第109回 爆弾ハンマー メガ・ボンバー!
爆弾ハンマー
日本から遥か遠い海を越えた国。多彩な自然に恵まれた国。マヤ文明の痕跡、スペインの植民地時代など様々な歴史を内包する情熱の国。
有名な料理はタコスとか、コンソメとかですね。トウモロコシから作った生地にもチップスにもなるトルティーヤも大変美味しいです。
さて、この国の名前はなーんだ?
答えは『メキシコ』です。
チチェン・イツァのピラミッドとかいつか見てみたいなぁとか思いますね!
今回の武器はそんなメキシコの中でも小さな街、グアナファント州にあるサン・ファン・デ・ラ・ベガで開催されるメガ・ボンバーというお祭りで使われているハンマーを紹介します。
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~どんなハンマー?~
まぁ、爆弾ハンマーというタイトルでもう、ピンと来た人も多いのではないでしょうか。
現在はお祭りで使われているハンマーですが、お祭りで使うレベルの威力ではありません。
鉄骨や鉄板が吹き飛ぶほどの威力を持っています。
鉄製の大型ハンマーの先端に硫黄と塩化カリウムなど、衝撃で爆発する自家製爆弾を取り付けておきます。
その量たるや、遠くから見ても明らかに「あのハンマーになんかついてる」と思うほどこんもりとハンマーの打ち付ける面に取り付けます。
それを、タオルを頭と口元に巻いて、ヘルメットをかぶって長袖長ズボンを重ねて身に纏った男性や、タンクトップにサングラスの男性や、上半身裸の男性が……
だんだん防御力が下がってますが、暴徒というかテロ組織みたいな服装の男連中を中心にですね。
大きく振りかぶって、全身の筋肉が産み出すパワーを全てハンマーに込めて、全力の衝撃で爆弾を爆発させていきます。
爆弾ハンマーの爆発音が、町全体に鳴り響く祭りがこのメガ・ボンバーです。
街中には火薬の臭いが濃く漂うばかりか、硝煙をはじめとした煙で薄く靄がかかり、あっちでちゅどん、こっちでちゅどんと爆発音が聞こえます。
普通、この手のお祭りは爆発の威力や美しさなどでコンテスト的になったりしますが、どうやら自主的に爆発させているという事らしく、賞状や賞金は無いそうです。
もちろん、鉄板を吹き飛ばすほどの威力ですから、ハンマーを振り下ろした人間に跳ね返る威力も恐ろしい物になります。
街のあちこちから聞こえる爆発音は人間を紙切れのように吹き飛ばす物ばかり、鉄製のハンマーもひしゃげて吹き飛びますし、ターゲットにした鉄板も宙を舞います。
飛んできたハンマーなどが体に直撃! 肌が裂けて、肉が見えるような程の大怪我をする。
爆発の反動で骨や関節にダメージが入り、骨折や脱臼などの大怪我をする。
あまりにも大きい爆発音のため、空気の振動が強すぎるあまり、耳の鼓膜が破れてしまう。
吹き飛ばされた塵・砂が飛び肌を傷つける。
火薬の臭いに立ち込める煙、暴徒のような集団。腕を押さえたり足を引きずったり、時折数人に抱えられて運ばれていく怪我人達。
さながら、戦場のような光景が広がっています。
めちゃくちゃ危ない!!
世界でもトップクラスに危険なこの祭りですが、爆弾ハンマーは武器ではなく、お祭りの道具になっています。
あれ? 武器じゃないの? と思ってしまいますが、この爆弾ハンマーの由来は紛れもない武器です。
美味しい物を出す屋台・出店がならび。優雅な音楽や踊りなども披露されて、観光客も来るという紛れもないお祭りなんですよ。
たまに怪我人が通って、爆発音がなってますけど。
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このお祭りが行われる理由は洗礼者ヨハネを称えるという、宗教的な理由もあるそうですが、それだと爆弾ハンマーとのつながりがちょっと薄く感じますよね。
爆弾ハンマーの理由は17世紀頃にこの地域に住んでいた今の町の名前と全く同じ名前の男、サン・ファン・デ・ラ・ベガにあります。
当時、この地は裕福な地主と搾取される農民という、絵に書いたような圧制とも言える状況に置かれていました。
せっかく汗水たらして作った農作物も税として持って行かれてしまう、働けど働けども暮らしは楽にならない。農民達は身も心も疲れて行ってしまいます。
当然、農民達の間からは不平不満の声があがり、それはやがて反乱という形で行動に移します。
反乱の中心として大きく声をあげていた男がサン・ファン・デ・ラ・ベガです。彼は農民達を圧制から守るために立ち上がり、地主と戦う事を決めた勇敢な男です。
彼は仲間達と共に、沢山のハンマーと火薬を用意しました。
ハンマーの先端に火薬を括りつけた爆弾ハンマーを作り、それを装備して地主の館に攻め込んだと語り継がれているそうです。
やっぱりちゃんとした武器でしたね、目の前で一発爆発させられたら腰も抜けると言うものです。
脅しにも十分、次にそのハンマーで殴られて爆発させられるのは、相対した人物の頭になりますから、脅しとしても恐ろしいですね。
このサン・ファン・デ・ラ・ベガ勇姿を再現するため爆弾ハンマーが振り下ろされているそうです。
街中に響く爆音と街の名前が彼を称え続けているのです。
ボンバー!!
ちゅどーーん!!
爆発はロマンだ!