとかで有名っすよね。
独特な形状は絵にもなる。
ショーテル
ショテル
エチオピアでの伝統的な刀剣。
17世紀から使われていると資料によっては書かれていますが、もっと前からあったのではないかと思っています。
非常に強い湾曲を持っており、円盤状の小さい鍔から両刃の刃が伸びるのですが、これが三日月よりも深く湾曲しています。
リングの一部を切り落としたような深い深い湾曲で、真正面に構えても切っ先が柄の直線状には無いほどです。
全体を見てみると極端なS字状、平仮名の「ら」のような形状にも見えるほどです。
あまりにも強い湾曲のため鞘がなく、腰に吊るしたりベルトに止めたりして装備して持ち運ぶ事になります。
鞘の代わりに革で作られたケースのようなものがありますね。確かに刃がむき出しでは持ち歩く時に自分がズッタズタになってしまいます。
全長は1メートル程度、重さは1.5キログラム程度なのですが、あまりにも強い湾曲のため非常に大きく見えます。
刃は両刃で外側でも内側でも切る事ができます。先端にかぎ爪状の細工がされている物もあり、相手を引っかけるという扱い方もできます。
あまりにも独特な形状なので、様々な作品で取り上げられており、魔法的なサムシング・異能的なロマンシングが追加されています。
中には巨大なロボットが手にしていたり、モンスターの腕に仕込まれていたりと色々な演出で使われています。スマホで楽しめるソーシャルゲームにもこのショーテルを手に持ったキャラクターが沢山います。
今回はこの伝統的で、一度見たら忘れられないショーテルを見て行きましょう。
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~使い方~
ショーテルほどの深い湾を持つ刀剣は他にありません。
ここまでの形状となると、専用の扱い方が必要になってきます。
一番有名な物は盾を避けて相手を直接攻撃する方法ですね。
ショーテルのようなS字状というか、弧を深く描く刀剣をひっくるめて「シックルソード」と言ったりします。
その中でもショーテルほどの深さを持っていると、相手が構えている盾の横や上から相手の頭や腹部などを攻撃する事ができます。
通常のまっすぐな刀剣では正面に突き出された盾の側面に引っ掛かり、相手に刃が届かないのですが、ショーテルであれば盾を湾に入れる事によって切っ先が相手に刺さります。
また、例え切っ先が相手に届かなかったとしても、ねじるようにして振る事で、外側の刃で攻撃する事も、内側の刃で相手の盾を持つ手を切りつける事もできます。
こうした弧を描く武器は刃との接地面が限定されるので、少しの力でも高い切れ味を発揮できます。
外側の刃を押し付けるように斬りつける事もできるし、内側でかき切ることもできます。
かき切るとなると、剣を引っかけるようにしてから、引くという2手かかりますから、斬撃の場合は外側の刃を使う事が多そうです。
先端にかぎ爪状の細工がある物は、相手が騎馬だったとしてもその足などに引っかける事で引きずり落とすことも可能です。
比較的短い剣なので、かなりの距離にまで接近しなければなりませんが、尖端を突き刺す事ができるというショーテルの特性ならではですね。
歩兵にも関わらず、騎兵や盾兵を倒せるという刀剣というのはそれだけ強力ということです。
本来、接近戦の剣では騎兵や盾兵は攻略できないもんなんです。
とはいえ、重心の位置が通常の刀剣とは大きく異なり、持ち方や振り方でも特殊な技術が必要になります。
普通に扱っていては振った方向へ体が流れてしまったり、地面などに切っ先を引っかけてしまったりと自身を弱体化させることにも繋がってしまいます。
扱いを習得するまでの徹底した訓練が必要というわけです。
また、独特で特徴的な形状のため、離れた所からでもショーテルを装備していることがまるわかりになります。
気付かれてしまいやすいという点はショーテルの欠点の1つかもしれません。
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曲刀のシャムシールやタルワールとも混同されることがありますが、ショーテルはまた別の刀剣です。
ですが、地域的に言ってもシャムシールなどとは触れる可能性が十分にあった地域です。
扱いやすさを考えれば、シャムシールなどにとって変わられることも有り得るのに、ショーテルとこれを扱う技術が受け継がれていきました。
もちろん、片刃のサーベル状の別の刀剣も存在して実用化されていました。
身分が高い人々が持つショーテルは刀身に彫刻が施されたり、柄が象牙になっていたりと特別な形になっていたことが分かっています。
ショーテルの強さに加えて、文化的な側面が強くあったということが、他の刀剣に流されずに受け継がれる事ができた要因だったのだと思います。
超曲刀!
私も初めて見たのはゲームでした。
盾を避けるってどういう事!? と戸惑った記憶がありますが、確かにこれだけ深い湾をもっていれば盾に引っ掛からずに切り付けられますよね。
『防御無視』という特性に納得です。