第110回 喧嘩煙管 要するに鉄パイプ
喧嘩煙管
江戸時代、腰に刀を差して歩く帯刀について規制がかけられていった時代。
傾奇者と呼ばれるような柄の悪い奴らが護身用として持っていたことで有名。
元々煙管は鉄などの金属で作られたパーツが多く、3つに分けることができるようになっています。
煙草を詰めて火をつける「雁首」
口に咥える部分の「吸口」
雁首から吸口に煙草の煙を送る「羅宇」
以上の3つで煙管はできています。
雁首と吸口は金属で出来ている事が一般的だったのですが、羅宇は竹が使われる事が多く、高級品では黒檀などの樹木が用いられていました。
芸者さんなどは位が上がると帯をより広い物を身に着けるようになり、それに伴って帯に差している事もある煙管の羅宇部分を長くしていったそうです。
結果として、雁首から吸口までがとっても長くなった「長煙管」の姿になったわけですね。
本当は煙管というだけでも途轍もない種類になり、中にはきめ細かい彫刻を施されている物もあったりします。
煙管だけでなく、煙草を入れておいたり、灰を落とす容器、お手入れのための道具などをそろえておく煙草盆という容器なども嗜むためには必要です。
お出かけするときには煙草と煙管をセットにして、火をつけられる道具まで入れた巾着のような入れ物まであります。
そんな大事な煙管ですから、喧嘩に使うなんてもってのほか。
羅宇の部分が植物性なら一撃いれるだけで煙管のパーツはバラバラです。
これを殴ったり、相手の武器と打ち合っても大丈夫なように全てを金属で作り、武器として扱えるように長煙管のような長さを持たせた物が喧嘩煙管です。
喧嘩煙管はいくつか種類がありますが、鉄の筒で雁首・羅宇・吸口が一体型になっている物が多くありました。
長さも全長40~50センチメートルと短刀程度の長さになっていました。喧嘩の武器として使う分には長さは十分ですね。
重さは、実際に煙草を吸えるかどうかによっても違ってきます。
中を鉄で埋めてしまい、煙管の形をした鉄柱になっている物と、煙草を吸える筒状にした物では大きく重さが違ってきますね。
実際に今でも真鍮で作られた喧嘩煙管が販売されています。これは150グラム程度で、本当に煙草が吸えますが、雁首部分は非常に熱くなる事が予想されますので、注意しましょう。
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~扱い方~
喧嘩煙管の形状によって多少の変化はありますが、基本的には打ち据えるように使います。
吸口部分を手に持てば、雁首部分の先端に重さが集中しますね。
雁首の背中の部分で叩けばハンマーのように、雁首の先端で叩けば狭い範囲に威力が集中します。
勢いによっては皮膚も裂けるほどになるでしょうし、思いっきり振り抜いてやれば骨にヒビが入ってもおかしくありません。
また、雁首部分を相手の武器に引っかけるようにすれば、例え相手が刃物を持っていたとしても弾き飛ばす事も可能です。
さらには、足などを引っかけて転ばせるなんてことも出来そうですね。
逆に雁首部分に手をかければ、手元の方が重くなりますから威力は下がりますが素早く扱えるようになります。
さらに雁首部分が手にひっかかっていることで、滑って手からすっぽ抜ける事を予防できます。
敵に怪我を負わせるというよりも、痛みを与えて威圧する、脅しをかけるという時にも有効そうです。
脅すなら、煙草に火をつけて、ひと口ふた口吸い込んで、紫煙を燻らせてから先端のあっつあつになった金属を押し付けてやるとか。
余裕を持って含んだ煙を吐きかけてやるなんて、絵に書いたような悪党の脅し方もできますね。
余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)でこういう危なっかしい事をするって態度は結構怖い物です。優越感も味わえるという特典もついてきます。
あんまりやりませんけど、喧嘩になった時の先制打として投げつけてやるとかも出来そうです。
要するに細めの鉄パイプですからね、思いっきり投げつけて頭にでも当たれば痛みでしばらくうずくまってしまうほどにもなります。
こんなふうに危険な使い方は沢山ありますから、喧嘩煙管を取り出したら、手でもてあそびながら余裕のある態度を見せて、堂々とした動きで火をつけてですね。
恰好付けて吸ってから、絵になるポーズでも決めて、啖呵の1つも切ってみせるのが、粋な使い方ってもんでしょう。
かぶいてみせよう!
普通の煙管でぶっ叩いたら折れるからね
煙管って憧れのアイテムの一つですから、そんなもったいない使い方するのは、喧嘩煙管でしかできません。