第106回 直刀(チータオ) これぞ剣
中国系の武器は複雑っすね。
直刀・直刀
中国で使われていた刀剣。前漢時代~南栄時代に使われていた刀剣、西暦にすると紀元前200年頃~1279年頃になります。
柄から切っ先までまっすぐな一本の線のようなシルエットを持っています。
柄頭には刀輪と呼ばれる環状の細工やパーツが取り付けられており、握りになる柄には革が巻かれています。
鍔はなく、かわりに指輪のようなリング状の金属がはめられており、その先は刀身が伸びています。
先端は鉛筆の先のように鋭くなっています。
長さは柄頭から刀身の先端までで80~130センチ程度、重さは短い物は500グラム、長くて重い物でも1キログラム程度になっています。
使われていた期間も長く、紀元前200年頃から1200年代後半まで、とても長い期間にわたり作られて帯剣されていました。
当然作りについても年代や地域による違いが多数みてとれます。
そのため、諸説ありますし、ここで書く内容では全てを網羅しきることは難しいほどの歴史があります。
ホント、中国にまつわる武器ってのはバリエーションとか、地域差とか、年代とか、すっごい複雑でもう……
今回はこの中国の王道の剣とも言える直刀を見て行きましょう。
もう一回言っておきます。諸説あります!!
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~もうちょっと細かい形状説明~
直刀は反りが全くないと言えるまっすぐな刀剣です。
柄から刀身まで全て一体になっており、日本刀のようにパーツごとに分解する事ができない作りになっている物が一般的とされています。
柄頭の刀輪には細工がされている物や、紐や布などを巻いたり、垂らしている事もあります。
映画などで使われる物には様々な色の布が付けられていて、振るう度に美しく使い手の周りを踊るように舞っていたりしますね。
柄は短く、両手で持つには長さが足りません。片手で持つ事を大前提として作られています。全体の重量も軽いため2刀流も成立するほどになっています。
柄に巻かれている革も様々あり、最上級の物はサメの皮が使われていたとされています。
鍔の部分が無いので、鍔に手を引っかけるようにして力を込める事ができませんから、柄部分のグリップ力が扱いやすさに直結しますので、確かにサメ肌であればそうそう手が滑ったりはしないでしょう。
鍔に当たる部分は格と呼ばれている事もあるようで、直刀には存在していません。
指輪程度の金属がついていますが、この程度の厚みでは鍔のような機能はまったくありませんね。
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~扱い方~
以上の形状を見ると、斬撃でも突きでも使う事ができる便利な刃に見えますが、直刀では突き攻撃は難しいです。
というか、突き技は危険なんですよ。
何が危険かって、自分の手が危険なんです。
突き技をすると相手の体に刺さった時の衝撃で、手が刃の方へずれる力が働きます。
日本刀などの鍔がついている武器であれば、鍔の位置で手がとまりますから全力で突き込む事もできるんですが、直刀にそんなものは付いていません。
突き技を使った瞬間、自分の手が前方へ滑り刃の上に踊り出てザックリと行ってしまいます。
ドス程度の長さの刃なら、柄頭部分に指をかけて扱う事もできますが、直刀ではそうはいきません。
直刀でドスのように使おうとすると、突き技の都度に柄頭の刀輪に指をかけため、相手に次の攻撃がまるわかりになってしまいます。
柄頭に指をかけてまで突き技をするとは考えにくいですね。
鍔がないため、競り合いにも向いていませんね。刃を滑らされたら手を切られてしまいますからね。
競り合いをするよりも、刃の中間あたりで相手の刃を払いのけるように使ったりしていたようです。
相手の剣を払いのけて、返す刃で斬りつけるという斬撃がメインの武器となっていました。
重量がある刃ではないので、相手の喉笛や腹部や太ももなどの急所を斬りつけるように使っていたはずですし、殺すためというよりも傷をつけて相手の戦意を下げるなどの効果もあったと考えます。
また、剣の長さもそれほど長くないので、室内でも振る事ができたと思われます。
鎧を着こんだような兵士が相手でなければ、直刀1本でも十分にやり合うことが出来たでしょう。
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太古の昔とも言える青銅の時代、そこでも直刀の特徴を持つ刀剣はありました。
日本刀でも古いタイプの物の中には直刀程度の刃渡りと、無反りという特徴を併せ持っている物も存在しており、古墳の中からも柄頭に輪を持つ無反りの刀が出土しています。
もしかして、直刀は日本刀のルーツにもかかってきているのかもしれませんね。
斬撃特化!
形状としては突き技も使えるはずなんだけど、鍔が無いというだけでかなりの違いがありますね。