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第107回 長槍 6メートルオーバー ※特に長い 

槍の長さって色々です。

長槍ながやり長槍ちょうそう長柄槍ながえやり


 槍を語ると奥が深く、尖端の形状、材質、長さといった槍本体についてだけでなく、扱い方の複雑さにまで話が及んでしまいますね。

 集団戦法なのか、個人の技法なのか、などの扱い方に加えて、対騎兵をはじめとした相手の種類によっても選ばれる槍の種類や扱い方が変わってきます。


 歴史もとんでもなく古く、石器時代には槍が存在していると確認されています。

 狩りや防衛、侵攻といった用途だけではなく、儀礼的な用途まで、人類の歴史にも深々と刻まれているアイテムの1つが槍です。


 今回はそんな長い槍の歴史の中でも、織田信長が用いたとされている長槍を見て行きましょう。

 この長槍は1392年頃から使われたと考えられており、江戸時代にまでこの槍が用いられたとされています。

 織田信長は1534年に生まれたとされていますので、昔からあった長槍の運用方法を見直ししたと考えて下さいね。作った人じゃないですよ。


 長さは最大6.4メートルにもなり、重量は4.0~5.5キロと幅があります。

 重量に幅があるのは長さによるということですね、比較的短めな長槍は5メートルを割るほどなので、短い物は軽くなります。


 先端は笹の葉のような定番の穂先を持っているだけですので、シンプルな槍を指す用語の「素槍すやり」が適応される形をしています。


 形状はシンプルながら、この長槍は結構強いんです。





~使われる背景~

 時は戦国、嵐の時代。

 全国の大名がこの狭い島国である日本の覇権を握るため、各地で争いを繰り返していたそんな時代。


 室町幕府の権威が低下し、その跡目の争いが勃発するばかりか、各地域ごとの有力者がその地域の支配性・管理性を高めたことで戦国時代の下地ができました。

 そして、各地域ごとの有力者には領土を拡大しようと近隣諸国へ戦を仕掛けるという事が日本のあちこちで発生。全土が複雑な戦いに巻き込まれる戦国時代の訪れです。


 いってみりゃ、内乱状態とでも言えるものですね。

 って戦国時代の認識あってます!? 筆者のピーター、歴史は得意ではないので、間違ってたら優しく指摘して下さいね。


 そんな時代ですので、戦に行く人物はお侍さんばかりではありません。

 農民たちも戦に向かうという事が頻繁にありました。


 最前線の主力たる部隊にも農民あがりの兵士が多く投入されたわけですが、彼らは戦に慣れている訳ではありません。

 普段の農作業などから肉体面は十分に鍛えられていたとしても、武器の訓練を受けた人は少なく、向けられた武器からの身の守り方も知らない人ばかりでした。


 武器を渡されて『いざ、尋常に、勝負!!』とかされても戸惑っているうちにやられてしまう訳です。

 かといって、弓や槍の訓練を日ごろから欠かさずに続けるというのも難しい訳です。

 そのため、扱いやすくて、効果的な戦法を考える必要があり、白羽の矢が立ったのが長槍です。


 それまでの槍は長くとも身長の2倍程度までとされていた所、つまりは4メートル以下の長さでした。

 相手も自分も同じ長さの槍では、訓練が足りていない方が押し負けるという事が当たり前に考えられました。

 農民あがりでは刃を向けられる事にも慣れてなかったので、目前に迫る敵の槍に腰が引けてしまい、そのまま刺されてしまうことも多かったでしょう。


 そこで信長様は考えまして、もっと長い槍を持たせました。

 これで、敵よりもこちらの槍が先に相手に届きますから、怖気づかなくて済みますし、先制攻撃もすることができます。

 また、集団で使う事で効果も跳ね上げるばかりか、負傷者が出ても人員を入れ替えて怪我人を後方へ引き下げながら、別の人員を補充するというローテーションまでくみ上げる作戦を考え付いた訳です。





~扱い方~

 集団戦法で使う槍なので、振って使うということはありません。

 基本的な使い方はいくつかのパターンに決まってくるので、扱い方にはそれほど困りません。


 儀礼的に構える時は穂先を天に向けるなどで十分に絵になりますし、行軍する時でもどこかに引っ掛かったりする事は少なくなります。


 いざ戦いとなれば、密集して上に構えている状態から勢いよく振り下ろします。

 これだけで、これまでの長槍が3~4メートルの高さから振り下ろされるのに対して、この長槍は6メートルもの高さから振り下ろされる訳ですから、威力が特に高くなりますね。


 振り下ろした後に突き込めば、相手の槍の間合いの外から攻撃できるので、相手は負傷した兵士が多数でます。

 こちらはまだ無傷ですので、集団全員で正面に槍を構える槍衾やりぶすまを作って進軍すれば、動きの鈍くなった敵の1部隊を一方的に攻撃できますね。


 騎兵が相手であれば斜め上方向に構えて置けば、突撃してきた瞬間に槍衾の餌食になりますから、対騎兵についても槍の角度を調整すればオッケーです。

 ちなみに、槍を掲げるようにする持ち方にすると、後ろの兵士の槍が自分の上に屋根のように広がりますから、投石などの攻撃を弾いて威力を下げてくれる盾のような役割も担ってくれます。

 斜め上に構える槍衾は攻防一体の構えですね。


 こうしてみると、長槍の動かし方は『振り下ろす』『正面構え』『斜め上構え』の3パターンに『前進』という動きが加われば最低限の動き方ができます。

 槍衾は何人か動きが遅れると、そこが貧弱になってしまいますから、全員一丸となった動きが必要になります。

 そこは熟達した部隊を率いる役割を担った武将が大声で指示をするなどして、自分の部隊の体制を統制して運用することになります。


 このように長槍は、弓や剣などと比べて比較的扱いの習得が容易ですし、槍の中でも特に扱いやすい物になっています。

 また、相手から距離を取る事ができる長さがあるため、心理的にも平静を保ちやすく怯えて腰が引けたり、逃げようとせず、槍衾という攻防一体の陣形を保つことができますね。


 長すぎる槍などは「無用の長物」などと呼ばれて、目立つ割りに役に立たないとされてしまうことがありますが、集団で使う槍衾であれば、これほどの長さの槍となってもきちんと効果的に使うことができます。


 ちなみに、単身でここまでの長槍を使うとなると……

 狭い所に逃げ込んで軌道を限定させるなり、石や弓矢で飛び道具攻撃するなり、対策はたくさんあります。

 しかも、簡単に懐に飛び込めますから、接近戦に持ち込めば長槍を構え直す事もできませんから、一方的にやられてしまいます。

 皆で使うから強力なので、1本だけなら無用の長物になってしまいますね。

槍衾!


 密集陣形の中で最強じゃないかなって思うほど、槍衾って強い。

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― 新着の感想 ―
[一言] いろいろと考えられているのですね。 扱う者が誰なのか? は大事なポイントですよね。
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